見出し画像

代々の家具

 2013年9月の日記です。
 
 夏休み、御嶽の帰りに久々に横浜の自家に寄った。
庭は予想にたがわず草木が伸び放題で、見苦しいが、
リビングには亡き両親から引き継いだ、
祖父の代、父の代の家具が並び、ほっとした雰囲気になる。
 
 ソファ横の長火鉢は、母の実家宇和島の祖父からのもの。
生前の母が、しばしば自宅で長唄の会を催し、
この長火鉢に炭をおこして、銅のやかんにお湯を沸かし、
お茶を振舞っていた・・・らしい。
なんとも優雅なことで、母の得意そうな顔が目に浮かぶ。
およそ100年前の造作だろうが、欅の木目が美しい。

長火鉢


 
 紫檀の座卓と飾り棚は父の実家、道後の家にあったもので、
果てしなく黒に近いこげ茶の色合いに一世紀の重みがある。
 
 座卓は畳一枚ほどの大きさで、ソファの前に置き、
洋間のテーブとして、違和感ない。
地味だが、どっしりとして重く、存在感は他の家具を圧倒する。

紫檀の座卓


 
 飾り棚は高さが胸まで、幅は半間、奥行きは一尺程度、
柱や扉、棚、引き出しなど、一見繊細な美術品だが、
そこはさすがに紫檀、堅くしっかりとしている。
我が家では、贅沢な電話台だ。
 
 部屋の両端には、ともにマホガニー製の飾り棚と、扉棚が相対し、
40年ほど前に父が(三越か高島屋に)注文したもので、
いずれも幅が一間を超え、厚い一枚板の木目が素晴らしい。
 
 飾り棚は高さも1間ほどあり、収容能力もたっぷり。
ガラス戸の中に、古い人形、花瓶、食器などを並べ、
前焼コーナーには、壺、徳利とぐい飲み、大小のお皿を収め、
こげ茶と青灰の微妙な形と色合いを楽しめる。
 
 扉棚には両親の位牌、写真、その他を収め、隠れ仏壇にしている。
時に、扉を開けて、心静かに両手を合わせる。

 
 追:残念ながら・・・その後、終活の一環で、
   2020年に横浜の自宅は、大半の家具とともに処分しました。
   それでも隠れ仏壇の扉棚だけは、人形町のマンションに運び、
   今はテレビ台兼仏壇です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?