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「新ワクチン」接種間隔が「3ヶ月に短縮」されると「高齢者」の5回目接種はどうなる?

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*****令和4年9月24日(土)第150号*****

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「新ワクチン」接種間隔が「3ヶ月に短縮」されると「高齢者」の5回目接種はどうなる?
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◇─[はじめに]─────────

 このところ、新型コロナのワクチン接種で「オミクロン株対応ワクチン」という言葉をよく耳にします。弊紙でもその内容は、何度かビジネス版の方で取り上げましたが、これまでのワクチン接種回数の違いにより、接種できる時期が人によって異なります=フローチャート・厚労省HPより

 また、前回接種から「原則5ヶ月」と発表された接種間隔も、現在は「短縮する方向で検討」されています。これらの点について、厚生労働省がこれまでに発表した内容を整理すると、次の3点に要約されます。

 ■1.「オミクロン株対応ワクチン」の接種は、初回接種(1・2回目接種)を完了した12歳以上の全ての方を対象に、前回の接種から少なくとも5ヶ月以上の間隔を空けて1回接種する。接種は、全国の一部の自治体で、9月20日(火)から開始された。

 ■2.「オミクロン株対応ワクチン」の接種間隔は、現在は「原則5ヶ月以上」だが今後、海外の動向・有効性・安全性等の情報を踏まえ、接種間隔を短縮する方向で検討し、10月下旬までに結論を得る。

 ■3.これらの点を踏まえて、初回接種(1・2回目)を完了し、接種を希望する12歳以上の全ての方が、本年中(今年12月末まで)に接種を受けられるように見据えて、厚労省は自治体とも連携して、準備を進めていく。

 このうち「2」の「接種間隔5ヶ月の短縮」について、一部のマスコミがこの前の水曜(9月21日)に「政府が、3ヶ月に短縮する方向で調整している」等と報じました。その翌日(9月22日)松野博一内閣官房長官は、午前の定例記者会見でこの点を問われました。

 松野長官は、否定も肯定もせず、従来の決定事項(上記の1~3)を述べたのみで、明言を避けました。詳細は弊紙ビジネス版9月22日号をご覧頂きたいと思いますが、これにより政府が「3ヶ月に短縮」することを前提に、調整していることが明らかになりました。

 それでは、4回目をすでに接種し終えて、これから「オミクロン株対応ワクチン」で5回目を接種しようとする60歳以上の「高齢者」は今後、どのような状況の中で、接種を受けることになるのか――。

 今回、本紙ではこの点に絞って「高齢者」が5回目を接種する際に知っておきたい留意点をご紹介したいと思います。今回の記事が、多くの読者の皆さんに「オミクロン株対応ワクチン」の接種を、積極的に考える材料となれば幸いです。

 日本介護新聞発行人

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 これまでの「従来型」のワクチンは、新型コロナウイルスの従来株(=武漢株)のみに対応する「1価」ワクチンでしたが、今回の記事で紹介する「オミクロン株対応ワクチン」は、従来株とオミクロン株の両方に対応する「2価」ワクチンとなっています。

 「オミクロン株対応ワクチン」は、一部の自治体で9月20日から接種が開始されましたが、これはオミクロン株の「BA.1対応型」と呼ばれています。一方で、同じオミクロン株の「BA.4/5対応型」が現在、製薬会社から薬事申請されています。

 これが薬事承認されれば、こちらも「オミクロン株対応ワクチン」として使用されることになります。ただしこちらはまだ薬事承認されるまで時間がかかりますので、今回の記事で「オミクロン株対応ワクチン」とは、注釈がない限り「BA.1対応型」を指します。

 また今回の記事では「オミクロン株対応ワクチン」(BA.1対応型)の名称が長いため以下、記事中では略して「新ワクチン」と表記します。

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「新ワクチン」の接種間隔の短縮は、なぜ「3ヶ月」で検討されているのか?
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 そもそも、なぜ短縮される接種期間が「3ヶ月」なのか? これまで厚労省が発表してきた内容を考察すると、主に次の2点が考えられます。

 ■理由1【諸外国の「新ワクチン」の接種間隔が「2~3ヶ月」であること】

 厚労省が、有識者会議等で示している資料では、すでに「新ワクチン」の接種を開始している諸外国の主な状況について、次のように述べています。

 ▼米国=政府の専門機関は、今年9月1日時点で「新ワクチン」(ただし「BA.4/5対応型」)の接種を「12歳以上の人」に対して推奨している。接種間隔は「前回接種から、少なくとも2ヶ月の間隔を空けて接種が可能」としている。

 ▼英国=今年9月3日時点で「新ワクチン」(BA.1対応型)の接種が提供されるべき対象として「高齢者向け介護の入居者とスタッフ、第一線の医療・社会福祉従事者、50歳以上の者」等を挙げ「前回接種から少なくとも、3ヶ月の間隔を空けて接種されるべき」。

 ▼カナダ=「新ワクチン」(BA.1対応型)の接種対象者として「65歳以上の高齢者、長期療養施設入所者やその他の施設に居住する高齢者」等を挙げ、9月1日時点で「前回の接種から6ヶ月以上の間隔を空けるが、疫学的状況等に応じて最短3ヶ月まで短縮し得る」。

 ■理由2【インフルエンザワクチンとの「同時接種」のタイミングが取りやすいこと】

 厚労省が9月14日に開催した、新型コロナ感染症対策アドバイザリーボード(厚労省専門家会議)では、専門家から「インフルエンザとの同時流行を想定した『第8波』対策の課題について」との資料が提示されました。

 この資料の中で専門家は、日本と季節が逆になるオーストラリアでインフルエンザが流行した点を指摘し「オーストラリアの流行の方が数ヶ月早く、日本も同様となる可能性がある」

 「日本で、インフルエンザの流行と、新型コロナの感染拡大期(過去の第3波・第6波では、12月から1月がピークとなった)が重複すると、保健医療体制のひっ迫を助長する可能性がある」等と、警鐘を鳴らしました。

 その対策としてインフルエンザワクチンと「新ワクチン」の「同時接種」を推奨し「仮に(現時点の原則5ヶ月から短縮して)前回接種から『3ヶ月後』への前倒しだと、接種のピークが10~11月となり同時接種のタイミングが取りやすい」等と指摘しました。

 その具体的な理由として、次の2点を挙げました。

 ▼インフルエンザワクチンの予防接種=10月から開始すると、10~11月で高齢者の8割が接種することになる。加えて小児の60%、成人の30%が任意接種を受けると想定される。これにより、一般的には接種開始初期に、インフルエンザワクチンの接種が集中する。

 ▼「新ワクチン」=多くの高齢者は、前回の4回目接種を6~7月に受けており、現在の「原則5ヶ月後」だと11~12月がピークとなるが、仮に「3ヶ月後」へ前倒し(を10月下旬に決定)すれば10~11月となり「同時接種」のタイミングが取りやすい。

 なお厚労省によれば、今年のインフルエンザワクチンの接種は「9月末の時点で約1,670万本が出荷される予定で、早期に多くの量のワクチンが出荷される見込み」等と発表しています。

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「新ワクチン」の接種間隔が「3ヶ月に短縮」されると、どんな「課題」が生じるのか?
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 それでは、現実に「新ワクチン」の接種間隔が「3ヶ月に短縮」された場合に、どのような「課題」が生じるのか――。先述の、厚労省が9月14日に開催した専門家会議では、次の点を指摘しています。

 インフルエンザワクチンの予防接種を、予定通り10月から開始すると、10~11月で高齢者の8割が接種することになる。加えて小児の60%、成人の30%が任意接種を受けると想定される。これにより、一般的には接種開始初期に集中する。

 国・都道府県設置の大規模接種施設(自衛隊大規模接種会場等)は、市町村実施の法定インフルエンザ接種は実施できないため「同時接種」は不可能だ。結果として10~12月の対象者は都内では1千万人以上となり、この間に大量接種を実施する体制が必要となる。

 医療機関には新型コロナワクチン従来型・2価型(=「新ワクチン」)・小児用・インフルエンザ等のワクチンが混在し、接種間違い防止のためにマネジメントの工夫を要する。

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「新ワクチン」の「打ち控え」とは、何か?
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 現在「新ワクチン」は「BA.1対応型」のみですが、一方で「BA.4/5対応型」が製薬会社から薬事申請されています。一部で「どうせ『新ワクチン』を接種するなら『BA.4/5対応型』が、薬事承認されるまで待った方が良いのでは?」との声も聞かれます。

 これに対し厚生労働省は、9月14日に開催した「新ワクチン」に関する自治体(都道府県・市区町村等)向け説明会の資料で、あらかじめ自治体側から質問が出るのを想定して、次のような「Q&A」を示しました。

 ▼問1=「BA.1対応型」と「BA.4/5対応型」の、どちらのワクチンの方が効果があるか? いずれ「BA.4/5対応型」が接種できるようになるのであれば「BA.1対応型」の接種は控えたい、と要望する住民の方に対して、どのように説明すればよいか?

 ▽答1=現時点の知見を踏まえた、専門家による検討では、従来株と、現在流行しているオミクロン株との間の抗原性の差を比較すると、オミクロン株の中での亜系統間の抗原性の差(例えば「BA.1」と「BA.4/5」の差)は、大きくないことが示唆されています。

 このため「オミクロン株対応ワクチン」=(「新ワクチン」)は、オミクロン株の種類(「BA.1」と「BA.4/5」)に関わらず、オミクロン株成分を含むことで、従来型ワクチンを上回る効果があることが期待されています。

 また(「BA.1対応型」は)オミクロン株と武漢株の2種類の成分が含まれることで、今後の変異株に対しても有効である可能性がより高いことが期待されています。そのため、その時点でオミクロン株成分を含む接種可能なワクチンを接種頂くようお願いいたします。

 ▼問2=「オミクロン株対応ワクチン」(=「新ワクチン」)は、何回接種するのか?

 ▽答2=1回です。過去の接種歴の違いにより「オミクロン株対応ワクチン」の接種が3回目・4回目・5回目になる場合がありますが、いずれの場合でも現時点では「オミクロン株対応ワクチン」の接種は1回になります。

 ▼問3=「オミクロン株対応ワクチン」を接種した後は、どのワクチンを接種するのか?

 ▽答3=現時点では、初回接種(1・2回目接種)完了者は、3回目接種以降は「オミクロン株対応ワクチン」を1回接種することとしています。その後のワクチン接種については、今後、科学的知見等の収集に努める中で、検討することになります。

 ▼問4=「BA.1対応型ワクチン」を接種した後は「BA.4/5対応型ワクチン」を接種するのか?

 ▽答4=現時点では、初回接種(1・2回目接種)完了者は、3回目接種以降はオミクロン株対応ワクチン(「BA.1対応型」または「BA.4/ 5対応型」)を「1回接種すること」としています。

 その後のワクチン接種については今後、科学的知見等の収集に努める中で検討することになります。なお「BA.4/5対応型」ワクチンは、現在薬事承認申請中です。

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「新ワクチン」による5回目接種の接種券は、いつ送付される?
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 また厚労省は、全国の市区町村に宛てて、60歳以上の「高齢者」が5回目を接種する際の接種券の送付について「10月末までに接種券を送付する」ことを求めています。この点でも、自治体向け説明会で次のような「Q&A」を示しています。

 ▼問5=4回目接種完了者へは「10月末までに接種券を送付する」よう示されているが、これは「接種時期が到来していない者にも、10月末までに接種券を配布する」という趣旨か?

 ▽答5=オミクロン株対応ワクチン接種の接種間隔については、安全性等の観点から、現時点では「5ヶ月以上とする」ことが適当であるとされたものの今後、海外の科学的知見等を踏まえて、短縮する方向で検討します。

 これは「10月下旬までに結論を得る」予定としています。現行の接種間隔(5ヶ月以上)に基づくと、接種時期の到来が11月以降になると考えられる方についても、接種間隔が短縮された場合「11月初頭から直ちに接種時期が到来する」可能性もあります。

 このため「10月末までに、全ての接種対象者への接種券配布が可能となる」ような準備を進めていただくよう、お願いいたします。

◇─[おわりに]─────────

 今回の記事の内容を要約すると「高齢者等が『新ワクチン』を5回目として接種する場合は、接種間隔が『3ヶ月に短縮』される可能性が高く、多くの方が11月初頭前後から受けることができそうだ。その際は、インフルエンザワクチンとの『同時接種』も可能だ」

 「ただし『同時接種』を受けようとしても、地元の医療機関が『同時接種』に対応できるかどうか、事前に確認しておく必要がある。また『新ワクチン』による5回目の接種券は、遅くとも10月末までに、居住している市区町村から送付される」――。

 テレビの情報番組等で、多くの感染症の専門家は「第8波は、必ず来る」と予想しています。またインフルエンザとの「同時流行」にも、警鐘を鳴らしています。いずれにせよ、全てが動き始めるのは「政府が、10月下旬までに短縮期間を決定」して以降になります。

 それまでに、本紙の読者の皆さんにはぜひ「新ワクチンをいつ、どこで接種するか?」「その際に、インフルエンザワクチンは『同時接種』するのか? それとも別途、接種するのか?」等について、じっくりと考えておいて頂きたいと思います。

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