ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷
塩野七生さんは(失礼ながら)私より10年上、今87歳になる。昔から好きな作家の一人だ。「ローマ人の物語」は塩野七生さんの歴史小説。「なぜローマは普遍帝国を実現できたのか」という視点のもと、紀元前のローマ建国から西ローマ帝国の滅亡までを描いている。1992年、塩野七生さん55歳で第1巻から年に1冊ずつ新潮社から刊行され、2006年12月刊行の15作目で完結している。
当方は「ローマ人の物語Ⅰ」が刊行されて以来、毎年続編が刊行されるのを楽しみに読んだものだった。昨今、我ながら何を思ったのか、もう一度「ローマ人の物語」を読もうと思い、アマゾンで単行本を取り寄せて読み始めた。単行本では15冊、文庫で45冊だから、先は長い、適当に他の本も読みながらだから、いつ読み終えるのか見当つかないが、取り敢えず、Ⅰ、Ⅱに続いてⅢまで読み終えた。
Ⅰは、地方の都市国家ローマが、イタリア半島を統一するまでの約500年間を駆け足で記述している。紀元前753年ロムルスがローマを建国。王政が7代、250年間続いたが、紀元前509年、共和制に移行。その後は貴族対平民の抗争が200年続くが、紀元前287年にホルテンシウス法が成立して抗争は完全に鎮静化され、ローマ共和制が完成した。この間に近隣諸国との数々の戦争を繰り返し、最後に南イタリアのギリシャ諸都市を制覇し、ルビコン川以南のイタリア半島を統一した。
Ⅱのハンニバル戦記では、紀元前264年からのローマ対カルタゴの地中海覇権争いを詳しく書いている。カルタゴは北アフリカを拠点に、スペインまでの地中海を支配する強国であり、名将ハンニバルがイタリア半島を蹂躙するにまでいたったのだが、最後は紀元前146年にローマに敗れ、国として抹殺された。これにより、ローマは、地中海の東はギリシャ・・小アジアから、西はスペイン迄、更に北アフリカの一部も傘下に収めて属州として支配するに至った。
今回読み終えたのが「ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷」、まさに混迷の時代だ。Ⅰ、Ⅱと同様に、歴史の事実を淡々と語っているように見えるが、随所に著者塩野氏の見方、登場人物の人となりが加えられ、物語に引きこまれる。ローマの政体は一言で言えば共和制だが、元老院、市民集会、平民集会が複雑に絡み合い、相互の権力争いが時に武力衝突に至り、国を二分する内紛となる。加えて、周辺諸国がそれに付け込んでローマに反旗を翻す、特に小アジアの東に位置するポントスとの抗争が延々と続く。
最後はローマの名門の出、軍事の天才ポンペイウスが登場して、内紛を収め、スペインの反乱を平定し、ポントスの王ミトリダテスを滅ぼし、地中海にはびこる海賊も平定した。紀元前61年にポンペイウスがローマで凱旋式を挙行した時に以下のプラカードを掲げた。
彼がこの3年間に成し遂げたのは、
1. 黒海からカスピ海、そして紅海に至るまでの全域に、ローマの派遣 を打ち立てた。
2. 1千2百万人の人間を、ローマの覇権下に組み入れた。
3. 1千538の都市をローマの覇権下に組み入れた。
・・・・・・
6. エジプトやパルテノンやアルメニア王国をはじめとする国々と講和を結び、ローマの属州の国境を安全にした。
ポンペイウスは政治力も軍事力も、大衆の指示も、何もかも持っていたように見えたが、実際には、ローマはまだ混迷期から抜け出していなかったらしく、ローマ史上の「偉大なる個人」にはポンペイウスではなく、別の人物がなることになる・・・・と本書は結ばれている。
次の「ローマ人の物語 Ⅳ」はいよいよ、ユリウス・カエサル が登場する。アマゾンに注文済み、2,3日中に来るはずだ。
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