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おそるべし自然治癒力。

数日前に引っかいた、赤ちゃんの鼻の傷がふさがってきている。

見ていて不思議に思うのだけれど、赤ちゃんの引っかき傷は、傷の下にただ新しい皮膚ができるだけでなく、傷の左右の皮膚が近づいて文字通り「ふさがる」。どこがどう動いたのかは分からないけれど、傷の線がだんだん細くなっていく。

そして、赤ちゃんの傷の治りは早い。とんでもなく早い。
「あちゃー」と思った傷もすぐにかさぶたになり、それがとれたらもうどこに傷をつけたか分からないくらいになる。それを見ると、毎回心底ホッとする。無罪放免という感じがするのだ。

赤ちゃんがうまれて最初に手渡されたとき、僕は「預けられた」と感じた。「ほわほわでふわふわの”新品”の赤ちゃんを、あなたに託します。」そう誰かに言われた気がして、大事に大事に育てようと思った。

爪で顔を引っかかれると、その”新品”に傷がついたような痛みをおぼえる。
思えば僕は本にせよCDにせよ、傷ひとつない「新品」の状態を好む子どもだった。いまでも物を買うときには、傷がついていないか、角が折れていないかなど、細かいところまで何度も確認してしまう。

買ってきたものは、ブックカバーやビニール袋に入れて厳重に保管。友達から「貸して」と言われても絶対貸さないし、自分でも読んだり聴いたりするのは一、二度だけ。そんな小学生だった。使った跡がついて「中古」になるのはとても嫌だった。

赤ちゃんは商品ではないし、人間は生きているかぎり、傷はつきもの。
自分についてだって、体にも心にもずいぶんたくさんの傷をつけて、そのままにしている。

なのに、赤ちゃんだけは”新品”でいてほしいと思ってしまう。神経質すぎると思うのだけれど、自然治癒力はその願いに応えてくれている。

傷がふさがったきれいな肌を見て「よし、今度は傷ができる前に爪をちゃんと切ろう」と毎回誓いを立てる。でも、なんやかや用事があったりして、結局、後手にまわり、胸を痛めた状態で”世界一むずかしいアクションゲーム”をする羽目になるんだよなあ。

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