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コロナは「風邪」ではない。「風邪」に後遺症はない。コロナは高率で後遺症リスク有り

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***令和4年4月24日(日)第144号****

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コロナは「風邪」ではない。「風邪」に後遺症はない。コロナは高率で後遺症リスク有り
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◇─[はじめに]─────────

 前回の本紙(3月30日号)では、東京・世田谷区が実施した「新型コロナウイルス感染症後遺症アンケートの結果」で、3月28日に記者会見で発表した「第2回目の調査結果」を報じました。第1回目は昨年(令和3年)11月15日に、世田谷区が会見で公表しました。

 これを本紙では、第1回目は昨年12月25日号「コロナ療養後、120日が経過した時点の『後遺症の保有率』は、40代から70代で4割以上」として、第2回目は「コロナに感染すると、高い割合で後遺症が確認され、変異株の方がより高い割合になる」と報じました。

 この2回の調査結果について世田谷区は、東京大学の伊東乾准教授に解析を依頼し、第2回目の記者会見で伊藤准教授がその内容を発表しました。今回の本紙では、その中でも本紙読者に参考となる事項を5点に絞り、その内容をご紹介することにいたしました。

 現在、東京都内の新規感染者数は減少傾向にあるとは言え、いまだ1日当たり5千人前後のレベルで感染者が続いています。これが「第6波」の収束を意味するのか、それとも「第7波」の予兆なのか……。専門家の間ですら、様々な予測が述べられています。

 いずれにせよ、明確なのは「東京都内では、現在も1日で5千人規模の新規感染者が発生しており、これらの感染者は今後、後遺症を発症する可能性が高い」ということです。これは東京都内に限らず、全国的に共通して言えることだと思います。

 それでは、私たちは「コロナの後遺症」にどう向き合えば良いのか……? 伊東准教授は、今回の調査を実施した世田谷区の人口が現在、約93万人なのに対し「コロナ感染者は8万人を超えている。ほぼ10人に1人だ」

 「今、世田谷区民や都民、さらに国民の大半が新型コロナに感染する可能性があり、これから直面しなければならない『後遺症』はその先にある。その際の参考として、今回の分析結果を見て頂きたい」と述べています。どうか最後まで、ご一読頂ければ幸いです。

 日本介護新聞発行人

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 【調査の概要】世田谷区が実施した「新型コロナウイルス感染症後遺症アンケート」は、世田谷保健所に提出された新型コロナの発生届を元に対象者を特定し、これらの人々に郵送回答・インターネット回答を要請。第1回と第2回は、次のような内容で実施しました。

 ◇第1回調査=対象期間は令和2年3月~令和3年4月15日まで=対象人数は8,959人で、回答率は41.4%。有効回答数は3,710人。コロナの感染拡大の「波」に当てはめると「第1波・2波・3波・4波の途中までの感染者」となる。

 ◆第2回調査=対象期間は令和3年4月16日から9月30日まで=対象人数は1万8,553人で、回答率は33.9%。有効回答数は6,289人。コロナの感染拡大の「波」に当てはめると「第4波の途中から5波まで」となる。主に「アルファ・デルタ株」の感染者が対象。

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インフルエンザに後遺症はないが、コロナは高確率で後遺症リスクがある。風邪ではない
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 まず、今回の分析の大前提として、伊東准教授は「コロナは、インフルエンザとは全く別の病気だ。インフルエンザに後遺症はないが、コロナには高い確率で後遺症のリスクがある。繰り返すが、コロナは風邪ではなく、全く別の病気だ」と強調しています。

 さらに「デルタ株が主流となった第5波(=今回の第2回調査の対象)で、有意に後遺症の発症が増えた」ことを踏まえ、第1回・第2回の調査結果を比較し、判明したこととして次の4点を挙げました。

 ■1.女性の症発率が高い=女性は、3人に2人の割合で、コロナに感染すると何らかの後遺症を引きずっている。

 ■2.「入院しても無症状」は、後遺症では重要ポイント=新型コロナに感染して入院し、医師から「肺炎症状がない」と言われた人が、その後2人に1人は何らかの後遺症が出ている。「無症状」は重要なポイントだ。

 ■3.基礎疾患があってもなくても、半分以上は後遺症は出る=「私には基礎疾患があるから大変だ」ではない。「基礎疾患があっても、なくても」後遺症は出る。

 ■4.若年層から社会の中核世代に、幅広く後遺症が発生=特に、これらの世代に増加の傾向が確認される。ただし、調査する時期と場所により、後遺症はそれぞれ違ってくる。

 これらの各項目の内容について、詳細な分析を見てみたいと思います。

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コロナに感染した女性の約3人に2人が、その後に何らかの後遺症を引きずることになる
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 世田谷区の調査では「後遺症がある」との回答した人を男女別にみると、第1回も第2回も女性が多い結果となりました。

 □第1回「後遺症がある」=男性41.9%、女性54.3%=女性の方が12.4ポイント高い
 ■第2回「後遺症がある」=男性46.0%、女性62.2%=女性の方が16.2ポイント高い

 第2回の調査結果から、伊東准教授は「新型コロナに感染した女性の約3人に2人が、その後に何らかの後遺症を引きずることになる。これは、相当に深刻な事態と言える」と指摘しています。

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医師から「肺炎症状がない」と言われた人の、2人に1人は何らかの後遺症が出ている
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 コロナ患者を診断する臨床医は、基本的には患者が「肺炎」を発症しているか否か、その症状を診て「重症・中等症・軽症・無症状」に分けるそうです。例えば、コロナに感染して「お腹が痛い」と訴えた人は「肺炎」の症状ではないので「無症状」となるそうです。

 それが3ヶ月・半年・1年経った時に「どうですか?」(=「後遺症が出ていますか?」)と尋ねると、次のような結果になりました。

 ■新型コロナの症状別に「後遺症がある」と答えた人の割合

 ▼無症状=第1回27.5%・第2回31.8%
 軽 症=第1回61.3%・第2回67.2%
 中等症=第1回61.2%・第2回73.2%
 重 症=第1回73.7%・第2回75.0%

 この結果について伊東准教授は「肺炎症状が特になし(=無症状)の人でも、約3割の人が後遺症を発症している。この点は、マスコミ等のメディアの方々が「後遺症」を報じる時に、なかなか理解し難いと思うが、後遺症を調査する時には重要なポイントとなる」

 「つまり、新型コロナに感染して、医師から『肺炎の症状がないので、無症状だ』との診断を受けても、後遺症は出る、ということだ。言い換えれば『肺炎になったから、大変だ』ではない。『無症状』は、ここ(=感染後)から長期戦に入る」等と指摘しています。

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後遺症に「基礎疾患の有無」は関係ない。感染者の約半数は、後遺症を発症している
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 今回の調査で「後遺症がある」と回答した人を、基礎疾患の有無の別でみると、わずかな差ですが第1回も第2回も「基礎疾患あり」の方の割合が高くなり、特に「後遺症がある」人は、第1回よりも第2回の方が、割合が高くなりました。

 基礎疾患あり、で「後遺症がある」=第1回50.4%、第2回55.9%
 基礎疾患なし、で「後遺症がある」=第1回46.8%、第2回53.1%

 新型コロナのワクチンを接種する際に、高齢者は「優先接種」の対象になっていますが、同様に「基礎疾患がある」人も「優先接種」の対象に含まれています。これは高齢者と同様に「重症化するリスクが高い」ことが理由となっています。

 しかし、これを「後遺症の発症」という点から考えた時、伊東准教授は「基礎疾患があってもなくても、半分以上は後遺症は出ている。つまり『私には、基礎疾患があるから大変だ』ではない。基礎疾患があっても、なくても、後遺症は出る」と言及しています。

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コロナ後遺症で「出社できない・出社しても働けない」が続出し、甚大な経済損失が…
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 今回の調査では、コロナに感染すると若年層から社会の中核世代に、幅広く後遺症が発生していることがわかりました。特に、この「若年層から中核世代」では、増加の傾向が確認されています。

 ただし、伊東准教授は「調査する時期と場所により、後遺症はそれぞれ違ってくる。例えば、すでに世田谷区(人口約93万人)単体でも、全体の10%弱(8.4万人)で陽性が確認されている」

 「(区民の約10人に1人の割合ですでに感染者がいるので、その半数で後遺症が発症すると仮定すると)結果的に、区民の約20人に1人の割合で、後遺症リスクがある。これは、地域社会・経済に重大な影響を及ぼすことを意味する」

 「保健所が担当する(厚生労働省的な視点からの)調査だけではなく、経済産業省的な観点からも、わが国の被るコロナ被害の正確な調査と、適切な対策の立案・実施が必須だ」等と提言しています。その具体例として、次の2点を挙げています。

 【アブセンティーズム(=いない人)が、与える影響】

 「アブセンティーズム」とは「いない人」という意味で、新型コロナの後遺症により会社等に出社できない・遅刻や早退が多い……といった状態を指します。伊東准教授は「1人がアブセンティズムの状態に陥ると、所属する企業などの組織全体に影響してくる」

 「業務生産や業務効率の低下を引き起こし、結果的に企業などに損失をもたらす」と指摘しています。

 【プレゼンティーズム(=出社しているのに、うまく仕事ができない人)が与える影響】

 「プレゼンティーズム」とは「出社しているのに、うまく仕事ができない人」で、出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題が作用して、仕事のパフォーマンスが上がらない状態を指します。

 例えば「鼻づまりで、頭がボーッとして仕事に集中できない」「二日酔い、寝不足、頭痛、発熱を感じる」などは全て「プレゼンティーズム」に相当し、コロナ後遺症もこれに当てはまります。

 特に「プレゼンティーズム」は「多少の無理をすれば勤務できる状態ではあるが、ケアレスミスの増加をはじめ、作業効率や集中力の低下を引き起こし、1人・1日の計算ベースで、企業に損失をもたらす」ことになります。

 伊東准教授によれば「プレゼンティズムの損失額は『健康経営』の観点から算出が可能だ」とし、世界銀行・ユネスコ・ユニセフが共同試算した結果として「生涯賃金として2,000兆円が蒸発する」ことを紹介しています。

 「2,000兆円」とは「現在の日本の国家予算にして、20年分になり、例えば平成の30年間の、日本の全予算程度に匹敵する損失と概算される」とし、さらに「コロナの後遺症はもう、個人の責任の問題ではない。国家としての問題だ」と指摘しています。

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後遺症は予防できないのか…。現在の日本で可能なのは「ワクチン(追加)接種の徹底」
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 それでは、個人の健康を守るためにも、国家としての経済損失を招かないためにも、コロナによる後遺症は予防できないのか……。例えば米国では、新型コロナに感染してすぐに、抗体価を測定して「この人は抗体価が低い」と診断した人を特定しています。

 この人たちを後遺症の「ハイリスクグループ」として、他の感染者と分けて抗体ワクチンを打つと「後遺症の発症・長期化を予防できる可能性がある」等と発表しているそうです。しかし伊東准教授は「この手法は、現在の日本では現実的ではない」

 【「現状の日本で可能な対策は『系統立った、ワクチン(追加)接種の徹底』だ」】

 「現状の日本で可能な対策は『系統立った、ワクチン(追加)接種の徹底』だ。これが最も確実だし、実際に後遺症も確実に減ると考えられる」と指摘しています=画像・世田谷区HPより。黄色のラインマーカーは、弊紙による加工。理由として、第2回調査に回答した6,289人の「新型コロナワクチンの接種時期」を挙げています。

 ■第2回調査対象者(調査の対象期間=令和3年4月16日から9月30日まで)の、新型コロナワクチンの接種時期

 「陽性」と診断される前に2回接種を完了した人=5.8%
 ▼それ以外(1回だけ接種か、1回も接種していない)=87.6%
 無回答=6.6%

 ここから「第2回調査対象者の9割が、陽性が確認される前に2回接種を完了していなかった」ことを指摘しています。一方で「ただし、2回ワクチンを接種していても、約6%は後遺症を発症しているので、ワクチンは決して万能ではない」

 「しかし、後遺症を発症した人の10人中9人は、2回接種していなかったことは事実だ」等と述べています。

 【陽性診断前に2回接種した人は、未接種の人に比べ、症状の回復が早い】

 もう1点「病院内の管理された環境では、短期(28日以内=4週間・約1ヶ月)を目途に考えると、1回接種した人より2回接種した人の方が早く回復する、軽快する人が増えている、との報告もある」

 「つまり(コロナ感染時に、病院等で)キチンとケアをしていれば、症状の回復が早い」とも指摘しています。最後に、伊東准教授は「ただし、これらの調査結果は世田谷区の被害現状を示すデータで、他の県や市では、また違ってくる」

 「今年1月以降のオミクロン株による感染爆発で感染した人々の、後遺症の動向が見えてくるのはこれからで、リアルタイムでの事態把握が急務であり、これを行うべきである。後遺症の調査は、今回の世田谷区のように、1特別行政区の規模だけでは不十分だ」

 「そうではなく、地方自治体、また内閣府以下、国としての取り組みが必要な段階に達しつつある。後遺症被害は、すでに個人の疾病を保健所が観測する規模に収まらず、社会・経済損失にまで波及している」

 「コロナのアブセンティーズムや、コロナのプレゼンティーズムが(世田谷区のような一つの)地域から、グローバル社会にまで甚大な影響を及ぼしている。医療はもとより経済・経営・産業・労働など社会被害実態を適切に調査分析する必要がある」

 「ここから、有効な施策を導き出して鋭意実行、その影響の最小化に務めるべきである」等と提言しています。

◇─[おわりに]─────────

 今回の調査ではアンケートに回答した、検査で陽性となった世田谷区民から、コロナに対する様々な「生の声」も寄せられています。例えば「自己負担により、就業復帰前のPCR検査を強制され、陰性証明の取得も強制された」

 「感染により、給与の減少や退職に関すること等で悩んだ」「後遺症が続くことにより、うつ病を発症した」「会社から『自己都合』による退職を強要された」「自分が感染したことで職場の雰囲気が悪化し、バッシングもあり、自分への罪悪感を強く感じた」等。

 新型コロナは、特に感染力が強い変異株が流行してからは、個人の感染防止対策だけではもはや、感染を防ぎきれないレベルに達しています。また、今回の調査で「コロナに感染すると、約5割の確率で後遺症が確認される」点は、特に脅威に感じます。

 これらの課題の解決策に関する研究は、伊東准教授をはじめ、専門家の間でもまだ始まったばかりのようです。本紙としては、本来は「高齢者の後遺症」について、もっと詳しい内容を知りたかったのですが、それは今後の研究成果を待ちたいと思います。

 このところ、新たに変異株が登場するたびに「以前よりも、感染力が強い」と報じられており、これが正しいとすると「後遺症も発症しやすくなる」ことが懸念されます。本紙では今後も、専門家による様々な「後遺症」の研究成果を、追っていきたいと思います。

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