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コロナが「5類」となる5月8日以降、介護サービス利用者はどのような対応をすべきか?

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*****令和5年3月19日(日)第156号*****

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コロナが「5類」となる5月8日以降、介護サービス利用者はどのような対応をすべきか?
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◇─[はじめに]─────────

 先月配信した本紙前号では「3月13日以降、マスク着用は『個人の判断が基本』だが『本当にマスクを外して大丈夫?』」と題した記事をお届けましました。そして先週月曜(3月13日)から、ついに「個人の判断」に委ねられることになりました。

 この「マスク着用のルール」(=3月13日以前は、屋内では原則着用、屋外では原則不要)の変更は、新型コロナの感染症上の位置づけが5月8日から「5類」へ移行することに伴い、学校等での卒業シーズンに備えて、先行する形で実施されたものです。

 5月8日からは、いよいよ本格的に、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザと「同等」となります。これに伴い、介護業界ではどのように対応して、介護サービス利用者はどのような影響を受けるのか……?

 この点に対して、3月8日に開催された厚労省の専門家会議で、日本を代表する感染症の専門家等が連名で「医療機関と高齢者施設における、新型コロナウイルス対策についての見解~感染症法上の類型変更を見据えて~」を公表しました=画像・厚労省HPより。黄色のラインマーカーは、弊紙による加工

 ここでは5月8日以降「高齢者施設ではどのように対応すれば良いのか?」を、5つのQ&Aで示しています。これは、基本的には介護事業者向けの「考え方」を示したものですが、本紙の主な読者層である介護サービス利用者にとっても参考になる内容です。

 そこで本紙では「介護業界では5月8日以降、どのように対応すべきなのか?」「介護サービス利用者は5月8日以降、どのような点に留意すべきなのか?」を、読者の皆さんが考える際の参考にして頂くべく、この内容を取り上げることにいたしました。

 感染症の専門家等が、介護業界に対してどのようなメッセージを発信しているのか……。どうか最後まで、ご一読頂ければ幸いです。

 日本介護新聞発行人

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 「はじめに」にも記したように、今回の記事は厚労省の専門家会議が3月8日に発表した「医療機関と高齢者施設における新型コロナウイルス対策についての見解~感染症法上の類型変更を見据えて~」の中で、介護業界に関係する部分のみご紹介いたします。

 内容の一部は、本紙の読者の皆さんにも理解しやすいように、弊紙で簡易な表現に改めた部分がありますので、この点をご了承の上、以下の記事をお読み頂ければ幸いです。内容は「前置き」と、5つの「Q&A」で構成いたします。

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前置き=「コロナ対策は一部に混乱が生じていたり、過剰に行われたりする事例が…」
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 新型コロナウイルス感染症の発生から約3年が経過し、ウイルスの特性については多くのことが明らかになっている。

 医療機関や高齢者施設における感染対策についても、手指衛生などの標準的な予防策に加えて、マスクを適切に着用することや、十分な換気を行うことの有効性などが明らかとなっている。

 ただし、入院患者への面会制限や職員に対する行動制限、あるいはスクリーニング検査の実施範囲などにおいて、一部に混乱が生じていたり、過剰に行われたりすることがあるようだ。

 今年の5月、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へと変更される予定となっている。しかし位置づけが変更された後も、一定の流行が繰り返されることが想定される。

 このため、入院患者や高齢者など、重症化リスクの高い人たちが集まる医療機関や高齢者施設においては、施設内において感染が拡がらないよう対策を続けていくことが求められる。

 ただし、地域における医療・介護資源は限られている。医療や介護のニーズ全体に応えていくためには、施設ごとに様々な工夫を行いながら、効果的かつ持続可能な感染対策を見出していかなければならない。

 患者や利用者の側も、できるだけ(高齢者施設や医療機関の)対策に協力し、かつ現実を踏まえて「完璧さ」を求め過ぎないことも必要だ。また高齢者など重症化リスクの高い方々は、ワクチン接種を最新の状態に保つことで、日頃より感染によるリスクや感染を拡げるリスクを低減させておくことが重要だ。

 そして、医師が常駐しない高齢者施設においては、発症後の診断や治療の遅れが生じないよう、前もって嘱託医師あるいは近隣医療機関と相談しておくことも大切だ。

 この見解は、医療機関や高齢者施設における対策のうち、とくに疑問が生じやすい場面を想定して、医療や福祉、倫理など多分野の専門家の検討のもとに考え方のフレーム(背景や枠組み)を提供するものだ。

 それぞれの施設においては、個々の状況に基づいて最終的に判断するようにして頂きたい。また、施設内における集団感染の発生時には、速やかに保健所へ連絡するとともに、その指導に従うようにして頂きたい。

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「デイサービスはウイルスが持ち込まれやすい。できるだけマスクを着用するよう…」
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 ▼Q1=医療機関や高齢者施設において、日常的にマスクを着用する必要があるか?

 ▽A1=はい。高齢者施設の職員等は、サージカルマスクを着用することが望ましいです。今年(2023年)2月の時点で、全国のほとんどの地域で感染者の報告が認められており、日本国内では流行が持続している状況にあります。

 このため、基礎疾患を有する方や高齢者など重症化リスクの高い方々が集まる場所で、感染拡大のリスクを減らしていくためには、マスク着用に協力頂くことが望ましいです。

 特に、生活の場が異なる方々が集まる外来診療の待合室やデイサービスなどでは、ウイルスが持ち込まれやすくなっています。できるだけマスクを着用するよう、その場にいる方々に促してください。

 一方、個室や個人のベッド上など公共性の低い場所では、入院患者や入居者はマスクを外して過ごすことができます。また、利用者の出入りの少ない入居施設では、共用スペースであってもマスクを外して過ごすことは考えられます。

 ただし、医療・介護従事者は常にマスクを着用して業務にあたるようにして下さい。なお医療・介護従事者であっても、周囲に人がいない場面など「マスクの着用が必要ない」と考えられる場面については、各施設の管理者が判断をすることができます。

 なお、認知症や基礎疾患の状態などにより、マスクを継続して着用することが困難な方がいらっしゃいます。これらの方々には体調管理により留意しながら、マスク着用を強要しないようにしてください。

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「高齢者施設は、訪問者の面会を許可することができる。施設側は配慮と工夫を……」
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 ▼Q2=医療機関や高齢者施設において、訪問者の面会を許可することができるか?

 ▽A2=はい、許可することができます。施設内への感染症の持ち込みは極力防ぐべきですが、患者や高齢者の面会を制限することにより、身体的・心理的・社会的な衰えをもたらす可能性についても配慮する必要があります。

 ただし、地域における流行状況によっては、例えば感染対策を守ることが難しい子どもの直接の面会に、条件を課すことは考えられます。オンライン画面を活用するなど、面会方法を工夫しながら実現することも検討してください。

 施設では、訪問者を受け入れるにあたって、訪問者に発熱や咳嗽(=がいそう。「せき」のこと)などの症状がないことを確認してください。そして、訪問者は、施設内ではマスクを常に着用し、決められた場所でのみ面会して下さい。

 また面会者等は、施設が求める感染対策を遵守することで、できるだけ施設内へとウイルスを持ち込まないよう協力してください。なお、居住型施設などのプライベートな室内では、別な対応が考えられます。

 例えば、訪問者がマスクを外して入居者と食事をしたり、孫を抱くなど触れ合ったりすることが考えられます。こうした面会の在り方については、地域における流行状況を考慮しながら、施設として過度な制限をかけないよう配慮してください。

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「高齢者施設で感染者が確認された場合でも、フロア全体のゾーニングは必要ない…」
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 ▼Q3=医療機関や高齢者施設で感染者を認めた場合には、フロア全体のゾーニング(=ある空間を「区分け」すること)が必要か?

 ▽A3=基本的には必要ありません。ただし、フロア全体に感染が拡がっている場合には、確定している感染者のみの「専用フロア」として運用することも考えられます。

 通常は、病室単位のゾーニング(例えば、室内をレッド、ドア周囲をイエロー、ドアの外をグリーンとする)や、陰圧室(※)である必要はありませんが、感染者のいる病室からエアロゾル(※)が廊下に流出しないよう、ドアを閉じておくことが必要です。

 また、病室の機械換気において、排気が給気よりも多くなるように工夫します。

 【弊紙注=陰圧室=陰圧感染隔離室のこと。室内の気圧を室外よりも低くすることで、ウィルス等で汚染された可能性のある空気を室外に逃さないようにして、感染症の拡大を防止する

 【弊紙注=エアロゾル=気体中に浮遊する微小な液体、または固体の粒子と周囲の気体の混合体

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「施設職員に対する定期的な検査は感染のリスクを減らすが、感染対策は代替しない」
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 ▼Q4=高齢者施設の職員を対象として、定期的な検査を実施する必要があるのか?

 ▽A4=職員の感染を早期に発見し、施設内での感染拡大を防止するため、行政からの支援や要請がある場合には、職員に対する定期的な検査を継続することは考えられます。

 ただし、地域における流行規模が小さい状況のほか、ワクチン接種を含めた施設内感染対策が徹底できている場合、職員が体調不良時に、速やかに仕事を休める就労環境が確立できている場合などでは、定期的に検査を行う意義は小さくなります。

 職員に対する定期的な検査は、施設内感染のリスクを減らしますが、基本的な感染対策を代替するものとはなりません。実施すべきかについて、一律に決定することはできないため、施設ごとに補完的な対策として総合的に判断してください。

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「入所者に感染を確認した場合の治療方針は、介護従事者のみで判断せず医師等に…」
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 ▼Q5=入所者に感染を確認した場合には、すべてに抗ウイルス薬を投与すべきか?

 ▽A5=軽症例の大半は自然治癒するため、一律に抗ウイルス薬を投与する必要はありません。ただし、基礎疾患を有する方やワクチン未接種者など重症化リスクが高い人、重症化の兆候を認める人には、個別に薬物治療の適応を判断することになります。

 これらの治療方針については、介護従事者のみで判断することはできません。かかりつけ医や嘱託医などの判断を速やかに求めるようにしてください。必要な治療の遅れが生じないよう、相談体制を含めて、事前に医師と話し合っておく必要があります。

◇─[おわりに]─────────

 今回ご紹介した、厚労省専門家会議のメンバーの提言で、弊紙が最も注目したのは「位置づけが変更された後でも、コロナでは一定の流行が繰り返されると想定される」という点です。

 新型コロナの感染症法上の位置づけが、インフルエンザ等と「同等」となっても、やはり「特別な配慮」は必要であり続けると思われます。一方で専門家は「過剰な感染防止対応策にはならないように」とも指摘しています。

 その「加減」は非常に難しいと思われますが、今後の対策については、介護サービスを利用する側も、介護事業所に対して「このようにすべきではないか?」と提言していくことも必要と思われます。

 いまだかつて、誰も経験したことのない「新たな感染防止対策」を構築するため、介護サービスの利用者側も「声をあげていくべき」だと、弊紙では考えます。

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