地元民向け個人飲食店の魅力
普段はチェーン店で食事をすませてしまうが、旅行中は個人飲食店に入ることが多い。
安くて一定のクオリティが約束されているチェーン店と違って、個人飲食店での食事は博打だ。普段から利用するのは疲れてしまうが、旅行中であればその博打感もいい。
「観光客が行かないようなせまくてくたびれた店こそ、本当にうまいものを出すんだよね」と通ぶるつもりはない。
どちらかというと、こぎれいな観光客向けの店の方がおいしい確率が高いと思う。
だけど、観光客をねらっていない地元民向けの個人飲食店は何というかほっとするのだ。
飾り気のないくたびれた店内の雰囲気と、地味で気取っていないメニュー。
その気の抜けた感じが魅力であり、そこに癒されているのだと思う。
ただ、そういう雰囲気を持つ店は嗅覚のいい旅人が聞きつけて訪ねてくることが多いので、観光客がいなそうな地味で家庭的な雰囲気の店にかえって観光客が多くくるという矛盾した現象も起こったりする。
例えばこの店も、外から店内がほとんど見えなくて看板も出しておらず地味であり、一見さんは入りづらい。
だけど、温泉地にある上に宿泊したホテルでもおすすめされたので、地元民向けっぽい雰囲気に反して観光客がけっこうきていそうだ。
ここではラーメンと餃子を食べた。「うめえええ!」という感じではなく、素朴で優しい「うん、うん……、いいね……」とつぶやきたくなるような味だった。
自然の食材にこだわっており、半世紀ほどの歴史がある店らしい。
店の方も、低姿勢なのにフレンドリーで、こういう店が日本にあふれていたらチェーン店は栄えないだろうな、とまで思った。
正直なところ、雰囲気が占めるウェイトが大きいので、大しておいしくなくても、素っ気なくても構わない(個人店の例として写真を載せているだけで、上の写真の店がおいしくないとか素っ気ないとかいっているわけではない。念のため)。
店主と常連が盛り上がっている中、よそ者として店のすみでこそこそと出されたものを食べる。これも、遠くの知らない空間で知らない人に囲まれて知らないものを食べているという孤独感と非日常感があっていい(改めて写真を見ると何だかよく分からないもの食べているな)。
旅行中に観光客向けではない個人飲食店に入って「こういうところがいいんだよ」というのは一種の「イキリ」なのだが、その「こういうところがいい」の正体は、個人飲食店特有の飾り気のないゆるくて癒される雰囲気と、反対に、遠く離れた知らない場所で知らない人に囲まれてよそ者として食事ができる、心地のよい孤独感によって作り出されるもの(この2つは正反対の性質に見えるが同じ店の中に混在していることもある)だと私は思っている。
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