銀河鉄道

闇の居場所。

汽車は闇をぬけて 光の海へ
夢がちらばる 無限の宇宙さ
星のかけ橋 渡ってゆこう
(佐々木功『銀河鉄道999』より)

漫画やアニメの表現が重たく、グロテスクになったと感じるようになったのは、僕が歳を重ねたせいだろうか。

以前はもっと『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』『ドラえもん』のようなものが多かった気がする。藤子不二雄ワールドといって『パーマン』や『忍者ハットリくん』『オバケのQ太郎』などが流れる番組もあったし、ハウスの世界名作劇場という枠では『小公子』『小公女』『ポリアンナ物語』といった内容が放映されていた。

それがいまは『東京喰種』や『進撃の巨人』のようなものが流行り、児童館にやってくる中高生が話す番組には「よくもまあ、そんなことを放映するな」と思えるものも多い。『ポプテピピック』とかね。

最近好んで観ている「M1グランプリ」でも審査員が「漫才ってこんなに闇が多かったでしたっけ」とコメントする場面があった。スーパーマラドーナにしても、和牛にしても、サイコだったり意地悪だったりするところを演じることが多い。

昨日、ゆずの記事で「闇が溜まる」と書いた。それはなにもゆずだけに起きていることではないのかもしれない。

例えば、ベッキーの騒動にも、そういうところがあった。好感度の高い人気者が、ある日そのイメージを破壊するような行動をとってしまう。

「ゲス」の人に近づくことで破滅につながった、というところも示唆に富んでいると思う。そこで解放されるなにかがたぶんあったのだろう。

好感度を高く保つため、あるいは、元気に暮らしていくため、時には無理して笑ったり、幸せだと言い聞かせたり、営業用の笑顔を見せたりする必要はあるのだと思う。僕はこんな記事を書いてはいるけれど、その必死の努力を批判したいわけではない。

でも、それでもなお、溜まってしまった闇は、なかったことにはならない。
そこから目を逸らしつづける険しさは、まわりが察知する。

すべての人がそうとは限らないが、そのことが功を奏することもある。ベッキーの場合は、タレント生命が危機に瀕した後、復帰して明らかにきれいになり、表情に人間味が出て、生命力が戻ったように思える。

最近「全体性」という言葉を目にすることが増えた。
専門的には別の意味があるのかもしれないが、僕は「いいことも悪いこともあると認めること、そして愛すること」と解釈している。

寂しさ、つらさ、怒り、ねたみ、およそ人間が持ちうる重く、暗く、汚いとされているもの。それが自分の中にあると認めること。あってもいいと許すこと。そして、その声を聞き、愛してあげられること。

すると野獣が王子になるように、重く、暗く、汚いとされていたなにかが変容する。

ル・グウィンの『ゲド戦記』の第一巻「影との戦い」で、主人公ゲドがそうしたように。あるいは「銀河鉄道999」が闇をぬけて、光の海に包まれていくように。

そんなことを考えていると、ここでも何度も引用してきた『テーマパーク』という記事で村瀬彩さんが描写した、以前の『魂うた®︎」の様子が思い出される。

参加者が最初に歌った「楽しいってこんな感じだよね」という歌は、はりぼてのように感じられたのに、嫌いな曲を歌い、「苦しいくらいの、それは吐き出されたなにか」が表現されたことでこう変わる。

そのうたは、
はじめとぜんぜん違って
作為のない
彼女から自然と流れ出る
穏やかなやさしさが
表現されるものへと変化していた。

あざやかで驚くべき変化だった。

闇をぬけることで、光はその純度を増す。
抑圧を解かれ、存在を認められた闇は、光の一部となる。

「輝き」という言葉は、もともと「影焼き」といって、木の影からきらきらと太陽の光が指している様子を表したのだそうだ。

影があるから、光がわかる。

苦しいのにがんばって笑っている人。
人前に立つならばポジティブでなければと気張っている人。
自分に幸せだと言い聞かせずにはいられない人。

そういう人の険しさに触れるとき、僕はいつもこのときの『魂うた®︎』のイメージがよぎる。「闇を吐き出してしまえばいいのに」と思う。

そんな思いが集まってできたのが、1月17日、新浦安で開催する「夢と魔法の裏の国」だ。

闇に触れること、表現することは怖いことかもしれない。
それまで見たくない。見てはいけないと思っていたわけだから。

でも、歌の中でなら、それができる。
しかも、それをいいと言ってくれる聞き手がいる。

闇をぬけて、光の海へ。

新年の新浦安で、まさに夢と魔法の王国のお隣で、そんな体験を分かち合えたらとてもうれしい。

そこにあるのはたぶん恐怖ではなく、安堵だと思うから。

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