見出し画像

リプロダクティブヘルス・ライツの視点で、日本の性教育、妊孕性の限界、卵子凍結について考える

前回に引き続きメディカルパーク横浜の院長、菊地盤(きくちいわほ)先生をゲストにお迎えしてお送りする、妊活ラジオ 〜先端医療の気になるあれこれ〜

海外と日本のリプロダクティブヘルス・ライツの考え方の違いや、先生が取り組まれていた卵子凍結プロジェクトについて、詳しくお伺いしました。

妊活ラジオ」は、FM西東京にて毎週日曜あさ10:00~放送中です!アイジェノミクス・ジャパンのYouTubeチャンネル「妊活研究ラボ」でも、アーカイブ配信しています。

メディカルパーク横浜、菊地盤院長のご紹介はこちら

リプロダクティブヘルス・ライツに対する海外と日本の考え方の違い

「リプロダクティブヘルス・ライツ」という言葉は日本語に訳すと「性と生殖に関する健康・権利」となります。どういう意味なのかといった解説は前回詳しくご紹介させていただきました。

さて、日本はリプロダクティブヘルス・ライツの側面において、世界から遅れている言われていることはご存知でしょうか。

もちろん、文化や歴史、宗教などの背景の違いによってさまざまな考え方があるのは当然ですし、実際には日本だけが特別に遅れているということではないのかもしれません。

しかし、ジェンダーギャップ指数などの指標を単純に比較した場合には、女性の権利という点において、日本が他国に遅れをとっていることは事実です。

前回のお話の中で、男女ともに性に関する正しい知識を身につけていかなければリプロダクティブヘルス・ライツに対する理解は深まらない、しかし、日本では丁寧な性教育が行われていないために性について学ぶ機会が失われている、というご指摘がありました。

日本では、性教育=性行為の話、と認識されていることが多い。さらに日本では、特に女性に対して、性行為は「してはいけないこと」とする意識がまだまだ残っている。

そして、このことが、日本で性教育が広まっていかない理由のひとつになっているのではないか、と菊池先生はおっしゃいます。

性教育というのは、本来、性行為そのものについて話をするということではなく、避妊や妊娠といった、性行為によって生じるさまざまな状況や選択肢について、また自分や他人の体を大切にすることの意味について教育することであるはずです。

そのことが正しく理解されず、また性行為自体をタブー視するという文化的背景も影響して、「性行為はしていはいけないこと、だから、それについて教えることもいけないこと」という誤解が生じてしまっているのではないでしょうか。

ピルやモーニングアフターピルの議論も同様で、性行為を「してはいけないこと」と考える人は、ピルも「必要ないもの」と捉えることがあります。性行為をしなければピルが必要になることもないのだから、ということです。

しかし男女問わず、「安全な性交渉が出来ること」はその人たちの権利です。その権利を守るために必要な医療や制度には誰もがアクセスできるべきでしょう。

フランスでは25歳未満のすべての女性を対象に、経口避妊薬(ピル)などの避妊法利用が無料化されました。薬局でピルを購入できる諸外国も多いなか、日本では産婦人科を受診しなければピルを処方してもらうことができない、という状況です。

正しい知識を持つことが重要

菊池盤先生は、浦安市と共同で行ったプロジェクトの中でアンケートをした際、半分以上の人が「妊娠の限界年齢について知らなかった」と答えていた、という事実についてお話くださいました。

女性には、自分が妊娠したいか、したくないか、いつ妊娠するか、ということをライフプランとして検討する権利があります。性行為はしていいことなのだ、ただし安全性や避妊の面では男女が協力して配慮をしましょう、という認識を、性教育を通して広めていく必要があると感じられたそうです。

 菊地盤先生は1年に1回行っている医学部での講義の際にも、リプロダクティブヘルス・ライツを念頭に置き、学生に対して「妊娠は非常に重要なことのひとつであり、目の前にいる患者さんが自分の行う治療によって将来、妊孕性に、妊娠する力に影響するのであればそれをあらかじめ伝える」「対処する方法があるのならちゃんとカバーしておく」ことの大切さをお話されるそうです。

卵子凍結プロジェクトについて

菊地盤先生は千葉県浦安市の順天堂浦安病院に在籍中、浦安市と協力して、市内に住んでいる方の卵子凍結を無料で行うというプロジェクトを実施しました。

条件は市内在住、34歳まで。年齢制限を設けた理由には、35歳以降は妊孕性が落ちていくという事実を知ってほしい、というメッセージが込められていました。

浦安市と順天堂浦安病院との卵子凍結プロジェクトは、毎月1回、セミナーにて体外受精の方法や妊孕性の限界について、またリプロダクティブヘルス・ライツについての説明を行い、希望者に卵子凍結をしていただくという流れで実施されました。

3年間のプロジェクト期間中、2年に渡って希望者を募り、100人以上の方が参加したにも関わらず、卵子凍結のプロセスに至ったのは34人だったそうです。

セミナーを受け、凍結保存した卵子を受精させた場合の妊娠率が、思ったほど高くないを知り、卵子凍結は行わずそのまま妊娠された方もいらっしゃたとのこと。

卵子凍結には賛否両論があり、菊池盤先生も全ての方におすすめするかと言ったらそうではないとおっしゃいます。しかし、ご自身やお相手のご病気、または経済的な理由などによって今すぐ妊娠することは難しいが、将来的には出来れば妊娠したいと考えた場合、また治療などの影響により卵巣の機能が低下してしまうことが分かっているときなどは、妊孕性を維持するためのひとつの手段として、卵子凍結は有用であるとお考えだそうです。

そしてなんと、このプロジェクトで凍結保存した卵子を使って、ご妊娠・出産された方も実際にいらっしゃるそうです。その方は、体外受精のための採卵も新たに行ったそうですが、3年前に凍結した卵子を融解して受精させた受精卵の方がグレードが良かったのだそうです。

このように、若いうちに卵子凍結しておくことの有用性が確認できる事例も出てきている一方、海外の報告などでは、卵子凍結をしたものの全く使わなかったというケースも多くなっているため、ライフプランをしっかりと持ったうえで、計画的に卵子凍結を行うことが大切です。

卵子凍結が流行っているから、とりあえず凍結しておこう、といったことで卵子凍結を行うことには疑問を感じる、と菊池先生はおっしゃいます。

ただし、どんな理由で卵子凍結を行うのは良いのか、だめなのか、という線引きを他人・医者が行うのは非常に難しい。本来であれば本人が自分で意思決定するのが望ましいが、そのためには知識が必要とのことで、やはりここでも正しい情報の発信・周知が必要不可欠になりそうです。

卵子凍結プロジェクトを開始した当時は、反発が大きく妨害もあった、と菊池先生はお話くださいました。これは、女性は若いうちに自然に妊娠するのが当たり前、という感覚を持っておられる方が多かったことの現れではないか、とおっしゃいます。

しかし、妊娠・出産に関する自身のライフプランを検討することは、すべての女性の権利であり、守られるべきことです。菊地盤先生からは、それは決してわがままではない、その気持ちに自信を持っていいんだよ、とのメッセージをいただきました。



不妊の約20%は 子宮内膜の問題が原因です。

妊娠の可能性を高めてくれる「子宮内膜の検査」をご存知ですか?

体外受精を始める前に。不妊治療で悩んだときに。
- 不妊治療のための遺伝子検査ラボ アイジェノミクス -

Twitter
https://twitter.com/Igenomix_JAPAN

YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCylkf7gwitwepOTeb9Gjwtw

Facebook
https://www.facebook.com/IgenomixJapan

Website
https://www.igenomix.jp/

お気軽にお問い合わせください

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?