見出し画像

「母」三浦綾子 読書メモ

読むことになった経緯から書く。

敬愛する椎名林檎が三浦綾子の「塩狩峠」について言及しているのをネットでちらりとした私。しかし、塩狩峠はkindleで有料だったため、とりあえず無料であった「母」を読むことに。

まず、表紙がいい。白地に青色で絵付けがしてある茶碗のような器に、薄ピンクの花が一凛寝かせるようにさしてある。背景は古道具にありそうな茶色、質感は和紙だろうか。

私の母が投げ入れをやっていることもあり、読む前から母という存在を感じさせられた。

何も事前知識を入れずに本を開いてみると、「蟹工船」などで有名な小林多喜二の母親である、セキの物語だった。なんてことだ。小林多喜二の小説を読む前に、母親の物語に巡り合うとは。

読了して、家族というものに対する見方が少し変わったように思う。本を通して、家族への文句などは出てこない。貧乏ながらも家族楽しく思いやりながら暮らす喜び、死別した家族への悲しみと多喜二の死への内面荒れ狂う怒りなどに終始して、貧乏になった原因の一つである親戚に対する恨みや、多喜二を殺した警察組織に対する怨念を感じることはなかった(少なくとも私は)

ただ、最初にとてもやさしかった警察のストーリーを述べて、後に息子を殺した警察について語ることで、静かに悲しみを訴えているように思って心苦しかった。

貧しさにあえぎ、夫や息子、娘に先立たれる苦しみがあっても、現実に向き合うセキのまっすぐな人間性を書ききっていることに尊敬の念を抱いた。

我ながらなんとも陳腐でつまらない感想だが、家族をもっと大切にしようと決意した。それほどに母の深い愛と人間らしさを感じる作品であったと思う。

とり急ぎ母に連絡でも入れてみよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?