『ゆめにっき』の魅力を旅行ライター目線で語る
はじめに
『ゆめにっき』というゲームを知っているだろうか。
これは、2004年に公開された個人制作のフリーゲームだ。PCゲームだが、スマホアプリに移植されたり、ノベル化されたり、アレンジ版がNintendo SwitchやPCで登場したりと、フリーかつ個人制作のゲームとしてはトップクラスの人気を誇る。
星野源の「夢の外へ」でモチーフにされるなど、もはや「知る人ぞ知るゲーム」から「常識として大体の人が知っているゲーム」になりつつある。
ゲームの特徴や魅力を語る記事は星の数ほどあるが、私も旅行ライターのはしくれとして、旅行、それも一人旅という見地から『ゆめにっき』の魅力を解説したい。
『ゆめにっき』についてざっくり説明
『ゆめにっき』を一言で説明すると、主人公の夢の中(という設定)の世界を歩くだけのゲームだ。
主人公はお下げで糸目(目を閉じている?)の女の子である。女の子と書いたが、年齢は分からない。
名前は明示されていないが、ステータス画面に「窓付き」と書かれていることから、「窓付き」と呼ばれている。
彼女は自分の部屋から出ることができず(出ようとすると首をふる)、ベッドで夢を見るか、テレビゲームをすることしかできない。
また、製作者(ききやま氏)のHPによると、ストーリーも目的もなく、歩きまわるだけのゲームとされている。補足すると、戦闘やレベル上げといった要素もないし、ほとんどの登場人物がこちらに対して無反応であり、コミュニケーションを取ることもできない。
夢の中の世界はとにかく「独特」である。
ろうそくが散らばり古代の絵画のようなものが背景に流れる世界。目玉や血痕が散らばり、足がとびはね手がうごめく世界。黒地の地面に原色で無数の落書きが描かれ、遠景で見ると巨大な落書きになっていることが分かる世界。
ホラーゲームと見なされることもあるが、「癒される」と評する人もいる。
また、道に迷いやすい点も特徴だろう。このゲームはマップの数が多い上に広大であり、何も進展なくうろうろさせられることが多々ある。ようやくたどり着いた僻地には普段見ないキャラクターがいるだけで他には何もなかった、ということも多い。
なお、目的はないが窓付きの姿を変えるアイテム(エフェクトと呼ばれる)が24個存在しており、すべて集めることによってエンディングをむかえること自体はできる。
『ゆめにっき』と一人旅
ここまで読んでくれた方で今まで『ゆめにっき』を知らなかった方(知らない人がこの記事をここまで読むのか?)は、このゲームにどのような印象を抱いただろうか。
恐らく、「変わったゲームだね、面白そう」という方と「それはゲームとして面白いの?」という方に分かれるのではないか。
賛否が分かれる理由は、『ゆめにっき』を旅行(特に一人旅)と比較することにより明確になると思う。
というのも、私は『ゆめにっき』を旅行、それも一人旅に非常に似たゲームと考えている。
一人旅も、趣味としては賛否が分かれる。私は「旅行は一人旅が一番」と思っているが、一方で「一人旅したことがあるけどつまらなかった」という方の声も聞く。
持論だが、一人旅を楽しめない人は、自発的に楽しみ方を探すのが苦手なのではないか。
一人旅は、いわば見知らぬ土地に一人で放り出され、「ここでどこに行っても何をしてもいい」という状況である。どこに行けば楽しいのかは自分で決めなければいけないし、楽しませてくれる同行者もいない。自発的に楽しみ方を探さなければ当然つまらない。
一方で、「どこに行けば楽しそうかな、この先には何があるのかな、遠くに見えるあれは何かな」と、その状態を楽しめる人は一人旅に向いているのではないか。
『ゆめにっき』も、わけの分からない世界にストーリーも目的もない状態で放り出されるという意味では同じだ。
レベル上げやボス戦もなく、ストーリーやミッションといった与えられた仕事がない『ゆめにっき』は、自分で楽しめる要素を見つけないといけない。それを見つけられなければ、『ゆめにっき』は戦闘もストーリーもキャラクター同士の会話もない、空っぽなゲームにすぎない。
逆に、この先はどこにつながっているのか、これを調べたらどうなるか、そういったこと1つ1つに楽しみを見出せる人であれば、常識にとらわれない独特で広大な世界観を持つ『ゆめにっき』はこの上ない遊び場となる。
この、「何一つ知るもののない広大な世界に、(戦闘要素やストーリーなど)楽しませてくれる要素すらなく身一つで放り出される」という一人旅に似たゲーム性が、『ゆめにっき』の最大の魅力ではないだろうか。
一人旅を好む人であればきっと『ゆめにっき』の虜になるはずである。
興味がわいた方は、下のリンクから広大な夢の世界に旅立ってみてはいかがだろうか。
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