鼻骨折③

息子が1歳半を過ぎると、非常に活発に歩き回り、
ソファーからジャンプしたりと、わんぱく坊主の片鱗を見せていた。


ある日のこと。

わたしはリビングのソファー近くでせんたくものをたたんでいた。


息子はテレビでYouTubeをみながら
ダンスをしていたように思う。

その瞬間はいきなり訪れた。

よくレスリングなどで、四隅の端からジャンプする技が
あるように思う。


あれをやられた・・・・!


ソファーに飛び乗ったと思いきや、わたしの顔めがけて
ジャンプしてぶつかってきたのだ。

彼の足はわたしの鼻に激突した。


しばらくうまく呼吸できなかった。

うずくまり、頭がぐわんぐわんという音をして思わず
倒れこんでしまった・・・・


息子は初めてみる母の無残な姿におどろき、
オイオイ泣いてしまっていた。

平日の昼間のことだったので、夫はおらず、
自分ひとりでなんとかするしかない。

しばらくすると呼吸も戻ってきて、
なんとか起き上がり、自分の状態をうかがった。

鼻の頭が腫れあがり、首をかたむけると頭痛が走った。

これはマズイ。鼻骨折かもしれない。
しかし痛みが弟の痛がり方と比べたらそこまでではないような気もした。

これは男と女のちがいだろうか。
陣痛の痛みを経験したため、痛みの閾値がおかしくなっているんだろうか。

いやきっとそうではなく、万が一鼻骨折をしていたときに
あの装具をいれた治療を避けたい念から、
「鼻は折れていない。打撲しただけだ」と
言い聞かせたかったのだと思う・・・


病院に行きたくない人の理由はたいていここにある。
現実をみたくないのだ。


数日過ごしてみた。


日を追うごとに、痛みも少しずつ減ったため、
「やっぱり鼻骨折じゃないね」と思う反面、


日物を食べたり、子どもにせがまれお馬さんごっこをして
かがんだときに、頭痛がした。

息子をおんぶしたくてもできない。
吐き気までしてくる。


夫に「どうしよう、これは骨折だったかもしれない。装具をいれることになったらどうしよう」
と泣きついたところ、


「それならそれで、一生鼻が変形したままよりはいい」と言い、


それもそうだと思ったわたしは病院へ行った。

はじめは整形外科を受診したが、
頭痛がするのであれば違う病気の可能性もあるため、
脳神経外科へ行くことになり、MRIを撮ることになった。


首から頭までの撮影のため、全身を撮るよりかは早く済む。
しかし
前の撮影者が長引き、40分ほど待合室で待たされた。


その待ち時間はまるで数時間のような感覚で、


「どうか折れていませんように。どうかあの装具だけはしたくありません。
お願いします」

と神に祈るばかりであった。

結果は折れていなかった。
医者曰く、打撲であった。
鼻の変形も腫れからくるもので、数日すればよくなるだろうとのことだった。


帰りに痛み止めをもらい帰宅となった。

医者のいうとおり、数日したら痛みもだいぶやわらぎ、
いつもどおり息子にお馬さんごっこをしてあげられるほどに回復した。


1年前に義姉から聞いた予言のような会話がまさか
わが身に降ってくるとは思わなかった。


男の子のカウンタージャンプは母親であればいつでも降ってくるリスクがある。他の男の子のお母さんにも確認したところ、その恐怖を一瞬でも感じた経験がある人が大半であった。


”育児”というものにリスクが多くはらんでいることを改めて痛感した
鼻骨折疑惑であった・・・

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