祖父日記 1日目

はじめに


祖父と暮らしている。正確にいうと、祖父母と、母と、2階建ての家に4人で暮らしている。ペットはいない。1階が祖父母、2階が母と私。

それなりの年齢のくせ実家暮らしというのは、親に甘えているという消極的な理由も勿論あるけれど、家族が好きだ、というのも大きい。女手ひとつで育ててくれた母と、親のように私の面倒を見てくれた祖父と祖母。私は家族と、家族と暮らす家が好きだ。

そんな大好きな家族のひとりである祖父が余命宣告を受けたのは、二年ほど前のことだったと思う。大分前の話で、時期をよく覚えていない。
話を聞いた当初はかなりショックで、"大切な人の死"にまつわる書籍なんかを手に取ったり、毎晩、次に目が覚めたら祖父がいないことをシミュレーションしたりと心の準備をしていた。
していた、のだが、祖父は今現在もそこそこ元気に生きている。そりゃ、全盛期というわけではなくて、家の中の移動にも杖をつくし、遠出する際は祖母に車椅子を押されていて、ふとした瞬間に(おじいちゃんになったんだなあ)とは思うものの、頭もしっかりしていて、よく喋る。そこそこ、元気でいてくれている。
先日のお正月にも「2023年を迎えられたんだし、2024年を目指してもらってね…」というような話が、軽い感じで出た。私も、当たり前みたいに2024年を祖父と迎えられるような気がしている。

けれども、何があるか分からないのが人生だし、祖父がいる日常が当たり前じゃないことも理解している。
だから、いつか振り返ったときに等身大の祖父を懐かしく思い出せるように、これから毎日、祖父との日常を記録していこうと思う。
無理はせず、なるべく毎日を目標に。

1日目

・朝、トイレに行く途中で祖父と鉢合わせた(うちにはトイレがひとつしかない)。祖父はトイレが長いので、いつも私に先を譲ってくれる。「先にどうぞ」と身体を横にしてくれたけど、廊下の四分の一くらいしか隙間がない。
ヨボヨボになっても、祖父は身体が大きい。痩せ細らないのはいいことだと思う。
ミチミチになりながら後ろを通り抜けた。そういえば、祖父と接触したのは久しぶりだった。
・母と夕飯にマクドナルドへ行った。最近短歌とか読んでるんだよね、と話したら、祖父譲りだねと言われた。祖父は俳句をやっている。教えてもらえば?とも言われたけど、それはちょっと気恥ずかしい。

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