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号泣する準備はできていた

 江國香織さん「号泣する準備はできていた」は2003年の直木賞作品だ。
 
 2021年に姫路の会社を退任して東京に戻った時、無職の暇人になったのだから、時間が限りなくあり、読書が進むはず、と楽しみだった。この2年程、体調不良もありそれほどでもないが、まあまあ・・・・読んでいる。
 
 藤堂志津子さんと江國香織さんの小説は、いずれも恋する女性の心理を描く同じジャンルと思う。藤堂さんの小説は25冊の古本をまとめ買いして読みこんだものだが、細かい中身は殆ど覚えていない。その時、江國さんも少しだけ読んだ。描き方が似ていているが、藤堂さんよりもう少し深刻に女性を描いている印象だった。
 
 昨日読んだ江國香織さんの「号泣する準備はできていた」は12作の短編をまとめた一冊で、いずれも女性の恋愛を一人称で語っている。11作目に収められているのが、表題の「号泣する準備はできていた」だ。
 
 以下、大雑把な内容は・・・・
 私と隆志とはノーフォークで出会い、直ぐに恋に落ちた。(体を重ねる部分の描写がリアルだがそれでいて、いやらしさはない。)2人は一緒に帰国して一緒にアパートで暮らし始める。ある時、隆志が、他の女と寝てしまったと謝ったが、私は「知っているわ」と返事した。
隆志はアパートを出たが、関係は終わらず、今でも隆志に会いたくてたまらない。2人とも別の女、男と体を重ねているのだが。
 
 最後を一部抜粋すると・・・・
 私は隆志の優しさを呪い誠実さを呪い、美しさを呪い特別さを呪い、弱さを呪い強さを呪った。そしてその隆志を心から愛している自分の弱さと強さを、その百倍も呪った。
 
 他の男と体を重ねても、愛する男から脱却できない自分を呪っているらしい。私には理解し難いが、人の心は様々、そう言うこともあり得るかもしれない気もする。

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