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イチローの文脈

イチローは歴史に残る人物になると思う。それは、単に「野球史」ということではなく、「日本史」、あるいは「世界史」に。

イチローは偉大な存在だ。どう偉大かというと、人々の生き方のモデルを示し、救いをもたらした。

2500年前頃、社会が狩猟採集生活から農耕生活に大きく変革した頃に、人々はどう生きていけばいいか分からなくなった。そこで、生き方のモデルを示してくれる存在が求められた。そういう声なき声に後押しされて現出したのが、釈迦や孔子やソクラテスだった。

取り分け釈迦は、人々に伝えるということを重視した。彼は考えを突き詰め、悟りを開くことによって、そこで新しい景色を見た。そして、それを人々に伝えた。

人々は、その情報を何より求めていたから、彼の活動を支援した。そういうエコロジカルな関係がそこで成立していた。宗教や思想や哲学が職業として成立したのにはそういう背景があった。

芸術家にも、本来そういう役割がある。何かをギリギリまで突き詰め、そこで見た景色を伝えることで、人々を救う。人々に新しい生き方のモデルを示す。イチローのしたことは、そういうことだった。彼は野球をぎりぎりまで突き詰め、そこでいろんな景色を見てきた。そして彼は、豊富な言葉でそれを我々に伝えてくれている。

その意味で、彼は2500年前の宗教家・思想家・哲学者の存在とそっくりである。

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