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観光地のユーモア

観光地特有のユーモアというものがある。

観光地に施設を構える際はお客さんの取り合いになるので、周りのライバル店と差別化をはからなければいけない。

その際、ユーモアを駆使して観光客の目をひきつけるという手段が取られることがある。

また、単純に経営している人が観光客を楽しませるために、趣向を凝らしてユーモアを発揮していることもある。

ちなみに、いわゆるB級スポットなどとは異なる。

B級スポットのように建物丸ごと改装してやろうというほどのスケール感や自分の世界を作りだしたいというような野望はなく、看板など比較的小さいスケールで、ちょっととぼけて気を引いてやろうという「小ボケ」程度のものが、今回取りあげる対象である。

さっそく見ていこう。

これは山梨県の昇仙峡にあった看板。「世界で2番目においしい」というフレーズ。おいしさとユーモアを端的に表現できて便利なので、観光地ではなくても人が集まるところでは時々見かける。

日本全国の「世界で2番目においしい」と書かれた看板を撮影してコレクションするのも面白いかもしれない。

これは福島県の大内宿にあったイスとテーブル。「美人専用」という木札がおいてある。ここに座った人に楽しんでもらおうという粋なはからいだ。

例えば大学生がグループで訪れた場合、一番お調子者な女子が「あたしのための席だわ!」と我先に腰かけると盛りあがるだろう。

長崎県の壱岐島の食堂。店員さんが「ここで面白い写真が撮れますよ」といってくれたので撮影。

その時は悪気はなく「これはどの辺りが面白いのでしょうか」と聞いてしまったのだが(今思うと申し訳ない)、店員さんは慣れているのか「たぬきの置物と船が店の前にあるのが面白いのです」と答えてくれた。

最初の「世界で2番目においしい」は別として、「美人専用」と「たぬきと船」は個人経営の店でないと出せないユーモアだ。

「美人専用」は女性の容姿をネタにしているため、下手に大手チェーン店がやると面倒な人にさらしあげられるリスクがある。

「たぬきと船」も、大手チェーン店がやろうとしたら、上から「これは何が面白いの?これに予算を出せというの?」といわれた際、十分な説明ができず実現できない可能性がある。

あと、上から「これはドラえもんをパクることで笑いを取ろうとしてるよね?パクりによって今後どのような問題が発生する可能性があるかは理解してる?」と指摘された時に反論できない。

つまり、これは多くの人がからまない個人経営の店だからこそ実現できるネタだと思うのだ。

身もふたもないことをいってしまうと、これらのユーモアには、自分のことを面白いと思っている50代後半のおじさんが発するギャグのような滑り具合と芯の外し具合を感じてしまうのだが、それはそれでよいと思っている。

儲けとウケに全振りしてしまうと結局は「SNS映え」と「パワースポット」一色になってしまって、それこそ日本全国の観光地がチェーン店みたいに代わり映えしなくなり、つまらなく感じてしまうと思っているからだ。

ただ、洗練された新しくてきらびやかなSNS映えする建物にくる観光客の方がお金をたくさん落としてくれることもあるので、私の考え自体がズレて芯を外している面もある。

「自分のことを面白いと思っている50代後半のおじさん」がギャグをいえるのは、そのおじさんが会社でそれなりの地位にいて部下が笑ってくれるおかげであり、定年後には笑ってくれる人は誰もいなくなってしまう。

そういう、ズレて芯を外したものが排斥されるようなことが観光地でも起こるのは悲しすぎるし、そういったズレたユーモアが観光地のチェーン店化を防ぎ、個性を作りだすと思っているので、安易なSNS映えブームに乗らずに、引き続き特有のユーモアを続けてがんばってほしいなあと思っているのである。

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