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【特集】2022-2023 出版業界 総括と展望|ジャンル別 出版概況、トピックス②コミック・雑誌/開発品(日販 仕入部/文具雑貨商品本部)

■コミック
■雑誌
■開発品(出版社系開発品、文具、雑貨、PB商品)
※文中の累計部数等は2022年12月5日現在のデータです。

2022年に一番売れた本は『80歳の壁』!年間ベストセラーを発表

コミック

大幅な前年割れの中、新作が台頭

2022年のコミック店頭売上は、4月~10月累計で堅調に推移した前年を10%以上、下回る厳しい結果となった。おもな要因として、2019年のアニメ化から続いた「鬼滅の刃」(吾峠呼世晴著/集英社)ブームの影響が収束したこと、「呪術廻戦」(芥見下々著/集英社)、「東京卍リベンジャーズ」(和久井健著/講談社)のような突出したヒット作が少なかったことなどが挙げられる。

店頭売上は前年割れだったものの、「呪術廻戦」「東京卍リベンジャーズ」をはじめ知名度のある大型タイトルは引き続き安定した売上を維持した。メディア化による影響も大きく、1月ドラマ化「ミステリと言う勿れ」(田村由美著/小学館)、4月アニメ化「SPY×FAMILY」(遠藤達哉著/集英社)も、放送直後からその勢いは強固なものとなった。

SNSにおける反響が店頭売上や売場の活性化につながるケースも多く、「HUNTER×HUNTER」(冨樫義博著/集英社)はおよそ4年ぶりの新巻である37巻発売と、「週刊少年ジャンプ」(集英社)での連載再開が告知されると、発売前から関連情報が軒並み話題となる大きな盛り上がりを見せた。

同じく「タコピーの原罪」(タイザン5著/集英社)もSNSを中心に話題を集めた。漫画アプリ「少年ジャンプ+」での最新話公開のたびに考察や感想が展開され大ブレイクを果たし、上下巻完結の短い作品ながら、2022年のコミック売上を牽引する代表作となった。

そのほか、「東京卍リベンジャーズ」が2022年11月発売の「週刊少年マガジン」(講談社)51号にて最終回を迎えた。1月には、最終31巻を含む関連書籍7冊が同時発売となる。

大型タイトルの完結が続く一方、2022年10月にアニメ化された「チェンソーマン」(藤本タツキ著/集英社)や12月に最新巻が発売となった「女の園の星」(和山やま著/祥伝社)など、次世代の注目タイトルの台頭もあり、今後のさらなる成長が期待される。

〈コミック売上創出プロジェクト〉始動

日販では2020年9月より独自企画として、ヒット作創出を目的とした〈next move〉〈next move+(プラス)〉を実施している。さらに、2022年からはコミック売上創出プロジェクトと銘打ち、銘柄を絞った中長期的な売上創出戦略や出版社横断フェア、異業種やご当地とのコラボといった実験的な企画を推進している。

8月実施の「鬼の花嫁」(富樫じゅん作画、クレハ原作/スターツ出版)1巻発売ノベルティ販促企画では、参加書店様1275軒へプラスチック製の日販オリジナルしおりをご提供し、文庫や電子コミックですでに作品を知っているファンへの店頭誘致を推進した。

続く11月実施の「ファンタジーロマンスフェア」では、出版社横断型企画として、恋愛チャートやオリジナルポストカードなどの販促物を作成。企画参加店における日別売上平均の伸長率が、非参加店と比較して+80ptの好事例となり、売上拡大に繋げた。

今後もSNSを効果的に活用しながら、コミックそのものに留まらず「推し活」などの新たな消費行動を後押しできる売場づくりを目指し、店頭活性化に繋げていく。

雑誌

分冊百科が売上を牽引。定期誌は厳しい実績が続くも表紙、付録効果で完売する号も

前年から引き続き店頭売上は減少傾向が続き、雑誌合計の店頭売上前年比(2022年1月~11月)は、97.3%と厳しい実績となっている。一方で刊行形態別に見ると、週旬刊誌の売上前年比は、同106.0%と好調。おもな要因としては、2022年に創刊された分冊百科が売上を牽引。特に高価格のシリーズが目立つ一年となっている。

また、号によっては完売となる雑誌も目立ち、「ONE PIECEカードゲーム」の付録が付いた7月発売「Vジャンプ」や、8月発売と11月発売の「最強ジャンプ」(ともに集英社)はいずれも完売。カードゲームはますます人気となっており、今後の動きにも期待だ。

そのほか、「TVガイド」(東京ニュース通信社)は、2022年8月に創刊60周年を迎え、発売された創刊60周年記念特大号もジャニーズ12グループのスペシャル表紙&ピンナップといった内容で非常に好調な売上となった。

女性ファッション誌は本誌が低調、一方で表紙違い版が増加し好調な実績
女性ファッション誌については、店頭売上前年比同75.6%と厳しい状況が続く中、本誌と増刊で表紙を刷り分け、片方をアイドル表紙などの表紙違い版とするケースが2022年も多く見られた。特に「ViVi」(講談社)、「non-no」「BAILA」(ともに集英社)は表紙違い版の発売頻度が高く、売上好調な号が出ている。

ViVi」については9月発売号で「Snow Man」表紙違い版を発売。ニューアルバムの発売と併せて大きな話題となり、完売となった。10月発売号も平野紫耀(King&Prince)の表紙違い版で90%以上の売上率となった。

前年に続き表紙違い版の発売が増え、読者に定着したことが2022年の大きな特徴である。

高年齢層がメインターゲットのテーマが好調

ここ一年の特徴として、メインのターゲット層を高めに設定した内容のムックや特集号が好調。ムックでは、「60歳すぎたらやめて幸せになれる100のこと」(宝島社)が、2021年10月の発売後から好調な売行きをキープし、すでに日販仕入数で15万部を超える大ヒットとなっている。

2022年発売の「60歳からはじめて人生が楽しくなる100のこと」「70歳からの生き方が寿命を決める! 健康長寿の新常識」(ともに宝島社)も非常に好調な売行きだ。特集では、9月22日発売の「PRESIDENT」(プレジデント社)の「信じてはいけない! 健康診断、医者、クスリ」特集号が、書店様売上率90%超と年間を通してもっとも高い売上となった(※2022年12月現在)。

購買層の高齢化とともに、ターゲット層へわかりやすくリーチするためのタイトルや特集が目立ち、今後もこの流れは続く見通しだ。

開発品/出版社系開発品

パックトイなどブラインド系商品の隆盛が続く

デアゴスティーニ・ジャパンのパックトイシリーズが2022年も好調だった。
人気ゲームキャラクターのフィギュアキーチェーンをパックした「Among us(アモング アス)」シリーズが新たに発売となり、第1弾(4月発売)はほぼ完売、第2弾(10月発売)も好調な売行きとなっている。

「ストレッチーズ」シリーズ第2弾「ストレッチーズ ズータント」(8月発売)も、“のび~る”素材のユニークな合体生物のフィギュアで、自由自在に変形可能な点が児童に大人気となった。

また、これまでの人気シリーズである「&Co.(アンド・コ)」2点、「Magiki(マジキ)」1点の計6点の新刊が発売となり、2022年も開発品売上ランキングの上位を独占する結果となった。

そのほか、宝島社の「MILKFED.」「ANNA SUI」「MARY QUANT」など、定番人気ブランドのグッズ付き新刊も売上上位となった。

全体として、パックトイシリーズ同様、封を開けるまで中身がわからないブラインド系商品の隆盛は継続すると思われる一方、これに続く新たなトレンドの誕生が待たれる。

文具

店頭は回復の兆し! 「推し活」グッズの関心高まる

2022年の文具店頭売上は、前年比91.3%(1~10月累計)と低迷したものの、11月には、筆記振動を制御した「ブレン」(ゼブラ)や、グッドデザイン賞を受賞した「ユニボール ワン」(三菱鉛筆)など、筆記定番文具の限定色が売上好調となり、回復傾向となっている。

筆記具の中でも特に話題となったのが写真の「フリクションボールノックゾーン」(パイロット)。ユーザーの要望に応え、一本当たりのインキ量が70%増加、これまでより濃く、長く書けるようになった。ほかにも、長時間書き続けられる金属鉛筆「メタシル」(サンスター文具)が注目を集めた。

筆記具以外では、紙の色や罫線に合わせて使える「キャンパス ノートのための修正テープ」(コクヨ)の売上が好調となり、12月には詰め替えタイプが発売されるなど、今後も要注目の商品となっている。

結婚式やイベントが再開されたことで、金封レターなどのコミュニケーション商品は前年比100%超えとなった。

2023年は、アイドルやキャラクターなど、お気に入りの対象を応援する活動である「推し活」グッズに関心が高まると予測される。1月には、缶バッジやうちわを収納するファイルなど、推し活に特化したシリーズ「myfa(ミファ)」(リヒトラブ)が発売になるなど、今後も目の離せないジャンルだ。

雑貨

キャラクターを活用した集客を実施、BOOKとのコラボ商品も

3月に、ピーターラビット絵本出版120周年を記念した日販オリジナルフェアを全国の書店様で開催。店内を回遊するイベントのほか、限定ノベルティの配布や抽選のプレゼントキャンペーンを実施したことで、多くのお客様が書店様を訪れた。

7月には、12月開催の「すみっコぐらし検定2022」に合わせて、「すみっコぐらしブックフェア」を開催。日販限定グッズを約100店舗で展開したほか、オリジナルメニューが食べられる「すみっコぐらしブックカフェ」を全国14店舗にて実施した。緊急事態宣言の出ていない夏休みの開催だったこともあり、家族連れの集客に繋がったほか、お客様がコラボメニューをSNSに投稿することで話題となり、店全体の集客や売上にも貢献した。

また、書店様ならではのBOOKコンテンツとのコラボ商品も各種発売された。

コミック「ONE PIECE」の連載25周年を記念してリリースされた「ONE PIECEカードゲーム」(バンダイカード事業部)は、発売日には開店前にお客様が並ぶなど、多くの書店様で完売が相次いだ。

日販限定で発売した、『学研の図鑑LIVE』(Gakken)とコラボした「恐竜バスボールブックレット」「危険生物バスボールブックレット」(ノルコーポレーション)は、既存の什器を変更して書店様で展開しやすくなったことで、取扱店舗が拡大した。

PB商品

ONE ECO PROJECT「本袋」の展開とファンのニーズに応えるPB商品開発

日販のSDGsの取り組みとして発足した「ONE ECO PROJECT」は、出版業界ならではのコンテンツの魅力を通して、楽しみながらエコに参画していただくことを目的とした取り組みだ。

その第1弾プロダクトとして「本袋」を開発。賛同社様20社の協力を得て、75のコミックや児童書などの作品とコラボしたエコバッグの販売を4月から開始した。2023年5月まで、毎月5~6柄を発売する。

これまでに賛同いただいた書店様349店舗にて展開いただいており、累計売上枚数は8万枚と好調。売上の一部が海の環境NPO法人OWS様に寄付されることも、お客様に支持をいただいている。

今後も「本袋」以外の「ONE ECO PROJECT」商品の開発を進めていく。

2019年に発売した「Fonte」は、初心者が手に取りやすい価格帯と“カスタマイズ”できる万年筆として支持されている。

さらに、カスタマイズをもっと楽しんでいただくために、2022年9月には「ローラーボールペン」「ガラスペン」「筆ペン」、新色キャップを新たに発売。特に「ガラスペン」は8月に開催した文具女子博での先行販売で話題となり、発売後2か月で累計1万本を出荷。SNSではガラスペン本体の空洞部分にビーズなどを入れて自分だけのアレンジを楽しむ様子が投稿され、人気に拍車をかけている。

2023年2月には、Fonteインク瓶の発売も予定しており、今後もお客様の声を活かした商品開発を進めていく。

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