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開拓者スピリッツと独自のチャンプルー文化で「しまちゃび」を切り開く 絶海の孤島・北大東島の挑戦 ーニッポンのヒャッカ 沖縄編1ー

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「しまちゃび」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
沖縄の方言で、意味は「離島苦」という。

適切な治療を受けられない、インフラの料金が高い、住居を構えるのに費用が倍以上かかる、激しい台風、それによって長期間途絶える交通手段……など、離島には、本島に住む者が経験したことのない苦労が数多く存在する。

そんなしまちゃびに挑み続ける離島のひとつに、「北大東島」がある。

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(写真提供:北大東村)

北大東島は、「大東諸島」(古来琉球の言葉で「遥か東」を意味する「うふあがり」の名を持つ島々)に属する、沖縄最東端の国境離島だ。

その距離、沖縄本島から東に約360km。およそ東京から京都ほども離れた海の上にあり、本島との交通手段は一日一便の飛行機と不定期便の貨客船だけ、という離島中の離島である。

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隆起サンゴ礁でできた島の外周は、高さ5〜10mの険しい崖で取り囲まれており、長らく人間の上陸を阻んできた。そのため、島の有人の歴史が幕を開けたのは、たった120年前のこと。

明治36年(1903年)、八丈島の開拓団が島に上陸すると、島の資源であった燐鉱石の発掘が開始。その後、沖縄本島より鉱夫として志願してきた人々が集まり、島の暮らしが始まった。こうして島には、東京と沖縄、2つのルーツを持つ人々が織りなす「チャンプルー(沖縄の方言で「混ざり合う」)」文化が形成された。

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大正後期、玉置平採掘場-4階段式露天掘りの様子(写真提供:北大東村)

北大東島の人々は、そんな開拓の歴史をルーツとしたフロンティアスピリッツと、チャンプルー文化をルーツとした多様性に対する柔軟さを武器に、しまちゃびと戦い続けてきた。

彼らの今の願いは「この島を、住み続ける決意ができる島にする」こと。現状、島で出産や看取りをするのは難しく、また、住居の建設費用も資材費のほかに運搬費がかかるため本島よりも高額になる。当然、住居を構える場として島を選ぶ人は減っていく。

「島を守ることは、国土を守ること」

そんな、沖縄最東端の島の誇りを守るため、人々は、ある取り組みを開始した。
それが、島の資源を有効活用した商品の開発だ。

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燐鉱山の閉鎖後、島の主要産業はサトウキビ農業へと移行した。
しかし、サトウキビは同じ畑で3年以上も続けると、収穫量が落ちたり、病気にかかりやすくなったりする。そこで北大東の人々が注目したのが「じゃがいも」だ。

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畑が弱りはじめてきたらサトウキビを刈り取り、じゃがいもを植える。すると、畑が元気になって、次の年からまた元気なサトウキビが育つのだ。このように、別の作物を一定サイクルごとに植え替えることで畑の養分の偏りを防ぐ栽培方法を「輪作」という。

しかし、こうして作られたじゃがいものうち、規格外の小さなものは出荷条件に満たず、自家消費にまわされていた。

これを活用し、島の活性化を推し進めるアイテムにしようと試行錯誤して生まれた商品が、じゃがいもを活用して作られた、「じゃがいも 沖縄生麺」と「ぽてちゅう」だ。

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まず作ったのが、じゃがいもを粉末にして麺に練り込んだ「じゃがいも 沖縄生麺」。

うどんや沖縄そばのようなもちもちした食感と、じゃがいも特有の甘みが楽しめる。添付のだしを使って沖縄そば風に食べるのも良いが、さまざまなアレンジにも合う。特に、ホクホク感が際立つカレーとの相性が良い。

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それでも使いきれなかったじゃがいもを大量に活用するために開発されたのが、じゃがいも焼酎「ぽてちゅう」だ。

製造しているのは泡盛で有名な久米仙酒造で、泡盛と同じ黒麹を使っているため、どこか泡盛らしさのある焼酎に仕上がった。飲み口はスッキリとしつつも甘みがあり、フルーティな香りで女性でも飲みやすい。

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また、大東諸島の海域は、黒潮に乗ってさまざまな回遊魚が集まる、絶好の漁場。特に多く獲れるのは、キハダマグロやメバチマグロ、サワラだ。

それらを使って作られているのが、この「沖縄最東端の南蛮漬け」。

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もともと島で作られていた南蛮漬けのレシピをベースに、にんにくを増量し、島唐辛子を加え、やみつきになる味に仕上げた。魅力はなんといっても、獲れたての味をそのまま楽しめるところ。

北大東の魚は、鮮度が大幅にアップすると言われる神経締めを徹底しており、県内の大手量販店での評価も高い。南蛮漬けは、そうして丁寧に処理をほどこした魚をその日のうちに加工し急速冷凍しているため、北大東から遠く離れた地でも、その新鮮な魚の魅力を楽しむことができる。

キハダやメバチは、新鮮な状態で届けるのが難しいため市場に評価されにくいが、獲れたては本マグロにも負けない美味しさだという。

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島民の願いから生まれたこれらの商品には、北大東の暮らし、生活、あり方のリアルが詰まっている。

だからこそ、もしこれらの商品を気に入ってくれたなら、ぜひ、二度、三度とリピートをしてほしい。

それは、彼らの活動を継続的に支援することに繋がるから、という理由だけではない。
しまちゃびとの戦いの途上である島の歴史と同様に、商品も進化し続けているからだ。その「変化」はきっと、彼らの挑戦の“今”を届けてくれるだろう。

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