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2023年に観た新作アニメ映画18本をランク付けしてみる

 皆様、あけましておめでとうございます。

 新年いかがお過ごしでしょうか…と言いたいところですが、元旦から少し辛い事が起こってしまいました。被害に遭われた皆様が一日でも早く日常に戻れるよう、心からお祈り申し上げます。

 僕も被災地へ何かできる事はないかと思い、わずかながら寄付をさせていただきました。逆に言えば、今僕にできる事はそれしかない。あとは世の中全体が暗くならないように、日常を生きるのみです。

 ニュースなどを観て暗い気持ちになられた方は、どうか別の楽しい事を考えてください。元々今日書こうと思ってたのですが今回この記事を書こうと思ったのも、少しでもそのお手伝いをさせていただければと思った次第であります。

 さて、本題に入らせていただきますが、アニメ映画は2023年も話題作がいくつも生まれましたね。特に4月に公開された『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』は興行収入138億円を記録する大ヒット!これで2019年から5年連続でアニメ映画から100億超えの作品が出た事に。まさに今はアニメバブル絶頂期ですわ。


名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)

 僕も2023年、新作アニメ映画を18本観させていただきまして。今回は観た中で面白かった作品を10点満点評価で10位から発表させていただこうと思います。

 点数の基準としましては、

9.5以上→絶対に観てほしい
過去10年の9.5以上作品
・この世界の片隅に(2016)10点
・天気の子(2019)9.8点
・アイの歌声を聴かせて(2021)9.8点
・聲の形(2016)9.5点
・THE FIRST SLAM DUNK(2022)9.5点

9.0〜9.5点→面白い。オススメ作品
8点台→面白いが主張がない。主張はあるがストーリー性があまりない
7点台→好き嫌いが分かれるが個人的には好きじゃない。単純にあまり面白くない
6点台→面白くない
5点台→映画の体を成してない

 こんな感じですかね。ちなみに去年は6点台が3作品ぐらいあって、正直劇場で観るのが苦痛でした(笑)

詳しくは↓で書いてますのでご覧ください。

 では、早速10位から。

第10位

駒田蒸留所へようこそ

11月10日公開
監督 吉原正行(代表作:有頂天家族など)
興行収入 1.3億
評価 8.0点

 P.A.WORKSさん制作のオリジナルアニメですね。画像にもありますがP.A.WORKSさんは『花咲くいろは』から始まり、様々なお仕事系アニメを手掛けていらっしゃいます。この会社の作品だったら観たくなるような、そんな信頼できる制作会社の1つでありますね。

 ストーリーは予告編を観た方が手っ取り早いでしょう。

 この作品、まずは背景がとても良かったですね。最近流行りのリアルより綺麗に描くような背景とは一線を画すような、“絵”である事を強調したような背景。しかしそれがキャラクターと妙にマッチしていて、さすが原画畑から来た監督さんだなあと。

 ストーリーの方も伏線がちゃんと綺麗に決まっているところもあり、キャラクターの成長、家族の再生なんかも描いていてなんというかとても追いかけやすかったなという感想を抱きましたね。

 ただいかんせん展開が地味なのと、なんだか全編通してウイスキー会社の長い宣伝CMを見せられているかのような出来で、ドラマとしての完成度は高かったんですがそれだけで終わってしまった感があるのは残念でした。

 あまり語りたくはならないというか、それなら1クール1本で観たかったかな。ただそれだとキャラクターの地味さがネックになってしまうかもしれませんが。

 続いての作品は同率で10位にランクインしました。

10位

青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない
青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない

 

6月23日、12月1日公開
監督 増井壮一(アキバ冥途戦争、サクラクエスト、棺姫のチャイカ他)
興行収入 3.7億+2.7億
評価 8.0点

 2018年に放送されたTVシリーズの映画化作品ですね。年内に前編と後編が上映されたのでまとめました。

 原作が『さくら荘のペットな彼女』を書いた鴨志田一先生で、青春ブタ野郎シリーズは前作を上回る人気作となっております。

 ジャンルがライトノベルなので、もちろん大勢の美少女が登場します(笑)でまあやはりお約束として主人公の周りはなんとなくハーレム的な環境になるのですが。

 内容はなんだか、森絵都先生が書く児童文学みたいなんですよね(笑)

 皆様ライトノベルといえばなんとなく異能力モノであったり、または最近流行りのファンタジー。さっきも書いたようなハーレムモノだったりを思い浮かべると思うのですが、この作品はとにかく硬派です。

 それでいてライトノベルらしい、少しファンタジー的な要素もあるので、まあ本当に上手い作品で。その作品を上手にアニメ化してるという点では素晴らしい映画だなと思いますね。

 ただどうしても地味にはなってしまうので、映画映えはあまりしない作品。だって前編の話って妹が不登校から復帰して高校行く話ですよ(笑)で後編は家族の再生。

 面白いですが、そこまで突き抜けて面白くなるのは難しいかなというところで今回はこの点数にさせていただきました。

9位

北極百貨店のコンシェルジュさん

10月20日公開
監督 板津匡覧(ボールルームへようこそ)
興行収入 不明
評価 8.0〜8.5点

 漫画原作のアニメ化ですね。僕は不勉強なもんで知らなかったんですが、原作は結構ファンがいる作品みたいで。

 観てると確かに面白いと言うか、敢えて映画的な作りをしてなかったのが良かったなと思いますね。短編的な話を何個か繋ぎ合わせてその中で主人公が成長していく様を描くみたいな、70分という結構短い作品だったんですが、キャラクターの多さの割に混乱せず観れたというか。キャラクターの大半が人外だってのもありそうですが。

 ただ映画的な作りをしなかった分、あまり映画らしい作品ではなかったなあと。小泉構文みたくなってしまいましたが(笑)ただ映画において“映画らしい”というのもかなり大事な要素だと思っているので、まあこれぐらいの点数かなと。

 続いて8位

8位

屋根裏のラジャー

公開日 12月15日(現在公開中)
監督 百瀬義行(二ノ国)
興行収入 1.3億(1月3日時点)
評価 8.0〜8.5

 長年スタジオジブリを支えていた百瀬監督の作品ですね。

 まあ一言で言うと、出来の良い子供映画かなと。

 ファンタジーがあって、冒険もあって、わかりやすいテーマもある。泣けるところもありましたし、冬休みに子供が観に行く映画としてはかなり良かったんじゃないかと。

 原画出身の監督らしく絵もかなり凝っていましたし、とても優しくわかりやすい作品として作られていたなあという印象を持ちましたね。

 ただ、本当にそれだけだったんで正直印象には残っておりません。語れる作品でもないですし、ネームバリューもないので子供達も『スパイファミリー』とかに流れてしまうんでしょうし、流れたからこの興行収入なんでしょうし。結構残酷だなと感じています。

7位

響け!ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜

公開日 8月4日
監督 石原立也(涼宮ハルヒの憂鬱、AIR、kanon、CLANNADなど)
興行収入 4.2億
評価 8.0〜8.5

 京都アニメーションのベテラン監督、石原監督によるユーフォニアムシリーズの最新作ですね。

 ユーフォニアムシリーズは今年からNHKで再放送されるようで、まあ時代も変わりましたよね(笑)確かにエロもないですし、純粋な部活モノとして見れる作品なので、NHK向きだと言われるとその通りな気もします。

 TVシリーズの続き的な作品でしたし、時間も60分と短いのでTVアニメを大きな画面で観てるだけという感は否めませんでしたが、それでも京アニらしい細かな表情の動きとか演出とかが楽しめて、個人的には満足でした。

 ここまでに紹介させていただいた作品は、「面白いけど映画ではない」「ハイドラマ的であるが突き抜けてない」「良い作品だが印象には残らない」みたいな作品だったんですが、次に紹介させていただく作品からは語りたい部分がある映画が登場します。

6位

SAND LAND

公開日 8月18日
監督 横嶋俊久
興行収入 5.4億
評価 8.5

 

ジジイか人外しか出てこないとんでもない映画です(笑)

 監督さんはゲーム畑でずっとやってこられた43歳の若手でありまして、多分今作がアニメ初監督作品なのかな?

 原作は漫画界のレジェンド鳥山明先生…でありますが、この作品は連載して速攻打ち切られてます(笑)本編を見たらわかりますが、マジでジジイしか出てこない(笑)

『ドラゴンボール』がなぜあれだけ大ヒットしたのか、『Dr.スランプ』がなぜ受けたのかは様々な要因があると思うのですが、キャラクターのキャッチーさというのも絶対にあったと思うんですよ。

 この作品にもベルゼブブというキャッチーっぽいキャラは出てくるんですが、いかんせん悪魔(笑)しかも主人公かと思いきや、実質的な主人公はジジイという…いかに売れない要素を集めて売れるか実験してたのかと疑いたくなるほど売れる要素がないんですよ(笑)

 でも、この映画凄いです。

 ストーリー部分はまあ正直普通というか、退屈なんですけど、アクションシーンがとにかく凄い!特に鳥山メカそのものの丸い戦車を使ったアクションシーンなんかは、ほぼほぼガルパンですよ(笑)

『THE FIRST SLAM DUNK』でもそうでしたが、セリフではなく動きで作品を表現している。アニメという特性を凄く活かせていて、映画にする意義というのを物凄く感じる。

 テーマもメッセージ性もまったくないんですが、とても“映画”を感じて興奮しましたね。

 まあでもよく5億も売れましたね(笑)鳥山明原作でなければ絶対ここまでは売り上げてないと思います。ただ鳥山明原作でなければ要らん女子キャラを入れてつまらなくなっていたでしょうし、これで良かったのかもしれませんな。

 次の作品は、『SAND LAND』とは真逆の意味で語れる映画です。

5位

君たちはどう生きるか

公開日 7月14日
監督 宮崎駿(説明不要)
興行収入 86.3億
評価 8.5

 アニメ映画界の重鎮・宮崎駿監督待望の最新作です。

 予告なし、宣伝なしで作られた話題作でありますが、観た後の感想はみんな「なんだこりゃ」でしたよね(笑)

 熱が出た時に見る夢かのような意味不明なシーンの数々。何かを意味しているかのようなキャラクター達。意味深なセリフ。それらすべてが宮崎駿っぽくなく、正直1回目は観ながら混乱してました。

 ただ例えば背景。『駒田蒸留所へようこそ』と同じく、これまた新海誠的な最近の流行りに対抗するような“絵”を意識した背景。冒頭1分間のシーンの作画。本当に凄いなあと。

 そして何と言っても、考察し甲斐のある要素が多かった!個人的にはこれは宮崎駿から僕達への宿題という風に捉えたのですが、ドキュメンタリーにもあったように宮崎監督が恩師の高畑勲さんと決別する意味合いがあったと同時に、僕ら下の世代へ託す意味合いもあったのではないかと、そう思ってるんです。

 例えば大伯父なんかは、高畑勲であると同時に宮崎駿自身でもあったと思います。『君たちはどう生きるか』の特徴として、1人のキャラクターに何人かの姿を重ねているというのがあったと思うんですね。

 真人は宮崎駿であると同時に僕らでもありますし、そうであるとするなら最後に真人が石を持って帰るシーンや、ヒミが最後別れる時に真人に死ぬのが怖くないかと訪ねられ「怖くない。だって真人を生めるんだから」と答えたシーンも、宮崎駿がいた。

 この作品ほど宮崎駿が映画の中にいた作品もなく、そういう意味では物凄いものを見たなという気持ちにさせられました。

 まあただ何せストーリーがないも同然なので(笑)評価としてはこれ以上はあげられません。

4位

鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

公開日 11月17日
監督 古賀豪(ドキドキ!プリキュアチーフディレクター)
興行収入 13.8億
評価 8.5〜9.0

 今腐女子の方にまあまあ絵を描かれてる作品ですね(笑)

 日本人なら誰もが知ってる『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズのエピソード0みたいな作品でして、公開から徐々に口コミで評判が広がっていった印象です。

 監督は東映アニメーションで演出からディレクターまでされている古賀豪さんという方でして、だからかなのか話の作り方が上手かったなと思いました。

 エピソード0ですから、確か原作にはないオリジナルストーリーなはずですがホラーモノ、スプラッターモノとして完成されていて。村社会の緊張感でしたり人間関係の脆さというのも凄く表現できていて、最後の方までは本当に今年のベスト3には確実に入るだろうと、それくらいは魅入っていましたね。

 鬼太郎って、もう水木しげる先生の描いた漫画版というよりかはアニメの方で認識してる人がほとんどだと思うんですが。今回は昔ノイタミナで放送していた『墓場鬼太郎』に近い雰囲気だったかなと。

 ただ最後の方でちょっとTVアニメに寄っちゃったかなというのが個人的には残念でしたね。まあ落とし方としてはあれが一番いいんでしょうが、変な友情なんか要らねえよと(笑)まあでもあれがあったから腐女子の方々が食いついたんでしょうし、そこはなんとも言えんところです。

 ベスト3に入る前に、11位以下とランキングに入れなかった作品を発表いたします。

12位 アリスとテレスのまぼろし工場7.5〜8.0←個人的には好きじゃなかったが、これを大好きになる人はいるだろうという作品だった。めちゃくちゃ語れる作品ではある
13位 金の国 水の国7.5←漫画は面白いかもしれないが、映画は平凡だった
14位 らくだい魔女 フウカと闇の魔女7.5←この作品は完全に幼児向けで、観た僕が悪かった(笑)子供向けとしては悪くないと思います

ランキングに入れなかった作品

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
ムーミンパパの思い出
「鬼滅の刃」 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ

 まあ『鬼滅の刃』はTVアニメのエピソードを流してただけだったんで、評価の仕様がなかったという感じです。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、いろんな人が言ってますが映画としてはダメ映画です(笑)まずストーリーがないですし、ただキャラクターに頼ってるだけですから。


ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

 ただこれもいろんな方が言ってるように、マリオとしては100点満点。ゲーム特有の失敗を繰り返して進んでいく仕様というのを上手く映画に落とし込んでいて、それだけですごいなと感心しちゃいましたね。

『ムーミンパパの思い出』はムーミン生誕の地フィンランドのパペットアニメでありまして、凄く楽しめたのですが他のアニメと比べると多分評価の仕方が変わってしまうので、今回は評価をつけない事に致しました。


ムーミンパパの思い出

 ということで、ここからベスト3の発表です!

3位

窓ぎわのトットちゃん

公開日 12月8日
監督 八鍬新之介(ドラえもんシリーズ監督)
興行収入 4.8億(今日現在)
評価 9.0〜9.5

 黒柳徹子さんの自伝を映画化した作品でして、八鍬監督がアニメ化したいと黒柳さんを口説き落としたみたいですね。

 この映画、凄かったなあと感じた事が1つありまして。

 決して希望を描いてるわけじゃないんですよ。


 舞台が戦前〜戦争末期あたりで、当然ながら作品の中でどんどんと状況が悪くなっていく。で面白いのが、主人公のトットちゃんですらいろんなものをどんどん奪われていくんですね。

 それは人であったり、居場所であったりってのもあるんですが、トットちゃんという人間性も戦争という時代と彼女自身の成長によって奪われていく。

 観る前は感動系なのかなと思ってたんですが、実際は『この世界の片隅に』のような、我々一人一人が何を失っていったのか、どのような罪を背負ってしまったのかという凄い重いハイドラマでした。

この世界の片隅に

 と言っても重たい雰囲気で進んでいくわけではなく、視点は子供のトットちゃん。子供視点で描いた『この世界の片隅に』といえばわかりやすいかもしれませんが、まあとにかくトットちゃん自身は明るく元気なんですね。

 なんで作品自体は楽しく観れるという、なんとも不思議な作品でした。さすがはドラえもんを長きに渡り作り続けている八鍬監督というか、まだ43歳かそこらのはずですがその若さにしてこれだけの味を出せるって、とんでもないなと感じましたね(笑)

 この『窓ぎわのトットちゃん』よりも(僅差ですが)高い評価を付けた作品が、こちらになります。

2位

ガールズ&パンツァー 劇場版第4話

公開日 10月6日
監督 水島努(ガールズ&パンツァー、SHIROBAKOなど)
興行収入 5.8億
評価 9.0〜9.5

 この作品、1位にしようか迷うほどの出来でした。

 ガルパンの作品自体は、20代以上のオタクの方であれば観た事くらいはあるかなと思いますし、聖地巡礼やガルパンおじさんなんて言葉も流行りましたんで、今更語る事もないんですが。

 今回はとにかくアクションが凄かったですね!

 雪山を滑りながら戦うシーンがあるんですけど、とにかく圧巻すぎて。やっぱり戦車ですから、スピードを出して戦うというのがどうしても難しいんじゃないかと思うんですが、水島監督は工夫を凝らして毎回緊張感を出すじゃないですか。

 で今回のアクションは水島監督が築き上げてきた技術というものがもう一つ上のランクに上がったのかなと。+発想が凄い。あのシーン多分5分以上はあったような気がするんですが、雪山を滑らせてスピードを出しつつちゃんとわかるように作られている。息を呑むほどのど迫力シーンが続いて、あの数分だけは本当何も考えられずに見入ってしまいました。

 アニメの醍醐味ってこういうところかなとも感じましてね。だって実写では戦車を滑らせて戦わせるなんてできっこないじゃないてますか(笑)でもアニメなら、技術次第で可能というのを証明してくれて、アニメの可能性というものをもっと拡げてくれたと感じましたね。

 でガルパンは2位なんですが、さきほど書いたようにギリギリまで迷いました。どちらを1位にすべきか…見極めるためにもう一度観てみたりもしましたが、まあやはりこちらであろうと、決めた次第です。

 2023年アニメ映画の1位は、こちらの作品です!

1位

BLUE GIANT

公開日 2月17日
監督 立川譲(名探偵コナンゼロの執行人、黒鉄の魚影など)
興行収入 12.8億
評価 9.4〜9.5

 この作品、一度観ていただきたいです。

 原作漫画を日本編までは読んでいたんですが、やっぱ原作も面白いんですよ。

 この作品は原作の東京編だけをやったわけですが、アニメ映画の難しさって、原作付きの作品をそのままやる時にどうしても本家を超えられないって問題があるじゃないですか。

 しかも『BLUE GIANT』の主人公・宮本大は天才型。才能もあるし、努力の天才。しかも夢に向かってまっすぐで純粋。

 …という性格なんて、裏を返せば本来なら主人公としては面白くない

 ではなぜ原作が面白かったかと言うと、彼も若者としての側面があって、その人間ドラマ(恋愛とかですね)も描かれていてキャラクターに厚みを出してたからだと思うんですが、映画では彼の人間ドラマは一切排除している。

 主人公の仲間キャラの葛藤などは描かれるのに、主人公は本当に夢に向かっているだけなんです。

 にも関わらず、作品を観ていくといつの間にか宮本大というキャラクターに引き込まれている。これは一体どういうことなのか。

 

つまりこれ、理想的な大谷翔平物語なんですよね。


大谷翔平

 田舎からサックス一本持ってやってきた青年が、音1つで周囲を認めさせ、虜にしていく。まさに天才の成り上がりストーリーなんですが。

 大谷選手って、将来的には絶対に映画が作られるじゃないですか。でも彼ってやってる事が凄すぎて物語としては面白さを出すのが難しいと思うんです。

 でも彼だって高校時代、プロ時代、メジャー時代と最初は疑いの目で見られてましたし、「二刀流なんてできっこない」と思われていたんです。

 そんな周囲の目を大谷選手は165kmの豪速球やホームランなんかで変えていったわけですが、『BLUE GIANT』の宮本大も大谷選手と被るところがある。

 映画内の宮本大は人間ドラマを極力削られましたが、その分演奏シーンで人物像を語らせた。観てもらったらわかりますが、本当に音で語ってるんですよ(笑)

 上原ひろみさんという演奏者の方がメインキャラ3人全員の楽器を担当されたらしいのですが、この作品が成功を収めたのは半分彼女の功績だと思います。

 そして、演奏シーンにすべてを集約させる為に敢えて日常パートを薄くさせた監督の演出というかストーリー構成がもう半分。

 はっきり言ってそれ以外はない映画なんですよ(笑)演奏シーンのCGとか配信版では改善されてましたが劇場で観た時なんか下手すぎて現実に引き戻されましたし(笑)ドラマパートは正直どこにでもある展開なので、そこの評価は特にない。

 でも、演奏シーンは物凄い。

 ガルパンと迷っていたのもそこで、2作品とも日常シーンはどうでもいいんです(笑)でもアクションシーンで物語を語っている、その熱さがアニメでしか出来ないと言うか、もっと言えばアニメ映画でしか出来ない。

『BLUE GIANT』も、やはりあの演奏シーンの迫力は漫画ではどうやったって出せない。だからこそ宮本大の人格を掘り下げるという選択を取ったんでしょうが、アニメでは逆に人間ドラマに力を注げば平凡な作品に終わってしまう。だってそれなら漫画読んどきゃいいわけじゃないですか。

 演奏シーンで迫力を出し切って初めて『BLUE GIANT』はアニメになった。そして人間ドラマを排除して実力を発揮させるシーンで観客を納得させるのが理想的な天才物語なのだと、そう感じましたね。

 というわけで、2023年は『BLUE GIANT』が1番面白かったです!総括すると、今年は9点超えの作品は少なかったですが逆につまらなさすぎる映画もなかった。そういう意味では当たり年だったなと思いますね。

 で今年は今のところあまり注目作はありませんが、山田尚子監督の『きみの色』には注目したいですね。

 そして今年も良き作品に出会える事を心から待ち望んでおります!

 長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!では皆さんこの辺で〜。

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