鼻骨折②

鼻を骨折すると鼻に器具を入れてもとに戻し、その後は出血するためガーゼなどを鼻の穴につめておく。


あなたの周囲に鼻骨折をした人はおられるだろうか。


わたしはこれまでの人生で鼻骨折をした人は
弟一人だけである。
もしこれから鼻骨折をした人がいたら
ぜひともインタビューしてほしい。


これまでに経験したことがないほど、
悶絶する痛みのようだ。

弟に感想を聞いたところ、

「失神するかと思った」とのことだった。


一緒に同行した母によれば「見ていられなかった」と
話していた。

さらに痛ましいのがそのあとである。


しばらく鼻呼吸ができないため、口呼吸になってしまう。


のどが乾燥し、いがいが声になり、軽い風邪をひいてしまい、
くしゅんとくしゃみをするたびに鼻が痛んで寝込むという

悪のような循環であった。


あばら骨にひびが入った母は母で、

自然に回復するのを待つしかなく、
しばらく二人とも休戦となり、それぞれおとなしく生活をしていた。

骨をケガすることは大変なことだ。


いずれわたしも子を持つ親となったときに
反抗期の産物に当たることもあるのだろうか。。。

想像しただけでぞわっとする。

いずれにしても鼻骨折をした弟の痛みが尋常でないように見えたため、
鼻は今後の人生で死守していこうと心に誓ったのであった。


あれから13年。


わたしも一児の男の子の母となった。


生まれてしばらくしたら、夫の兄嫁(義姉)が遊びにきて
授乳におろおろするわたしの様子を見に来てくれた。


義姉は看護師をしており、以前は整形外科に長く勤めていた。

義姉は女の子2人の母だ。


その義姉がベビーベッドですやすやとするわが子を眺めながら、
真剣な顔をしてボソリとこう言った。

「ゆきちゃん、、うちは女の子だったけどね。男の子のパワーの振れ幅はね、未知なんだよ。
 わたしが以前勤めていた病棟では、子どもが誤ってぶつかって鼻骨折して来院する母親が毎週のようにいたよ」


「なにがなんでも気を付けるんだよ。大きくなるにつれてどんな動きをするかわからないからね」


なんということだ。

13年前からわたしが教訓にしている”鼻骨折だけは回避する”という教訓を
脅かす要素が目の前にあるのだ。

「はい・・・気を付けます」とつぶやき、
その会話が妙に自分の中に残った。


それから1年後。

鼻骨折の危機にわたしもいよいよさらされることになる。
長くなるのでこれは続く。


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