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高齢者コロナワクチン接種「接種回数が増えるほど、死亡率が下がる傾向がみられる」

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*****令和5年1月21日(土)第154号*****

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高齢者コロナワクチン接種「接種回数が増えるほど、死亡率が下がる傾向がみられる」
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◇─[はじめに]─────────

 直近で、各都道府県や全国で、新型コロナの感染による死亡者数が「過去最多」を更新しています。新規感染者数が「減少傾向」であるのに対しなぜ、死亡者数だけが増えているのか……? 弊紙発行人のような医療の素人には、全く理解ができません。

 この原因について、多くの感染症の専門家が「実際に、都道府県等へ報告されていない感染事例が多数あると思われる」等と推測しています。また、厚労省によれば「死亡事例の多くは、65歳以上の高齢者で、特に80歳以上の割合が高い」そうです。

 対策として、厚労省は「オミクロン株対応ワクチンの、積極的な接種の検討」を呼びかけています。これを単純にとらえると「コロナワクチンを接種すれば、特に高齢者は死亡するリスクが低くなる」ことが想定されますが、本当にそうなのか……?

 その疑問に応える形で神奈川県が、独自のデータを分析して「高齢者は、コロナワクチンの接種回数が増えるほど、死亡率が下がる傾向がみられる」との分析結果を、1月4日に公表しました。

 調査の対象(昨年7月1日から12月20日まで)となったのは、オミクロン株対応ワクチンを含む、これまでの新型コロナワクチンです。政府の発表によれば、オミクロン株対応ワクチンの、65歳以上の高齢者の接種率は昨日(1月20日)時点で67.4%です。

 オミクロン株対応ワクチンを接種すれば「死亡事例の全てが防げるわけではない」でしょうが、少なくとも現状では「高齢者にとって現実的で、最も有効な重症化予防対策」になると思われます。

 そこで今回、弊紙ではこの神奈川県の調査・分析結果を本紙の読者の皆さんにお届けいたします。この記事がまだ、オミクロン株対応ワクチンを接種していない方に対し「そんなに効果があるなら、接種してみようか…」等の動機付けになれば幸いです。

 どうか最後まで、ご一読頂ければ幸いです。

 日本介護新聞発行人

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65歳以上に限定して、神奈川県が「コロナに感染した方の、ワクチン接種状況」を分析
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 神奈川県では、新型コロナのワクチンの効果について、次のように説明して、積極的な接種を呼びかけています。

 一般に、感染症にかかると、病原体(ウイルスや細菌など)に対する「免疫」(抵抗力)ができます。「免疫」ができることで、その感染症に「再びかかりにくくなった」り、かかっても「症状が重症化しにくくなる」ようになります。

 ワクチンの接種は、このような体のしくみを使って、免疫を獲得したり、免疫を強くする効果があり、現在接種が行われている新型コロナワクチンは、新型コロナウイルス感染症の発症を予防する効果や、重症化・死亡予防効果が確認されています。

 これらの「効果」を説明した上で神奈川県では「コロナに感染した方の、ワクチン接種状況の分析」を次のような手法で実施し、県内で「新型コロナウイルス感染症」と診断された患者に対して、ワクチンの接種状況と死亡例の割合を調査しました。

 抽出元データ=HER-SYS(=ハーシス=保健所等の業務負担軽減や、保健所・都道府県・医療機関等の関係者間の情報共有・把握の迅速化を図るため、厚労省が開発した、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)を用い、県でデータを補完した。

 抽出条件=65歳以上に限定する。理由は、64歳以下は重症化リスクの高い人や入院者等を除き、届出が対象外のため。

 「死亡」の診断日=昨年(令和4年)7月1日から12月20日。ただし、分析結果は12月26日時点のデータに基づく。

 分析結果の「接種区分」(=接種回数)の条件設定=HER-SYS上で、接種情報が確認できるもの。一部は県の「新型コロナ療養サポートシステム」より補完した。

 「死亡例」判定の条件設定 =HER-SYS上で、発生届の診断類型が「死体」に類するもので、HER-SYS上の「その他」の項目から「死亡」が確認できるもの。

 注意事項=情報の届け出は「保健所ベース」ではないため、記者発表とは感染者数・死亡者数とも対象が異なる。また、再感染で療養サポート情報が上書きされた場合、接種情報が「不明等」になる可能性がある。

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65歳以上の「死亡率」=最終接種から「15日~60日」に罹患した人の割合が最も低い
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 65歳以上の「全体」のデータをみると、ワクチン接種2回目以降、回数問わず最後の接種から「15日~60日以内」に罹患した人の死亡例の割合が「0.27%」と、最も低いことが確認できました。その後、時間の経過とともに死亡例の割合は上がっています。

 それでも、接種から「181日以上経過」して(0.74%)も、次のデータで示されたように、未接種者の死亡例の割合(1.42%)を下回っています。

 ▼そもそも未接種な方の死亡割合=1.42%
 接種から「14日以内」に死亡した高齢者の割合=0.38%
 ▼接種から「15日以上60日以内」に死亡した高齢者の割合=0.27%
 接種から「61日以上120日以内」に死亡した高齢者の割合=0.40%
 接種から「121日以上180日以内」に死亡した高齢者の割合=0.47%
 接種から「181日以上」で死亡した高齢者の割合=0.74%

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65歳以上の「高齢者全体」データと比べると、80歳以上の方が死亡例の割合が高い傾向
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 この「全体」のデータを「80歳以上」に限定したデータと比べると「80歳以上」の方が、死亡例の割合が高い傾向が確認できました。こちらも割合として、最も低かったのは「15日以上60日以内」(0.50%)でした。

 この割合は、こちらも同様に時間の経過とともに死亡例の割合は上がりますが、接種から「181日以上経過」(1.32%)しても、次のデータで示されたように、未接種者の死亡例の割合(2.69%)を下回っています。

 ▼そもそも未接種の、80歳以上の方の死亡割合=2.69%
 接種から「14日以内」に死亡した、80歳以上の方の割合=0.88%
 ▼接種から「15日以上60日以内」に死亡した、80歳以上の方の割合=0.50%
 接種から「61日以上120日以内」に死亡した、80歳以上の方の割合=0.74%
 接種から「121日以上180日以内」に死亡した、80歳以上の方の割合=1.01%
 接種から「181日以上」で死亡した、80歳以上の方の割合=1.32%

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65歳以上の感染者数死亡例の割合は、ワクチンの接種回数を重ねるごとに「低下」する
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 次に、神奈川県では「感染者数と死亡例の割合」を、接種回数別に考察しています。未接種者の死亡例の割合が最も高く、接種回数を重ねることで死亡例の割合が下がっていく傾向が確認できました。

 また、初回接種(1・2回目接種)までに止まらず、追加接種(3回目接種以降)を行うことで、2回目接種までの死亡例の割合を、追加接種の死亡例の割合が下回りました。

 なお接種回数別で、接種から経過した日数の内訳を分析したところ、2・3回接種済みで感染した方の多くは、接種から121日以上経過している傾向が確認できました。

 未接種者の死亡割合=1.42%
 1回目接種済者の死亡割合=1.27%
 2回目接種済者の死亡割合=0.97%
 3回目接種済者の死亡割合=0.55%
 4回目接種済者の死亡割合=0.33%
 ▼5回目接種済者の死亡割合=0.21%

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80歳以上は、4回目の接種により、未接種者と比べ約2%、死亡例の割合が下がる
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 この項目でも「80歳以上」に限定したデータを「65歳以上の全体」と比べると「80歳以上」の方が、死亡例の割合が高い傾向が確認できました。また4回目接種を行うこと(0.64%)で、未接種者(2.69%)と比べ約2%、死亡例の割合が下がっています=グラフ・神奈川県HPより

 ▼未接種者の死亡割合=2.69%
 1回目接種済者の死亡割合=2.31%
 2回目接種済者の死亡割合=1.73%
 3回目接種済者の死亡割合=1.16%
 ▼4回目接種済者の死亡割合=0.64%
 5回目接種済者の死亡割合=0.50%

◇─[おわりに]─────────

 岸田文雄首相は昨日、新型コロナの感染症法上の位置づけ変更について「原則として今春に、季節性インフルエンザと同じ『5類』に引き下げる」との考えを示しました。これにより、これまで無償だったワクチン接種がどうなるのか……。

 少なくとも、今回の記事で紹介した神奈川県のデータを見る限り、重症化リスクが高い高齢者に関しては、無償で継続すべきだと思います。また、オミクロン株対応ワクチンの、65歳以上の高齢者の接種率が昨日時点で「67.4%」なのも気にかかります。

 全国的に、コロナの新規感染者数は「減少傾向」にあるものの、これらの点をふくめ政府には改めて「高齢者に対する新型コロナの感染防止対策と、ワクチン接種の在り方」を、抜本的に検討してもらいたいと思います。

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