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「今後もコロナワクチン接種率は『低迷』が予想されるが、これで良いのか……?」

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┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌日本介護新聞┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌┌
*****令和5年11月30日(木)第166号*****

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「今後もコロナワクチン接種率は『低迷』が予想されるが、これで良いのか……?」
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◇─[はじめに]───────────

 日本介護新聞では、2種類の媒体を配信しています。一つは主に、介護保険サービスを実際に利用されている方々やその家族などを読者に想定した、現在お読み頂いているこの「本紙」――

 もう一つは介護従事者など、実際に介護の現場で働いている方に向けた「ビジネス版」です。一昨日この「ビジネス版」で=コロナワクチン「秋開始接種」高齢者施設接種率9月末で85.4%、厚労省「再調査する」=というタイトルで記事を配信しました。

 この記事の要旨は「今年9月20日に開始した、新型コロナワクチンの『秋開始接種』で、高齢者施設の入所者と介護従事者の接種率を厚労省が調べたところ、接種開始からわずか10日(=9月30日)の時点の接種率が『85.4%』だった」

 「しかし厚労省は、この『85.4%』では十分だと考えておらず、再調査をするように都道府県などに指示した」という内容です。「わずか10日間で8割以上に達していれば、これで十分ではないか?」と、多くの方が受け止めるのではないかと思います。

 要は、厚労省は「全国の高齢者施設の入所者などの接種率が100%になるまで、徹底的に確認する」という姿勢を示したものと思われます。もう1点、この記事を書くに当たって、高齢者施設の入所者などを含めた、全国の高齢者の接種率も調べました。

 こちらは、一昨日(11月28日)に政府が公表した最新のデータですが、65歳以上の高齢者の「秋開始接種」の接種率は「40.8%」です。さらに、高齢者も含めた国民全体の接種率は「16.5%」です。

 念のため繰り返しますが、この「40.8%」と「16.5%」は、9月20日に「秋開始接種」が開始されてから約2ヶ月後の結果で、高齢者施設の「85.4%」は接種が始まってからわずか10日後の割合です。

 おそらく、この「40.8%」と「16.5%」は今後、年末年始にかけて再び新型コロナの感染拡大の新たな「波」が生じれば、多少はその接種率も上昇するかも知れませんが、最終的にはこのレベルに多少上積みがある程度に終わると思われます。

 この接種率の「ギャップ」をどう解釈すれば良いのか――弊紙発行人なりに考えた時に、思い浮かんだのがこの記事のタイトル=「今後もコロナワクチン接種率は『低迷』が予想されるが、これで良いのか……?」=です。

 介護事業者や、高齢者が身近にいて一緒に生活している家族は「高齢者に感染させないためにも、今後もなるべく多くの人が新型コロナワクチンを接種した方が良い」と考えるでしょう。

 しかし、65歳以上の高齢者の中でも「40.8%」に該当しない残り約6割の方、また高齢者を含めた全国民の「16.5%」以外の約8割以上の方は、そのほとんどが「今後、新型コロナのワクチンは接種しないだろう」と考えているのではないかと推察します。

 ザックリと言えば、全国民の約8割が、今後の新型コロナワクチンに対し「接種しないだろう」と否定的に考えている中で、約2割の「接種した方が良い」と肯定的に考える方々は「日常生活を送る」ことになるのではないか……と推測しました。

 本当に、約8割もの国民が「接種しないだろう」と考えているのか――? この点を調査した結果がないかと検索したら、本紙でも何度か記事として紹介している東京都の感染防止対策の公的機関である東京iCDCが、都民を対象に調査を実施していました。

 タイトルは「新型コロナウイルスのワクチンに関する意識」です。今から約5ヶ月前の6月に発表された内容ですが、その調査が実施されたのは今年2月なので、新型コロナが今年5月8日に「5類」に移行する前になります。

 まだ、多くの都民が新型コロナに対して「警戒感」を今以上に抱いている時期でもあり、一つの参考データとなるのではないかと考えました。今回の本紙はまず、この東京iCDCが6月に実施した調査の結果をご紹介したいと思います。

 その上で、今後のコロナワクチンの接種のあり方を考察してみたいと思います。どうか最後まで、ご一読頂ければ幸いです。

 日本介護新聞発行人

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 今回の調査を実施した「東京iCDC」は、感染症に関する政策立案、危機管理、調査・分析、情報収集・発信など、効果的な感染症対策を一体的に担う常設の司令塔で、東京都の新型コロナの感染防止対策に様々なデータを提供し、提言もしてきました。

 「はじめに」でも記したように今回の本紙では、東京iCDCが今年6月5日に公表した「新型コロナウイルスのワクチンに関する意識」の中で、今回の本紙記事の趣旨に関連する項目について、ご紹介いたします。

 内容の一部は本紙読者にわかりやすいように、記事に関連する部分の結果のみを抜粋しています。この点をご了承の上、読み進めて頂きたいと思います。なお内容の一部は、過去に弊紙で記事として配信をしております。調査の概要は次の通りです。

 ■調査対象=東京都在住の20代~70代の都民とし、年齢構成を都の人口比率に合わせた割当抽出を行った。
 ■調査期間=今年2月15日~21日までの1週間。有効回収票数は1万0,429人。

 さらに、記事中の「▼」印はワクチン接種に肯定的な回答で「◆」印はそれに対する東京iCDCの解説。同様に「▽」印はワクチン接種に否定的な回答で「◇」印も同様に、それに対して東京iCDCが説明した内容です。

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質問1=あなたは、新型コロナワクチンの接種を受けたか?
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 ▼21.9%=「すでに5回接種した」
 ▼28.6%=「すでに4回接種した」
 ▼24.8%=「すでに3回接種した」
 ▼9.5%=「すでに2回接種した」
 ▽3.1%=「まだ接種しておらず、今後もおそらく接種しない」
 ▽5.4%=「まだ接種しておらず、今後も絶対に接種しない」
 ▽4.9%=「まだ接種しておらず、今後はどうするかわからない」

 ◆回答した方のうち、「5回接種した」と「4回接種した」を合計すると5割を超えており「3回接種した」を含めると、その割合は75%以上となっている。

 ◇一方、「まだ接種しておらず、今後もおそらく接種しない」「まだ接種しておらず、今後も絶対に接種しない」「まだ接種しておらず、今後はどうするかわからない」との回答を合計すると、1割以上になった。

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質問2=「すでに接種した」「まだ接種していないが、今後必ず接種する」と回答した方へ、その理由は何か?(複数回答)
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 ▼47.6%=「接種費用が無料だから」
 ▼43.6%=「新型コロナのワクチンに効果があると思うから」
 ▼32.2%=「社会全体の感染対策につながると思うから」

 ◆接種の理由については「接種費用が無料だから」が約5割と最も高く、「新型コロナのワクチンに効果があると思うから」が約4割、「社会全体の感染対策につながると思うから」が約3割で続いた。

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質問3=「まだ接種しておらず、今後もおそらく接種しない」「まだ接種しておらず、今後も絶対に接種しない」「まだ接種しておらず、今後どうするかはわからない」と答えた方へ、それはなぜか?(複数回答)
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 ▽35.3%=「新型コロナのワクチンの効果に疑問があるから」
 ▽35.1%=「新型コロナのワクチンの副反応が心配だから」
 ▽28.3%=「新型コロナのワクチンの重篤な健康被害が心配だから」

 ◇接種しない理由については「新型コロナのワクチンの効果に疑問があるから」「新型コロナのワクチンの副反応が心配だから」との回答がいずれも約35%となっており「新型コロナのワクチンの重篤な健康被害が心配だから」との回答も約28%となった。

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質問4=「すでに1~5回接種した」と答えた方へ、あなたは次回の新型コロナワクチンの接種について、どのようにお考えか?
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 ▼21.5%=「なるべく早く接種したい」
 ▼40.7%=「急がないが接種したい」
 ▽20.4%=「おそらく接種しない」
 ▽4.7%=「絶対に接種しない」

 ◆回答結果は「なるべく早く接種したい」「急がないが接種したい」の合計が約6割となった。また、女性より男性の方が接種意向が高く、年代別では年代が高くなるほど接種意向も高くなる傾向となった。

 ◇一方「おそらく接種しない」「絶対に接種しない」と回答した方の合計は約25%だった。

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質問5=「おそらく接種しない」「絶対に接種しない」「わからない」と答えた方へ、それははなぜか?(複数回答)
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 ▽33.5%=「以前のワクチン接種後の副反応がつらかったから」
 ▽24.5%=「新型コロナのワクチンの効果に疑問があるから」
 ▽21.9%=「新型コロナのワクチンの副反応が心配だから」
 ▽13.0%=「新型コロナのワクチンの重篤な健康被害が心配だから」
 
 ◇回答結果は「以前のワクチン接種後の副反応がつらかったから」が約3割と最も高く「新型コロナのワクチンの効果に疑問があるから」「新型コロナのワクチンの副反応が心配だから」がそれぞれ約25%と約22%で続く結果となった=グラフ・東京iCDCのnoteより

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質問6=今後、どのくらいの頻度でワクチンを接種したいと思うか?
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 ▼14.6%=「半年に1回程度」
 ▼23.1%=「年に1回程度」
 ▼22.2%=「科学的な根拠に基づいた接種頻度であれば、間隔が短くても長くても構わない」
 ▽19.2%=「もう接種する気はない」

 ◆「年に1回程度」「科学的根拠に基づいた接種頻度であれば、間隔が短くても長くても構わない」との回答が、それぞれ約2割「半年に1回程度」との回答が約15%となった。

 ◇一方「もう接種する気はない」との回答は、約2割だった。

◇─[おわりに]───────────

 冒頭の[はじめに]で「政府が公表した最新のデータで、65歳以上の高齢者の『秋開始接種』の接種率は『40.8%』、高齢者も含めた国民全体の接種率は『16.5%』とご紹介しました。

 一方で、東京iCDCの調査は高齢者だけではなく、全世代のバランスを考慮して回答を求めています。この点を考慮しても、東京iCDCの「質問6」では、都民の約6割はワクチン接種に肯定的な回答をしています。

 東京iCDCの調査はあくまで都民が対象ですが、もし同じ調査を現時点で再度実施すると、現在の都内のマスクの着用率等から推察すれば、やはりコロナワクチンに肯定的な意見は減少し、逆に否定的な考え方は増加しているのではないかと思われます。

 新型コロナが「5類」に移行し、マスクの着用をはじめとした感染防止対策は「個人の判断」が尊重され、ワクチン接種も同様になります。このような中で厚労省は、高齢者施設の入所者や介護従事者に対しては「接種率100%」を求めています。

 これらの状況を考え合わせた時に、新型コロナが「5類」に移行する直前に、東京iCDCの賀来満夫(かく・みつお)所長が、都民に対して発信したメッセージを思い出しました。その要旨は次の通りです。

 ▼「まず、感染症についての考え方やリスクをぜひ、ご理解頂きたい。感染症はガンや高血圧症とは異なり、個人の病気を超え、他の方へうつっていく。そのため新型コロナは『社会全体の病気』となる」

 ▼「『自分を守る』とは『周囲を守る』こと、また『社会を守る』になることをぜひ、ご理解頂き『自己管理』をしっかりと行って頂くことが大切だ。発熱や倦怠感などの症状があったら『次に、どのような行動を取ったらよいのか』ご確認頂きたい」

 この賀来所長のメッセージの重要性をここで再確認し、政府や厚労省はワクチン接種を含めた感染防止対策の重要性をあらためて国民へ周知するとともに、介護業界もこの趣旨を踏まえたメッセージを広く発信していくべき時ではないかと、弊紙では考えます。

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