厚労省専門家・今後の新型コロナ感染拡大「第8波の流行が起こる可能性は、非常に高い」
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*****令和4年10月26日(水)第151号*****
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厚労省専門家・今後の新型コロナ感染拡大「第8波の流行が起こる可能性は、非常に高い」
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◇─[はじめに]─────────
東京都の、新型コロナ新規感染者数は、今月(10月)11日(火)までは前週比でマイナスを継続していましたが、翌12日(水)から18日(火)まで7日連続でプラスに転じ、さらに翌19日(水)から22日(土)まで4日連続でマイナスに戻りました。
ところが10月23日から本日(10月26日)まで、4日連続して再びプラスに転じています。このように前週比で「増減」を繰り返す傾向は東京都に限らず、程度の差こそあれ、全国でも共通しているものと思われます。この「増減」は「第8波」の始まりなのか……?
この状況を受け、厚生労働省の新型コロナ感染症対策アドバイザリーボード(厚労省専門家会議)は10月20日の会合で、会議の主要メンバーである4名の専門家が連名で「新型コロナウイルス感染症第8波へ向けてのリスク評価の考え方」を発表しました。
その結論で「第8波の流行が起こる可能性は非常に高い」と指摘しました。その理由の一つとして「ワクチン初回接種後の重症化阻止効果も、接種後8ヶ月以降は減弱することが示されており、多くの高齢者が3回目接種後8ヶ月が経過している」等を挙げています=画像・厚労省HPより。緑色と黄色のラインマーカーは、弊紙による加工。
この点以外にも、この専門家4名が発表した「リスク評価の考え方」は、新型コロナの過去に流行したウイルスの「株」の特徴等を考察し、さらに新型コロナとインフルエンザの流行状況を比較する等して、この結論を導き出しています。
そこで今回、弊紙ではこの「リスク評価の考え方」で述べられている内容の中で、本紙読者の皆さんが「第8波」に備えるために参考になると思われる部分を抜き出し、ご紹介することにいたしました。
今回の記事が、多くの読者の皆さんにとって、ご自身の「第8波」への対策を考える材料となれば幸いです。
日本介護新聞発行人
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今回の記事は、上記の「はじめに」で述べたように、厚労省専門家会議の主要メンバー4名(以下「専門家等」)が連名で発表した「新型コロナウイルス感染症第8波へ向けてのリスク評価の考え方」を元にして構成しています。
ただ、その内容はかなり「学術的」な表現が多いため、本紙で記載する際には読者の皆さんにわかりやすい表現に変換している部分が多くあり、さらに弊紙により注釈も加えていますので、これらの点をご了承の上、ご一読頂けますと幸いです。
なお、記事の中で「専門家等」が「8波へ向けてのリスク評価の考え方」で指摘した内容は、文頭で「▼」印を付けています。
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新型コロナウイルスの「伝わりやすさ」=「インフルエンザとは大きく異なる」
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感染症の「伝わりやすさ」を評価する指標としては、基本再生産数があります。これは、ある感染症に対して、全く免疫を持たない集団の中で、1人の感染者が平均して何名の2次感染者を発生させるかを推定した値です。
この基本再生産数が「1」を超えると、1人の感染者が1人以上の2次感染者を生み出したことになり、感染拡大の持続を意味します。「専門家等」は、新型コロナの「伝わりやすさ」は、インフルエンザとは「大きく異なる」とし、次のように説明しています。
【「専門家等」の分析内容】
▼新型コロナウイルスの基本再生産数は(最初のコロナウイルスである)武漢株でも「2.5」程度あったとされ、オミクロン株BA.1では「5」程度、BA.5では「5」を超えているとされている。ちなみに、季節性インフルエンザは「1.2~1.6」程度となっている。
▼これにより「伝わりやすさ」の観点からは、季節性インフルエンザとは大きく異なる感染症となっている。新型コロナウイルスは、実効再生産数を「1」以上に保ちながら、その新規の変異株が次々と発生している。
▼このことによって、新型コロナウイルスは「流行を持続させる」メカニズムが成り立っている。このメカニズムの「程度」が際立っているため、1年に1度の「季節的な流行」を起こすのではなく、年間に「何度も流行」を引き起こし、複数の「波」が起きている。
▼この結果、世界中に「高いインパクト」をもたらすことにつながっている。
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新型コロナウイルスに感染した際の「重症度」=「みせかけの重症度は、大きく低下」
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現在、流行の主流になっているオミクロン株は当初「感染しても重症度は高くない」等との分析もありましたが、これを「専門家等」は「見せかけの重症度」と評して「免疫状況によっては、オミクロン株でも多くの被害が起こる可能性はある」と指摘しています。
【「専門家等」の分析内容】
▼新型コロナウイルスの重症度は、オミクロン株になって「一定程度、低下した」とされるが、重症化率・致死率などの指標によって観察される重症度は「見かけの重症度」であって、その「株」の持つ固有の重症度とは必ずしも一致しない。
▼それは「見かけの重症度」では、治療の有無や免疫状況によっても大きく変動するからである。オミクロン株になり「みかけの重症度」が大きく低下しているのは、多くの人がワクチン接種や、自然感染によって免疫を獲得したことも大きく寄与している。
▼WHO(世界保健機関)が、南アフリカの入院例で解析したデータでは、デルタ株と比較してオミクロン株「BA.1」の入院後死亡率が「0.62倍」であったことが報告されている。
▼一方、香港ではオミクロン株「BA.2」主体の流行で非常に多くの死亡が報告されており、免疫状況によっては、オミクロン株でも多くの被害が起こる可能性はある。
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新型コロナウイルスの感染の「特徴」=「感染の中心となる対象者が、変化する」
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弊紙が、新型コロナの感染で以前から疑問に思っていたことが「一番最初に新型コロナが流行した当初は『子どもの感染者は少ない』等と評価されていたのに、その後の変異株では『子どもでも、大人と同様に感染する』ように変わってきた」ことです。
この点について「専門家等」は「感染の中心となる対象者が、変化する」と指摘しているものの、その原因については現時点では「不明」のようです。今後は、その時に流行している「株」が、どのような年齢層等に感染するのかを調査していく必要があるようです。
【「専門家等」の分析内容】
▼感染の評価としては「どのくらいの人が感染する可能性があるか」「どのような人(年齢など)が感染する可能性があるか」を評価する必要がある。現時点でこれらを正確に評価することは難しい。
▼しかし、日本に先行して新型コロナが流行しているヨーロッパやアジアの国・地域の状況は、日本にとって参考になり得る。
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「第8波」が起きる可能性=「高齢者のワクチン接種率等から考えると、非常に高い」
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以上のように「専門家等」は、新型コロナの感染拡大は「インフルエンザとは大きく異なる」「みせかけの重症度は、実際の重症度よりも大きく低下しているケースもある」「感染の中心となる対象者が、変化する」等の特徴があることを指摘しています。
これらを踏まえ、高齢者等のワクチン接種率をリスク要因として挙げた上で「諸外国の状況から考えても、第8波の流行が起こる可能性は非常に高いと考えられる」と結論づけています。
【「専門家等」の分析内容】
▼感染の状況の評価としては、日本の人口の中での「免疫獲得状況」や、それが「感染や重症をどこまで阻止できるか」「治療体制や医療ひっ迫の程度とその影響」などを評価する必要がある。
▼日本の人口の中で流行が持続して拡大し、免疫を獲得した者が「ダイナミックに変化」する。そのことにも影響を受けて、流行の中心となる対象者の属性(年齢等)や感染の場が、時刻とともに変化する傾向がある。
▼日本では、新型コロナのパンデミック(感染爆発)が開始した直後、学童の感染は少なかったものが、その後その他の年齢層と同様に多くなったのはその一例である。医療機関での流行は、医療従事者の免疫状態に依存して変化し得ることに留意する必要がある。
▼現在、国内の多くの地域で新型コロナの新規感染者は増加に転じており、一部のヨーロッパやアジアの国々の状況から考えても「第8波の流行が起こる可能性は、非常に高い」と考えられる。
▼今後も「伝わりやすさ」や、病原性が大きく異なる変異株が出現するリスクは存在しているが現在、世界で増加傾向にあるオミクロン株のさまざまな派生株は「BA.5」に比べて「伝わりやすさ」は必ずしも高くない。
▼むしろ、免疫逃避(=ワクチンの接種で得た抗体が、効かなくなること)によって、優位性を獲得していると考えられる。今後の流行の規模や重症者数・死亡者数は、人口の中の免疫状況によって、大きく規定されていく可能性が考えられる。
▼ワクチンの接種や、自然感染の免疫は減弱していく(=弱まっていく)ことが医学的に示されており「比較的長期にわたって維持される」とされていた、新型コロナのワクチン初回接種後の重症化阻止効果も、接種後8ヶ月以降には減弱することが示されている。
▼多くの高齢者が、3回目接種後8ヶ月が経過していること、高齢者の4回目接種の接種率は76%程度であること、60歳未満の多くの人は今後4回目接種の対象となることが「第8波」の流行のリスクに影響する可能性が考えられる。
▼日本では各国に比べて、人口あたりの「既に感染した人」の割合が低いと考えることも「第8波」の流行動態に影響する可能性が考えられる。今年2月から3月にかけては顕著な「超過死亡」が観察されている。
▼この理由として、医療ひっ迫の影響もあったと考えられる。感染や再感染による長期的な影響を示すデータも示されており、新型コロナウイルス感染症のリスクを考えるためには。被害の全体像を正しく把握することが必要だと考えられる。
▼今後、呼吸器ウイルスが流行しやすいとされる冬に向かっていくこと、12月以降に忘年会などさまざまな年間イベントがあること、さらに人の移動が増えていることが、感染拡大のリスクを高めることが考えられる。
▼加えて、冬季には心筋梗塞・脳卒中などで救急医療の需要が高まることも考慮する必要がある。例えば第7波でも救急搬送困難事案が急増するなど、顕著な医療ひっ迫が生じたが「第8波」でも医療ひっ迫が生じるリスクは高いと考えられる。
◇─[おわりに]─────────
厚生労働省は現在、国民に向けて「マスクの着用」について「屋外では季節を問わず、マスクの着用は原則不要です」「屋内では距離が確保でき、会話をほとんど行わない場合をのぞき、マスクの着用をお願いします」
「場面に応じた、適切なマスクの着脱をお願いします」等と呼び掛けています。しかし、今回の「専門家等」の意見をみると、新型コロナの特徴については「まだまだ不明な点が多い」のが実情だと思います。
今後の感染の主体が「新たな変異株」に置き換わった際には、例えばこの「マスクの着用」等の基準はその都度、見直す必要があると感じます。特に、感染すれば重症化のリスクが高い高齢者にとっては、この「基準」は極めて重要な指標になります。
この点について政府や厚労省には「前言」にとらわれることなく「柔軟に対応」していくことが求められます。
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