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終われない人

 2019年3月の日記です。
 
 今年に入り、6月に東京に戻る、と決めたつもりだったが、
諸々があり、1年間延長することにした。
 
 5年前、67歳で某社をリタイアした時に、
姫路の会社から、経営を教えて欲しい、と誘われた。
経営を教えるなどおこがましい、出来るとすれば、
自分がやってきたこと、やることを見てもらうくらいだ、
頼みに来た相手は45歳、若いけれど賢そうだし、
今更教えることもそうそうはあるまい、とは思った。
 
 でも、初の関西生活も面白そうだ。
京都東山の散策、改修直後の姫路城、神戸の北の坂、
瀬戸内海の漁港、山陰の蟹など、
頭をよぎる事、ものはいくらでも有る。
人生はいつでも「これから」、楽しむためにあるのだ、
よし、姫路に行こうと決めた。
 
 5年間、関西生活はそれなりに楽しんだが、
会社の方はなかなか思い通りにはいかない。
日々の細かいノウハウは教えられるが、
根本的な経営の感性は口では伝えられず、
背中を見てその人なりに感じ取ってもらうしかない。
 
 自分は、姫路に来る前の会社で、
思い切った経営施策が功を奏し、業績が大きく伸びたが、
一歩間違えればどうなったか分からない。
世に成功したと言われる経営者はすべからく同じだ。
経営に絶対はない、のである。
 
 そろそろこの辺で、老兵は去るのみ、と思ったのだが、
最近、経営者が、持ち株会社から自社の株式を買い取って独立する、
所謂MEBOを目指すことになり、抜け出せなくなった。
ファンドを選定し、経営計画を作成、諸々の条件やお金の交渉等、
自分は上場企業トップの立場で、その類の経験も重ねてきた。
ここで会社を去るわけにはいかないと、もう1年延長することにした。
 
 昨今、主だった社員が、もっといてくれと言う。
最初はよくある社交辞令だと思い、「俺にも人生がある」
と答えていたが、何度も言われると、その気にもなる。
自分の体力、気力を思うと、最大あと1年、
この間にMEBOを成功させて、一応の目途をつけるつもりだ。

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