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釣りの影響でバスの巣が移動する?

科学論文を釣り情報へ還元する第24回目の投稿です。

今回のテーマ:釣りの影響でバスの巣が移動する?

今回ご紹介するのはこちらの論文です。
Twardek, W. M., Shultz, A. D., Claussen, J. E., Cooke, S. J., Stein, J. A., Koppelman, J. B., ... & Philipp, D. P. (2017). Potential consequences of angling on nest-site fidelity in largemouth bass. Environmental Biology of Fishes, 100(5), 611-616.

以前も何度か投稿した、”釣りがバスの繁殖に与える影響”シリーズの第3弾です。

この論文を一言でまとめると、

巣を守っているオスのラージマウスバス(オオクチバス)を複数回釣り上げると、90%以上が巣を放棄してしまうだけでなく、翌年は(周辺の環境が良い場所であっても)同じような場所に巣を作る確率は30%以下になる、ということでした。

巣を守っているオスのバスは、外敵を追い払い、幼魚が独立するまでその巣を守り続けます。その期間は2カ月以上に及ぶこともよくあり、その時期の攻撃性からとても釣られやすいという話は以前の記事で投稿しました。

また、巣を守るオスのバスが釣られると、その間にハゼのようなバスの卵を狙う魚類に巣を荒らされることもご紹介しました。


今回の研究では、巣を守っているオスを何度か釣り上げ、キャッチ&リリース後の行動を追跡することで、①巣を最後まで守りきったか?②翌年はどんな場所に巣を作ったか?を調べています。

今回の研究結果をイラストにまとめてみました。

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その結果、1回だけ釣りあげたバスは、また巣へと戻ってほぼ全個体(97%)が子が巣立つまで最後まで巣を守りきりましたが、
2回以上釣りあげたバスは、ほぼすべて(94%)が巣を放棄し、どこかへ行ってしまったのです。

つまり、数回釣りあげられたことで、巣の防衛よりも保身せざる負えなくなり、繁殖機会を失うことになったことを意味します。

さらに、釣りあげた際にタグをつけておき、翌年同じような場所で再度巣を作るかどうか試験したところ、1回だけ釣りあげたバスは87%が、昨年と同じような場所(昨年の巣から10 m以内)に巣を作りました。

しかし、2回以上釣り上げられたバスの60%以上が、昨年の巣からかなり離れた場所(多くは50 m以上離れた場所)へ巣を作っていました

繁殖期のブラックバスの仲間では、周辺環境が良ければ何度も繰り返し同じような場所を巣とすることが知られています。
(1回巣を作ってそこで成功すれば、翌年も同じように場所に巣を作るのは、なんとなく理解できますよね)

つまり、どんなに巣作りに環境が良い場所であっても生命の危機を感じた場所では、再度巣を作らなくなるということでしょうか。

こういった行動は鳥類でもよく研究されていて、ツバメの仲間でも似たような行動が確認されているそうです。

それにしても、ほとんどの場合、巣を作る場所は毎年同じ場所になるわけですから、釣りの観点からすると巣になりやすい場所さえ発見できれば釣果は上がりそうですよね。

当然、バスの繁殖機会を壊すことになるので、外来種と言えど、なんとも言えないことですが・・・・・。
それではまた次回お会いしましょう。

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