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DSのRPG『リゾード』が好き【RIZ-ZOAWD】

好きなゲームのいいところを長々とネット上に書いたことはないだろうか?

例えば、クロノトリガーのような往年の名作や、個人制作のフリーゲームとしてはトップクラスの知名度を誇るゆめにっきについて書かれた文章はネット上に星の数ほどある。

書く意味を「自分の好きなゲームを布教し、時間が経っても人々の記憶から消えないようにするため」だとすると、すでに自分より感受性が豊かで文章力が高い人が長文でまとめてくれているので、今さら書く必要性はあまりない気もする。

となると、本当に書くべきなのは、自分は好きだけど世間での人気や知名度は低く、放っておくと人々の記憶の中から消えていきそうなゲームについてではないだろうか。

というわけで今回は、任天堂のDSで出たRPG、『リゾード(RIZ-ZOAWD)』について書こうと思う。

リゾード(RIZ-ZOAWD) とは?

リゾードは、2008年12月25日にDSで発売されたRPGだ。

ワイルドアームズシリーズなどで知られるメディア・ビジョンエンターテイメントが開発した。

同じくワイルドアームズシリーズなどに関わったなるけみちこ氏が主題歌を作曲し、麻生かほ里氏が歌を担当した(麻生氏に関しては、『アラジン』のジャスミン王女の声の人と言った方が伝わりやすいかもしれない)。

童話の『オズの魔法使い』を元ネタにしており、原作と同じく、竜巻によってオズの国に飛ばされてしまった少女ドロシーを操作して、愛犬のトト、カカシ、ライオン、キコリと一緒に魔女を倒す旅に出る話だ。

このゲームの良いところ

①世界観

このゲームの最大の魅力は世界観だ。グラフィック、キャラクター、BGM、それらが上手く組み合わさって、絵本の中のようなメルヘンでかわいらしい世界観を生みだしている。

まず、このゲームは映像の美しさを売りにしている。

DSなのでローポリなのは当然だが、限られた性能の中でかなり頑張っている感はある。

原作にも登場した城まで続く長い黄色のレンガ道、桜の舞い散る回廊、花が咲き乱れる宮殿の庭園、波の押し寄せる砂浜、青い海に長い桟橋が続く離宮、紅葉の近くを清流が流れる山道、パンプキンが転がり墓石が建ち並ぶ館の庭など、普通のDS時代のRPGならそれっぽく道を作って終わりのダンジョンを丁寧に作りあげている。

ローポリなのに足をとめて見入ってしまうほどだ。

キャラクターもいい。仲間や雑魚敵、魔女や魔女の手下である黒猫たちなどは絵本のようなメルヘンかつかわいらしいデザインで統一されている。

尊大できな臭いがどこか抜けているオズ、引きこもりがちで寂しがりやな春の魔女(フローラ)、サバサバとした姉御肌の夏の魔女(ディーネ)、ホラー系スプラッター小説を書いており妄想がとまらなくなる秋の魔女(ホリン)などキャラクターが立っている。

BGMもいい。DSながらヘッドホンでのプレイ推奨だ。それぞれの場所の雰囲気に合っており、前述のきれいなグラフィックに華を添えている。

最初にふれた主題歌や、エンディングテーマも最高だ。YouTubeなどを探してもらえば聞けると思うが、ミュージカルのような壮大かつ物語に沿ったメッセージ性の強い歌で、ゲーム中でもしっかり使われている。

よすぎたのでクリアしたあとサントラを買ってしまった。主人公のドロシーと、敵として登場したものの後に親友となった春の魔女(フローラ)の、仲睦まじいイラストがかわいい。

そしてストーリーにも注目したい。

基本的に、このゲームのストーリーは原作の『オズの魔法使い』に忠実である。

魔女に方角ではなく四季が割りふられていたり、個性がつけられるなど細かい改変はあるが、カカシやライオンやキコリが自分に足りないものを手に入れるためにドロシーと一緒に魔女を倒していくという大筋は変わらない。いい意味で変化にとぼしく、安心して進められる。

あと、絵本らしい雰囲気で分かると思うが基本的に世界観はゆるい。原作の『オズの魔法使い』では序盤から魔女が死亡するが、このゲームではそのようなことはない。

目的が魔女討伐なので、当然魔女たちとは武器を使ってマジの戦闘にはなるのだが、最終的にはお互いに理解を深めて友だちみたいな関係に収まる。

冷静に見ると少女同士が武器を持って殺し合っているのだが、何だかんだどちらも傷つかず仲よくなるという、メルヘンな絵本らしいゆるい雰囲気がただよう。

ある程度の年齢になると、意外な展開やジェットコースターのようなストーリーや陰惨なシーンは疲れてしまうので、これくらいでいいのだ。

②操作性

操作性についてもふれよう。

このゲームの大きな特徴として、ボタンを使わなくていいということがあげられる。タッチスクリーンですべての操作が行えるのだ。

ボタンとタッチスクリーン両方を使うよりも快適だし、ボタンをさわらないことによってゲームっぽさが少しうすれて、絵本を読んでいるような気分が増す。

ついでにいうと、全体的にゲームのレスポンスが遅い。ことあるごとに暗転したり演出のためのタメが発生している印象だ。

普通のゲームだとイライラするポイントだが、このゲームだとテンポがゆったりしてこれはこれで嫌な感じはしなかった。

あと、このゲームの移動の仕組みは少し独特だ。画面下に巨大なトラックボールが映しだされており、それを回すことによってドロシーを操作できる。

ドロシーは原作通り魔法の靴を履いているので、すさまじい移動速度を誇る。

ひとたびトラックボールを回すと、ドロシーが両手を広げて全力疾走する。軌跡がきらきらとかがやき、美しい風景が矢のように過ぎ去っていく。なかなか爽快だ。

ただし、速すぎてドロシー本人も制御しきれないのか、急停止するとスキール音を出しながらスカートをはためかせてつんのめりそうになる。かわいい。

全体的にレスポンスがトロいのに移動速度は制御不能になるほど速いという、少し変わった操作性がこのゲームの特徴のひとつだろう。

③意外とシビアな戦闘バランス

絵本のようなメルヘンでゆるふわな雰囲気のゲームということは、RPGの醍醐味である戦闘もゆるふわなのかというと、そんなことはない。

このゲームの戦闘は古きよき時代のRPGで主流だったターン制を採用しているが、「レシオターンシステム」という独自のシステムが導入されている。

簡単にいうと、仲間が1ターンに「4」行動できるシステムだ。

ただし、ドロシーとカカシは行動に「1」、ライオンは「2」、キコリは「3」消費する。

行動の合計が「4」であれば、同じ仲間が何回行動してもいいし、行動しなかった仲間は敵からねらわれなくなる。

ドロシーやカカシはあまり戦闘力が高くなく、耐久力も低い。だが行動に「1」しか使わないため行動の回数でカバーできる。キコリは逆に、戦闘力抜群で耐久力も高いが行動に「3」使ってしまうため、融通が効かない。

キコリの斧による一撃よりドロシーの杖でたたく攻撃4回の方が合計ダメージ量は高くなりがちだが、それをすると、ドロシーだけが敵にタコ殴りにされて一瞬で死んでしまう。

あと、ドロシーはお化け系の敵に強くて回復が得意、カカシは水棲系の敵に強くて素早く妨害が得意な反面実はドロシーより攻撃力が低い、など個性がはっきりしているので、レシオターンシステムの縛りとキャラクターの得意分野をパズルのように組み合わせながら行動を決めないといけない。

「でも雑魚敵なら戦術なんて無視して通常攻撃で蹴散らせるんでしょ?」と思う方もいるかもしれないが、そうもいかない。

このゲームは敵の攻撃力が全体的に高く、レシオターンシステムの関係上仲間一人がタコ殴りにされることもありうるので、雑魚敵相手でもヒリヒリとした戦闘を強いられる。

また、RPGではしばしば使わずに終わることの多い妨害系や支援系の技だが、このゲームでは使うとかなり戦闘を有利に進められる。

「カカシで敵を妨害して、ライオンで味方の防御力を上げて、ドロシーで回復して、キコリで殴る」など、一人にダメージが集中しないようにまんべんなく仲間を切り替えなくてはいけない、パズル的な側面を持つ戦闘システムだ。

一応、自動で大体いい雰囲気の行動を選んでくれるオートモードがあったり、レベル上げでごり押しもできなくはないが、戦闘自体は意外とシビアだ。

わりと欠点も多いゲーム

正直いってこのゲーム、足りないところも結構多い。

万人に勧められるとはいいがたいし、あまり有名でないのもうなずけるが、何だか放っておけない、忘れられないという独特の立ち位置のゲームだ(私にとって)。

せっかくなので、このゲームの足りない点も書いておこう。

①イベントが少ない
イベントらしいイベントが少ない。ゲーム全体を通して、ボス戦前後の会話と、3人のドラゴン爺さん(技を教えてくれるキャラクター)との会話、4人の精霊(ダンジョンのギミックを作動できるようになる)との会話くらいしかイベントがない。

ついでにいうと、このゲームには回復とアイテム購入ができる城と、ダンジョンしかない。普通のRPGでは大抵ある「町」というものが存在しないのも、イベントが少ない理由かもしれない。

イベントのボリュームだけ見ると、20年くらい前の、ガラゲーで無料でプレイできる個人製作のRPGよりもスカスカな印象だ。

②キャラクターとの会話が少ない
イベントが少ないということは、キャラクターとの会話も少ない。一人ひとりのキャラクターは立っているのだが、話す場面がない。

カカシ、ライオン、キコリはずっと同行してくれるのに、なんと出会ったシーン以外で話す場面がない。なので、彼らの口調や一人称すら覚えられないままエンディングをむかえる感じになる。

せっかく個性の強いキャラクターにしたのなら、他のRPGみたいに移動中に自由に仲間と会話できるようにしたり、携帯電話的なアイテムで友だちになった魔女と雑談できてもよかったのではないか。

③シンプルすぎるダンジョン
一概に欠点ともいいきれないが、ダンジョンはとにかくシンプルだ。ドロシーが全力疾走する関係上、ダンジョンは長い長い直線的な構造になっている。

分かれ道に何も書かれていない看板が立っており、そこに記号を書きこむことで行きどまりかどうかを忘れないようにできるのは面白いが、全体を通して道に迷うほど複雑なマップはそれほどない。

ダンジョンのギミックも頭を使うものではなく、閉まっている門を開けるために別の場所にあるスイッチ的なものを作動させるというワンパターンなものばかりだ。

最後に

最後に欠点を書いたように、なぜマイナーでとどまってしまったか分かるような弱点も抱えてはいるが、それを補ってあまりある作品だ。

神ゲーというよりは、隠れた佳作というか、放ってはおけない光るものを持っている作品、という表現が合う。

決して大成功したわけではないのでリメイクはしなそうだし、原作ありきなのでドロシーたちが主人公の続編も出なそうなのが残念だ。

……いや、『オズの魔法使い』は知名度が低いだけでシリーズものなので、原作の続編をモチーフに、リゾードの続編も出るかもしれない。

あるいは、他の童話のキャラクターたちが出演した続編も作れるかもしれない(ゲーム中にちらっと「時計を持ったウサギを追いかける女の子」の話が出てくるので)。

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