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新潟時代6.携帯電話振動子

 2002年当時の携帯電話は着信時に電話機自体が結構な振動で着信を知らせるようになっていた。振動は電話機内の超小型モーターが偏芯の錘、つまり振動子を高速で回転させることによって発生させる。振動子は長さと直径が3~4ミリ程度の偏芯の円筒形状、重さを稼ぐために比重の高いタングステン合金でできている。当社はこの振動子を製造しており、当時の世界は携帯電話の黎明期、急激なマーケットの拡大が見込まれていた。
 
 当社の振動子は独自のタングステン合金で、そのままで充分は耐食性があり、他社のように、表面の酸化防止のためにニッケルメッキをする必要がない。社内の金属系の開発技術者B君が独自に開発した特殊合金で、成分特許は取得しているが、特殊な製造ノウハウがあり、他社、他国は真似できない。圧倒的な耐食性があり、顧客からの評価が高い。
 
 ところが、製造が安定せず、最終の完成品検査で、寸法や表面の酸化状態などで基準から外れて、数千個単位でロットアウトすることが頻発する。このため納期が不安定で、コストもかかり、収益も赤字だった。将来性のある有望なマーケットであり、顧客の評価も高いのだから、何とかせねばならない。
 
 担当する焼結工場技術者K君に製造不安定の要因を聞くと、色々言うがどれも決定的な原因とは思えない。それでも更に議論を重ねると季節の影響が大きそうだから、金属粉末をプレスする際の気温と湿度の変動が根本原因ではないかとの結論に至った。それでは、工場にエアコン室を作って、そこにプレス機を移設してみよういうことにした。相応のお金がかかるし、それで解決するとの確証はないが、他には思いつかない。
 
 工場のレイアウトを考えて、工事を発注し、プレス前後の半製品のハンドリングの改善など全てを、焼結工場の技術者K君が担当した。一連の工事で品質を安定させるとの意気込みで、素早く、しかも丁寧に、対応した。開発技術者のB君とも随所で相談、議論していた。結果は大正解、品質が劇的に安定し、工場の作業員も、営業も拍手喝采だ。
 
 話は大幅に脱線するが、某業界紙が、全国何カ所かで鉄鋼人ゴルフ大会を年に一度開催しており、その頃、新潟大会が開催され、出席した。参加者は新潟地区鉄鋼関連会社の幹部や大手鉄鋼会社の新潟営業所の所長など、総勢50人程度。ところが・・・・出だしから調子がよく、前半を1アンダーの35、後半は少し手を抜いて43、トータル78、圧倒的な成績で優勝した。

 ところが業界紙とはいえ全国紙、新潟大会で○○氏が圧倒的なスコアで優勝したとの記事になり、世に知られることになってしまった。親会社で、○○は新潟でゴルフばかりしていると、あらぬ噂になっていると聞かされ、以降、ゴルフの大会では手を抜くことにした。

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