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あの子はスター。

最近、ブランドのお店に入ることが多い。ただでさえ初対面でぎこちないのに値段が高いこともあって、以前は気後れしていたのだけれど、赤ちゃんがいると入りやすいことに気づいた。

今日も店員さんと赤ちゃんの話題で盛り上がってなごんだ。
「何か月ですか」「7か月です」「うちはもう3歳なんですよー」
こうなると、そこはもはやきらびやかなブランドショップではなく、近所の公民館のようなノリになる。ハイハイの話をしたり離乳食の話をしたり、すっかり緊張感がほどけて、いい時間になることが多いし、以前は値札を見ただけで引いていた商品も普通に見られるようになる。向こうにとっても赤ちゃんがいることで、40代男性の僕と話すハードルはうんと下がるだろう。

それに赤ちゃんと目が合ったりすると、店員さんが本当に喜んでくれる。
「うわーかわいい!」「こんにちは!」「いないいないばあ!」
そうして関わってくれる店員さんたちの、営業用ではないスマイルを見ると「いいことをしたなあ」という気分になる。大人ばかり接客している中に赤ちゃんと過ごす時間が入ると「人間に戻れる」感じがするんじゃないかと思うから。そんなわけで、赤ちゃんといるブランドショップは大抵、親しい空気でいっぱいになる。

ついでにいうと、抱っこひもをつけていると多少チープな格好をしていても気にならない。よれたパーカーでも「赤ちゃんにひもを食べさせるためですよ」という言い訳がつくというか(そんなことを聞かれることはないけれど)。

今日の赤ちゃんは、そうして大人のブランドショップ周りに付き合い、おやつのまんじゅうの包装紙を気に入って舐めつづけ、知らないうちにルイ・ヴィトンのショップにポイして帰ってきた(すいませんでした)。

家に帰ってからは、僕の右足に強烈な「大」の横モレをお見舞いし、バスタオルを踏んだ左足に「小」の湿り気を感じさせ、飲んだミルクを奥さんの上着に吐いた。一番の大物は間違いなくうちの赤ちゃんで、彼にはブランドもなにも通用しない。

それだけ無茶苦茶しても、ただいるだけでまわりを幸せにする。
本物のスターとは、そういう存在かもしれない。

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