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ショッピングモール

 200ⅹ年秋、新潟時代の日記です。
 
 今日の新潟はこの時期には、珍しく快晴。
会社での午後のひと時、事務所の部屋から
正面の大きなガラス窓から外を眺めていた。
窓の外は幅20メートルほどの中庭、その向こうがバス通りだ。
中庭の大きなプラタナスの木は、大半の葉っぱが土色になり、
もう直ぐ朽ちて落ちるのだろう。
道路沿いの垣根の間からは、絶え間のない車の往来が、垣間見える。
道路の街路樹は既に定例の剪定が終わり、太い枝を寒空に晒している。

 道路の向こう側には、最近立てられた山〇電気の大きな建物がある。
ややベージュがかった、白い建物なので、それほどの違和感はないが、
そこには、この春まで、木々に囲まれて当社の独身寮などが
あったわけで、景観は一変している。

 話は少し前にさかのぼるが、
当社には、厚生地区と称して、工場とは独立した敷地が道路の
向こう側にあり、社宅、独身寮、体育館に加えて、
220ヤードのゴルフ練習場などがあった。
俺は社宅に住み、休みには、ゴルフの練習をし、時には、
練習場専属のプロに教えもらっていた。

 しかし、前の道路が信濃川をくぐるトンネルに直結したことで、
状況が変った。
もともと主要な県道で、交通量は少なくなかったが、
トンネルを抜けてくる車が劇的に増えた。
結果、新潟では、NO1の某食品スーパーが目をつけ、   
一帯をショッピング街に開発したいので、土地を貸して欲しいと。

 え、そんなことしたら、俺は生活パターンを変えなければならない。
ゴルフの腕も、ここまでになってしまう。
とんでもないと、お断りした。
でも、相手は粘り強く、諦めない。
そのうち、行政が、市外地の大規模開発はいついつまでとして、
以降、許可しないことになると、 最後の駆け込みだと、
提示の賃貸料をかなりあげてきた。

 冷静に考えれば、当社は、株式会社であり、
当然のことだが、個人の生活パターンより、
会社の経営資源を有効に使う方が、優先される。
それなりの利益を生むいい土地がある。
会社の定款にも、事業の一つに不動産賃貸と書いてあるし、
既に、何万坪かを、貸していて、中には、ショッピングモールもある。
会社はそれなりに利益を上げているし、無借金だが、
それにしても、目の前の利益を無視する事は、
経営者としては、許されることではない。
結局、厚生地区は、当社敷地内で、
第二のショッピングモールとなり、一角に山〇電気がある。
オープンは、明後日の16日だ。

 今、窓から山〇電気の白っぽい建物を眺めて、
なにやらつまらないのだが、会社とは、そういうものなので、
仕方がない・・・と、自分に言い聞かせている。

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