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マクルーハン的には子供がスマホに触れない方が実は危ないという話(前編)

マーシャル・マクルーハンの『メディア論』という本を読んでいる。抽象的な表現が多く、しかも比喩と引用とに満ちているため理解がとても難しいのだが、ハッとさせられる記述が頻出し、実に刺激的だ。こんなに刺激的な本は久しぶりだ。電子書籍が出ていないので紙で読むしかないのが難点だが、まだ途中ではあるものの実に面白く読み進めている。

マクルーハンは、人間はメディアそのものに強い影響を受ける——ということを書いている。例えば、テレビを見るとき、人は通常そこから内容(例えば「映画」や「ニュース」)を得ていると思っているが、実はそれ以上にメディアのもたらす体験を得ている。どういうことかというと、同じできごとを扱ったニュースでも、新聞で読むのとテレビで見るのとでは使う脳が異なり、それによってその人自身の脳の組成も異なってくるのだ。

スポーツの試合結果だったら、翌日に新聞で読むのとテレビの生中継を見るのとでは、体験がまるで違う。人は、文字通り「体験的」にはそのことを知っているが、しかしそれがもたらす脳——引いては自分への影響を知らない。
「知らない」というのは、もちろん「新聞で結果を知るより生中継のテレビを見る方が面白い!」などという感覚的な意味では知っているけれども、それによって起こる自分の脳の変化という構造については知らないということだ。

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