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日記 2024.6.7(金) 森の教室で。

やっと金曜日。うれしすぎて踊り出したいけれど、あの重苦しい空気の教室に今日も一日中いなければ解放されないと思うとまた気持ちが沈んでくる朝。

頭痛や車酔いがしんどい時、わたしはいつも森の中、木漏れ日のきれいなうつくしい小川を想像する。きらきらとした水がおだやかに流れる場所に立っている、もしくは寝転がっている自分を想像して気持ちを落ち着かせる。あれは一体どこなのだろう、どこかで見た景色なのだろうか。ちゃんとその場所に自分がいることを想像できると少し気分が楽になる。
あの教室が森の中にあればどんなにいいだろう。足元には小川が流れ、鳥の声を聴きながら授業を受けることができたなら、思考も作業も、なんでもすいすいはかどるに違いない。かたい、縦長の箱の中に長時間いることはわたしには苦痛でしかないようだ。

とかなんとか考えながらも今朝も朝の支度を進めていく。1年以上切っても染めてもいない髪の毛は伸びたい放題なのでアイロンで整えてみたりする。多少でも髪型が整うと気分が違うからやっておく。番茶を入れてお味噌汁の残りを温めて、玄米パンを焼く。朝からフル回転するコンロは頼もしく心強い仲間である。今日も行ってこいよと声をかけてくれる。

ガラスの瓶にお弁当を詰める。玄米を下に敷いて上に昨日の夜用意しておいた野菜たちをのっけていく。いろどりにミニトマトを入れたらすっごくお弁当らしくなってなんだか嬉しい。お弁当箱をわざわざ買わなくてもいいのではないかと思い始めた。瓶に入れて持って行くのでもなんら問題がないし見た目もわるくない。

16時にすぱっと授業が終わり外に出る。教室を一目散に出るなんてこと、これまでしたことがない。一日中室内で過ごし、カーテンもしまっている教室にいるからその日の天気など知らないで過ごすことになる。空気が、風が気持ちいい。そういえば今日は職業訓練に入って初めて頭痛がしなかった。パソコンに向かって文字を打ったり、ようやく普通に授業が始まり退屈しなくなったからかもしれない。ほっとした。

今年の梅事情が知りたくて久しぶりにこだわりの八百屋さんに寄ってみる。外にたくさん梅が陳列されていて喜んだのは束の間、張り紙を見ると今年は農薬、化学肥料不使用の梅が大不作なのだそう。実家の梅の木の梅も今年は少なかったのでやっぱりそうなのかと思った。1kg 1,850円のよく熟れた梅とお塩を買った。そういえば梅を買ったのは初めてなので1kgが1,850円が高いのか安いのか妥当なのかわたしには分からない。わたしはいま梅仕事がしたくてたまらないから買う、それだけの気持ちでレジに向かった。自分のしたいこと、やりたい気持ちにはとことん付き合っていくと決めている。

わたしの無職は梅仕事から始まった。去年は実家の梅も大豊作で、親戚からも梅がやってきてたくさん梅を漬けることができた。いろんな方法でやってみたくて無塩の梅干し、減塩の梅干し、梅シロップも作った。梅仕事に夢中になっている間はこれからのこと、不安なんてものは全然感じていなかった。梅仕事をしているうちにわたしはだんだん自分自身と向き合うことを知っていった。不安気に庭で梅仕事をしていると近所の方がアドバイスしてくださったりして心強く、わたしはどんどん元気になっていったのだった。

昨年の梅の当たり年を知っていると、今年が不作というのはなんだか納得という気もする。去年たくさんの実をつけわたしたちを喜ばせてくれた梅の木。天候不良をきっかけに、今年はしっかりと栄養を蓄えることにしたのではないかなと感じる。人生は長い、来年のため、これからのために無理しないで休むと決める。それでも少しだけ今年も梅は実をつけてわたしたちを喜ばせてくれた。もうそれだけで十分じゃあないか。梅は静かに、わたしに休むこと、休む意味を教えてくれる。
今年の貴重な梅をわたしたちはいつもよりも大事に大事に漬けてみたい。不作とされる今年から本格的に梅仕事を始めるというのはなにか意味があるような気もしている。高くても梅を買って今年から梅をたくさん漬けよう、心に決めた。

夕飯も食べてお風呂から上がり、気分が良くてクマたちと一緒に小躍りする。買ってきた梅の封を開けるとぷーんと香りが広がった。プラムのような甘酸っぱい香りに最高のしあわせを感じる。いつまでも梅に鼻を近づけてくんくんと香りをかぐ。今夜塩漬けにしようと思ったけれどあまりにもいい香りすぎて一晩この香りの中で眠ることにした。

明日からは梅干しを作ったり、絵を描いたり、わたしの小さな日常に一気に戻っていきたい。一年前からわたしは成長できているかな。梅仕事をしながら確かめてみよう。電気を消して布団に入る。夜風に乗って梅のふくよかな香りがわたしの体を通りぬけていく。

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