引き抜き 4.Y商事社長の来訪
2014年2月業界トップのA社から、当社の販売店を取り込む戦争を仕掛けられた。対抗措置として、Y商事東京支店の主要な営業マンを引き抜き、売上5000トンを取り戻そうと画策している。敵が気づく前に、素早く秘密裏に進めねばならない。
4.Y商事社長の来訪
T支社長と密会した2日後、Y商事のY社長が私に直接ご説明したいと、当社の築地事務所に来訪した。Y社長は一昨年亡くなった老社長の長男、一見人当たりがいいが、外向けだけのような気もする。
既に引き抜きを打診中のT支店長をお供に来訪して、曰く・・・
・今般東京地区の販売を御社からA社に切り替えることになった。
・御社には長年ご指導、鞭撻をいただき、深く感謝しており、本来なら、御社との取引を継続したかった。
・昨年来、A社から東京地区の販売をA社に切り替えるよう申し入れされていた。
・A社は我社(Y商事)の株式を保有しており、断り切れない。
・なにとぞ、事情をご理解いただきたい。
Y社は同族会社であり、株式の大半はY社長らが支配しているはずで、A社は9%に過ぎないから理屈はおかしい。もう少し複雑な事情がありそうだが、そんなことはどうでもいい。
面白くないが、私からは以下を告げた。
・御社が決めたことだから、わが社は何かを言う立場ではない。
・当社はこのままシェアを失うわけにはいかず、全力を挙げて取り戻すつもりです。
・既に受注が決まっている案件は従来通り当社商品とすること。
・更に現在商談中の案件も、受注後は当社商品としていただきたい。
・万一、御社が東京支店を維持できなくなったら、当社が買い取る用意がある。
最後の支社を買い取る云々は、単なる嫌味だが、商談中の案件云々は、T支店長以下引き抜きの時間を少しでも、稼ぎたいのが本音だ。この間、T支店長は一言も発せず、ちらっと見ると、如何にも自分は単なるお付きですといった表情だった。