反復する進化
受精卵は、その後胚と呼ばれる。
胚は胎芽となり、そして胎児と呼ばれるようになる。
胎児はその小さな手足をまるめて、羊水につつまれて成長していく。
はじめ、丸だった形は、まるで両生類のような姿にかわる。
このころ、母体は自身の変化に気がつく。
つわりの始まり。
このつわりの原因ははっきりと解明されていない。
症状も人それぞれだし、ほとんどつわりがない人もいれば、きつくてたまらない人もいる。
この、つわりの時期を進化になぞるならば、ちょうど海で暮らしていた生物が、陸へとその生活範囲を広げようとしている時にあてはまる。
エラ呼吸から肺呼吸へと、体内構造を徐々に変化させながら進化するさまは、きっと楽でははなかったはずだ。
言うならば、我々が何も身につけず宇宙空間へ飛び出すようなもの。
この、血ヘドを吐くような苦しみを乗り越え、生物は肺呼吸を手に入れた。
その苦しみが、つわりなのではないかと考える人もいる。
あながち間違いではないようなその説に、気の遠くなるような時間と苦しみを感じる。
われわれは、進化の歴史18億年を、羊水の中で駆け抜けてきたのだ。
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