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「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(中)

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┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****令和6年5月1日(水)第172号*****

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「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(中)
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 ※前号(第171号)の「はじめに」で記したように、今回は「ガイドライン」の要旨をご紹介していますが、政府が4月19日に公表した内容は「案」で、現在パブリックコメントで意見募っています。締め切りは5月18日で、その後に「確定版」となります。

 ※このため、今回ご紹介する内容が「確定版」で修正される可能性がありますので、この点をご承知おき頂ければと思います。なお、今回の内容は次のように3回に分けて配信しております。

 ※「ガイドライン」には「身元保証等サービス」「死後事務サービス」「日常生活支援サービス」の3つの内容が書かれていますが今回は、記事の分量等を勘案して「死後事務サービス」の詳細は割愛しましたので、ご了承下さい。3回連載の内容は、次の通りです。

 ■■第1回=「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(上・4月30日号)
 ▼1.「ガイドライン」の目的
 ▼2.「ガイドライン」の対象となる内容

 ■■第2回=「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(中・5月1日号)
 ▼3.サービス提供に当たっての基本的な考え方
 ▼4.契約締結に当たって留意すべき事項
 ▼5.取り消される可能性のある勧誘方法について
 ▼6.「身元保証等サービス」を提供する際の留意事項

 ■■第3回=「高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(下・5月2日配信予定)
 ▼7.「日常生活支援サービス」を提供する際の留意事項
 ▼8.利用者から金銭等を預かる際の対応について
 ▼9.契約の変更・解約に当たって留意すべき事項
 ▼10.「判断能力が低下」した場合の対応について

 ※【以下、昨日配信した=高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(上)=からの続き】

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3.サービス提供に当たっての基本的な考え方
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 ▼「サポート事業」においては、利用者本人の尊厳を守り、自己決定を尊重することが重要である。このため「定期的に利用者と面談する」等により、必要な情報や支援を提供することができる。

 ▼これにより「利用者本人の意思や考えを引き出す」など、利用者本人の価値観や選好に基づく「意思決定」を行えるよう配慮することが重要である。「日常生活支援サービス」を併せて提供する場合には、その機会を活用することも考えられる。

 ▽さらに利用者の状況に応じて、自ら提供するサービスに加え、関連する各種制度やサービスを提供する他の事業者等との連携・役割分担を図りながら、利用者の視点に立った支援が行われることが望ましい。

 ▼「利用者の判断能力が低下」しているおそれがある場合には、必要に応じて関係機関と連携の上「成年後見制度」等の手続について検討するとともに、その際にも「利用者本人の自己決定」を尊重するための支援を行うことが重要である。

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4.契約締結に当たって留意すべき事項
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 ▽「サポート事業者」は、利用者との契約締結に当たって、民法で定められた契約の一般原則や、消費者契約法に定められた消費者契約に幅広く適用される民事のルールに従う必要がある。

 ▽この前提を踏まえつつ「サポート事業」の特徴に鑑み、特に以下の点に留意することが重要である。

 ■■契約内容の説明について

 ▼「サポート事業」においては、契約の相手方が高齢者中心であり、場合によっては加齢等によりこれらの者の「判断能力がすでに低下」している可能性も考えられる。このため「サポート事業者」は、あらかじめ利用者の意思能力を丁寧に確認する。

 ▼その上で、契約を締結することが必要である(民法第3条の2参照)。

 ▽また消費者契約法上、事業者は消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者に必要な情報提供をすることが求められる(消費者契約法第3条第1項第2号)。

 ▽この点に関し「判断能力の低下」が懸念される高齢者を主な対象としていること、契約期間が長期間にわたること、サービス内容が多岐にわたること等の「サポート事業」の特徴を踏まえる必要がある。

 ▽「サポート事業者」は、契約に際して重要な事項に関する説明を行う際には、個々人ごとに提供するサービス内容や、利用者の「判断能力が低下」した場合の対応方針などが必要である。

 ▽このため以下の事項について、利用者本人との面談等を通じ、利用者の年齢、心身の状態、知識および経験を踏まえた丁寧な説明を行うとともに、重要事項説明書として作成・交付することにより、サービスの費用等で利用者の理解促進に努めることが重要である。

 ▼特に、預託金から差し引く方法で費用を支払う場合には、サービス利用者にとって費用の詳細が不透明になることが考えられるため、差し引かれた費用の金額と内容について明らかにすることが望ましい。

 ▼利用者とのトラブルを回避する観点からは、費用の支払により預託金が不足した場合の追加預託の時期や条件について、事前に示しておくことも考えられる。また「サポート事業」においては、契約期間が長期である、

 ▼契約金額が高額なことが多いなどの特徴を有しており「契約の途中での解約」を求める可能性も高いことが考えられる。解約等に関する取扱いについては、こうした性質に鑑み、書面を交付して説明することが特に望ましい。

 ▼「サポート事業」に関連した消費生活相談には、これまで「契約書が交付されていない」といった相談が寄せられている。高齢者等終身サポート事業の性質に鑑みて、契約内容を明確化するために、契約書を作成し、利用者に交付することが重要である。

 ▼「サポート事業」が「判断能力の低下」が懸念される高齢者を主な対象としていること等を踏まえ、契約の効力についての争いを未然に防止する観点からは、契約締結時に第三者(医療・介護関係者、利用者の親族等)の立会いを求めることが考えられる=画像・「ガイドライン」より。赤色の下線は弊紙による加工

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5.取り消される可能性のある勧誘方法について
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 ▼消費者契約法は、消費者に対し、事業者の不当な勧誘によって締結した契約の取消権を認めている(消費者契約法第4条)。

 ▽消費者契約法が定める不当勧誘には、誤認(ごにん=誤ってそれと認めること)を通じて、消費者の意思表示に瑕疵(かひ=「傷」「欠点」などの意味)をもたらすような不適切な勧誘行為が当てはまる。

 ▼具体的には、不実告知(ふじつこくち、※ 同条第1項第1号)、断定的判断の提供(※第1項第2号)、不利益事実の不告知(※ 第2項)等がある。

 【※弊紙注釈=不実告知=事業者が、一定の重要な事項について「虚偽の情報」を提供してしまうことで、消費者がその事実を誤認して契約締結をした場合に、契約の取消権を認めるもの

 【※弊紙注釈=断定的判断の提供=契約締結の勧誘の際に、相手方等に対して「利益を生ずることが確実である」と誤解させるような、断定的判断を提供すること

 【※弊紙注釈=不利益事実の不告知=「それを知っていれば、契約を結ばなかった」ような、消費者にとって不利益な事柄、契約を締結する・しないの判断の決め手になるような事柄を、業者が意図的に教えなかったこと

 ▽「サポート事業」においても、これらを遵守する必要があり、特に契約の相手方が高齢者中心であることが想定され、場合によっては加齢等によりそれらの者の「判断能力がすでに低下」している可能性がある。

 ▼また、現在の生活の維持に不安を抱いている可能性も考えられる。例えば「サポート事業者」が勧誘を行う場合であっても、契約を締結しなければ現在の生活の維持が困難となる旨など「消費者の不安をあおる」ような説明を避ける。

 ▼「サポート事業者」は、サービス利用者に誠実な説明を行うとともに、本人の意思に基づいて契約を締結することが必要である(消費者契約法第4条第3項第7号参照)。

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6.「身元保証等サービス」を提供する際の留意事項
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 ▽「サポート事業」には「身元保証等サービス」「死後事務サービス」「日常生活支援サービス」等が含まれるが、このうち「身元保証等サービス」の契約締結に当たって留意すべき主な事項は、以下のとおりである。

 ▽特に「身元保証等サービス」は、医療機関への入退院、介護施設等への入退所の手続等の支援・代行、連帯保証(身元保証)、緊急連絡先の指定の受託、緊急時の対応、身柄の引取り等を行うことが考えられる。

 ▽その具体的な支援内容やその費用については重要事項説明書を用いて、利用者に丁寧に説明するとともに、契約書に明記した上で契約を締結することが重要である。具体的には次の通り。

 ■■入院・退院等および入所・退所等への支援

 ▽利用者が希望する事項(手続の代行、説明の場への同席、身元保証等)を確認し、対応する内容や費用等について丁寧に説明することが重要である。

 ▼連帯保証(身元保証)に関する契約をする場合には「サポート事業者」が保証人として未払費用を負担した場合における契約者への求償や、前払預託金からの充当に関するルールを明示することが重要である。

 ▼また、利用者が入退院・入退所時の支援を希望する場合には、以下のような事項について利用者に説明・確認することが望ましい。

 ◆かかりつけ医や担当のケアマネジャーなど、すでに医療や介護を利用している場合には、関係機関と連絡・情報共有することについても「利用者の了解」を得ておくこと。

 ◆利用者の希望する医療や介護について、医療機関が本人の意思を尊重した対応として医療の提供に当たり、あらかじめ本人が書面で残した内容を尊重することも考えられる。

 ◆このため、医療や介護に関する利用者の希望を書面で残すことについて、利用者の意向を確認しておくことが望ましい。なお利用者が希望すれば、その地域で「事前指示書」などについて、どのような実践が展開されているかを確認する。

 ◆書面を残した場合には「利用者の状況」や「希望の変化」を反映させるため、面談等により定期的に「利用者の意向」を確認することについても了解を得ておくこと。

 ▼緊急連絡先の受託等では、緊急時に対応できる事項(土日・休日の対応体制等)と、これに要する費用について丁寧に説明することが重要である。

 ▼緊急連絡先の受託をする場合には、緊急時に連絡がつながるように「サポート事業者」の連絡先を、関係機関等に伝える方法についても利用者と相談し、定めておくことが望ましい。

 ▼具体的には、かかりつけ医・担当のケアマネジャーにあらかじめ知らせておく、利用者が身に着けておく、利用者の自宅内の分かりやすい位置に掲示しておく等が考えられる。

 ▽入院時・入所時や、緊急時に連絡を希望する先の有無や連絡の可否についても、確認しておくことが望ましい。

 ※【以下、明日配信予定の=高齢者等終身サポート事業者」を、どのように利用すれば良いのか(下)=へ続く】

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