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マクルーハン的には子供がスマホに触れない方が実は危ないという話(後編)

ここまでの話を整理したい。そもそも、人間の脳は後天的にプログラムされる。だから、頭の良さというのも後天的に決まる。

そして、このプラグラムには大きく分けて2つの種類がある。文字によって構成される「概念脳」と、感覚によって構成される「感覚脳」だ。
20世紀の前半まで、知識人はほとんど概念脳だった。しかし20世紀の後半からテレビの普及と共に感覚脳が復権した。多くの子供たちがテレビを見るとき五感を駆使したため、感覚脳の割合が増えたのだ。

ちょうどそのとき、コンピューターが現れた。コンピューターは、「頭の良さ」というものの定義を変えた。それまで最重要だった「概念脳」の価値が下がり、変わって感覚脳の価値が増した。

理由は、コンピューターが登場し、概念脳が得意としていた分野・領域を圧倒的な「記憶力」で制圧していったからだ。それによって、「概念脳」の価値が下がった。概念脳は、「記憶力」を一つの武器としていたが、コンピューターの普及によって、それがもはや武器とはならなくなったのだ。

それとは対照的に、感覚脳の価値が上がった。なぜなら、「感覚的に何が良いのかを見分け、また表現できる能力」というのは、コンピューターが不得意とするところだからだ。違う言い方をすれば「芸術的な感性」や「喜怒哀楽」あるいは「気持ちいい、楽しい」といった感覚を、コンピューターは持ち合わせていない。そのため、「これは人間にしかできない」という役割分担が、徐々にはっきりしてきたのだ。

しかしながら、このことによって概念脳の価値が全くなくなった——というわけではない。

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