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ミトスコアと形態学的評価|胚盤胞の質を評価するための二つの手法

こんにちは。アイジェノミクス スタッフです!

前回に引き続き、なかむらレディースクリニック 中村嘉宏先生をゲストにお迎えして、 胚盤胞のミトスコア、形態学的評価について詳しくお伺いしたので、そのポイントをまとめていきたいと思います!

妊活ラジオ」は、FM西東京にて毎週日曜あさ10:00~放送中です!アイジェノミクス・ジャパンのYouTubeチャンネル「妊活研究ラボ」でも、アーカイブ配信しています。

胚のミトコンドリア量を評価する方法

PGT-A検査については、1週目、そして前回も、中村先生に詳しく解説していただきましたが、ここではミトスコアについてもご紹介します。

アイジェノミクス のPGT-A検査では染色体の異数性(数の異常)を確認する以外に「ミトスコア」による評価を受けることができます。ミトスコアではPGT-A検査でとってきた細胞あたりに、ミトコンドリアが何個あったのかをスコアリングしています。

ミトスコアはPGT-Aの結果、正常と判定された細胞のみを対象にスコアリングを行います。正常胚の中でもより状態が良く、移植に適している胚はどれか、ということを知ることができます。ミトコンドリアと胚のエネルギーレベルについてはアメブロでも詳しく説明していますので、ぜひご覧になってみてください。

ちなみに、胚が持つミトコンドリアは少ない方が良い、というのがアイジェノミクスの解釈です。一般的に、体内のミトコンドリアはたくさんあった方が良さそう、というイメージがありますが、胚の場合はストレスがかかった時に細胞内のミトコンドリアが増えていくと言われています。そのため、ミトコンドリアの少ない胚のほうが、よりヘルシーな状態を保てていると考えることができるのです。

胚の見た目を評価する方法

胚の発育スピードや発育状態を細胞の大きさや形などの見た目で評価する、形態学的評価の方法について、中村先生に伺いました。PGT-A検査とはまた違う視点で胚を評価する手法です。

卵の形態学的な評価には主にガードナー分類という方法が用いられています。ガードナー分類では、卵の発育段階を1、2、3、4、5、6と6段階位に分けて評価します。これは、主に胚盤胞の大きさなどから判定されます。

さらに、赤ちゃんへと成長していく細胞と胎盤になっていく細胞を、それぞれ形態を良いものから、中間、悪いものへと、A、B、Cの3段階で分けていきます。

このとき、赤ちゃんに育っていく部分の評価はAだけれども、胎盤になっていく部分はC、といった違いはよく起こることなのだそうです。これはPGT-A検査の際にもよく議論になる点ですよね。

中村先生によると、形態学的評価の組み合わせはBBになることもあれば、AC、またはCAになることもあり、全ての組み合わせが見られるそうです。ガードナー分類による平均的な評価は、3BBくらいとのことです。

胚の評価方法については、なかむらレディースクリニックのウエブサイトにも詳しく掲載されていますので、ぜひご覧になってみてください。

胚を目で見てスコアリングする形態学的評価では、どうしても主観が入りやすくなるため、なかむらレディースクリニックでは必ず二人以上の培養士によるチェックを行っているそうです。

また、なかむらレディースクリニックでは4年前から「タイムラプス」を導入しており、培養器(インキュベーター)に内蔵されたカメラで胚の発育過程を自動撮影しながら培養を行っています。胚盤胞がいまどのような状態になっているのかをリアルタイムに確認したり、大きさを測ることもできるため、その数値を参考にしながら客観的な指標にもとづいて発育段階を評価しています。

形態学的評価とPGT-A/ミトスコアの関係

そしてその形態学的評価とPGT-A検査の結果についてですが、実はある程度の相関はあるのだそうです。ですが、やはり必ずしも一致するわけではなく、形態が良ければ染色体も正常でミトスコアも良い、ということにはならないようです。

前回も解説していただきましたが、胚の状態によってはPGT-A検査のための細胞の採取(バイオプシー)が行えないこともありますので、まずは形態学的評価によってPGT-A検査の対象となる胚を判別することも必要です。

中村先生は、胎盤になる部分の評価が通常のCまでであればバイオプシーも可能では、とご説明くださいました。しかし、かなり変性していたり、明らかに脆弱な胚盤胞であるなど、形態が極端に悪いものに関してはバイオプシーを行うのが難しいとのことです。

そのような胚は、場合によっては、そもそも凍結対象にしないと判断されることもありえるそうですが、施設ごとに過去のデータや医師の経験などをふまえて慎重に判断される必要があるとのことです。

ミトスコアの実際の活用について

PGT-A検査の結果、移植に適していると判定された胚はミトスコアの高いもの(ミトコンドリアの少ない胚)から順番に移植されていきます。ですが、ミトスコアのランキングと形態学的評価のランキングが一致しなかったときは、どうするのでしょうか。

なかむらレディースクリニックでは、形態学的な評価よりもミトスコアを優先し、ミトスコアのランキング通りに移植を行っているとのことです。

中村先生が形態学的評価よりもミトスコアを優先している理由のひとつは客観性があるということ。ミトスコアについては諸説あるものの、形態学的な評価よりも確実な指標として、患者さんにも説明しやすいという点から、ミトスコアの利用をおすすめしているとのことです。

アイジェノミクスのPGT-A検査をご利用くださっている施設には、必ずミトスコアを付けて結果をお返ししていますが、こんな風にしっかりと活用してくださっているとは、とてもうれしいですね!

PGT-A検査と不妊治療の保険適用拡大

PGT-Aの利点については、諸外国ではすでに認知されており、日本でも現在進められている臨床研究によってPGT-Aの有用性は証明されていくでしょう。保険との併用ができるような、何らかのかたちで受け入れられていってくれたらと思います、と中村先生はお話くださいました。

※2022年1月25日の段階では、着床前検査(PGT-A含む)の保険適用は見送られる方針となりました。保険診療との併用に向けて、先進医療への申請が検討されています。

また、1週目の放送で中村先生に解説いただいたERA検査も保険適用拡大の議論にあがっている最先端検査のひとつ。ERA検査についても、非常に有用な検査だと思っているので、保険適用となれば、あるいは先進医療として保険診療と併用できるような形になると望ましいとおっしゃってくださいました。

中村先生からのメッセージ

三週にわたって、大阪・吹田市にあるなかむらレディースクリニックの院長である中村嘉宏先生に、PGT-A検査とERA検査の有効性について詳しくお伺いしてきました。

最後に、中村先生からのメッセージをご紹介いたします。

不妊治療というものは仕事との両立などを考えると非常にハードルが高いように思われるのですが、早く始めるに越したことはありません。検査で原因が分かれば対処する方法はたくさんあります。もし気になった場合は早めに検査だけでも受けられることをおすすめ致します。とのことです。

中村先生、ありがとうございました!


体外受精を始める前に。不妊治療で悩んだときに。
不妊治療のための遺伝子検査ラボ アイジェノミクス

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