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小説          俺が「君を愛す方法」第2話

全話で約23000字
2話約2500字

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前回までのお話あらすじ

ある出来事から憎しみを胸に生きてきた俺は、自暴自棄になっていた。 
赴任先の高校で放送部の顧問になり、そこで出会った女子生徒は、憎い、あいつの娘だった。俺は、復讐を決意し計画を企てた。そしてそれを実行することにこれからの人生全てを賭ける決意をした-。

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第2話


「えー、病気療養の和田先生の代わりにこの放送部の顧問になることになりました、冬賀隼也ふゆがしゅんやといいます。35歳、ひとりもんです。放送部なんてのは初めてで何も分からないですが、どうぞよろしく。」挨拶する俺の前に集まる20人ほどの部員達。その中でひときわ目立つ彼女の姿を見つけた。

2年生になったばかりの有栖ありすは肩より少し長めのストレートヘアで色白、整った顔立ちだった。内気そうな感じではあったけど、それは俺にとっては都合が良かった。

まずは、有栖を観察することにする。何が好きか、どんな事に興味があるのか、友人関係、性格、おっと、1番大事なのは、どんな男性にかれるのかってこと。そう、まずは、俺を好きになってもらう。
計画の始まりだ。

俺は、分析は得意だ。まず、仕草、動作、話し方に気をつけて嫌われないように心がける。嫌われていなければ、そこから好きになってもらうのは、たやすいこと。高校2年生なんて、まだまだ子供だから。

休憩時間に有栖の前でわざと感動モノの漫画を読んでみせた。元々涙もろい性格なんで、涙くらいすぐに出てきた。

「先生?感動しちゃってる?」

有栖が食い付いてきた。

「な、泣いてなんかないわい。」

涙を拭いながら答えた。

「有栖も読んでみるか?」

「どうしようかなぁー。」

ここで漫画本を受け取ったらまんざらでもない。

「そっか。なら無理にとは言わんけど‥‥。いや、でも、この漫画、マジ、いいよ。ほんといいよ‥‥。」

少し拗ねてみせたけど逆効果だったかもしれない‥‥。


いや、違った。


「読む!」

サッと漫画を奪って逃げて行った。

《やった‥‥》

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放送部の主な活動といえば、体育祭や文化祭の放送くらいだと思っていたけど、朗読の優秀順位を争う大会、ドラマを制作して参加する大会もある。俺が顧問になってすぐ、大会のドラマ制作をする部員達を見守ることになった。

物語を作る、そして脚本。音響、舞台、出演者選びなど、演出も全て部員が作る。

ドラマ制作の細かな相談を受けながら、有栖の好きな俳優の話をしたり、好きな音楽に共感したりして、俺の存在感をアピールした。そのうち他の部員達より特別に有栖と親しくなっていくことに成功したのだ。

5月の終わりのある土曜日には部員達と交流を深めるための親睦会を企画した。森林公園へのピクニックだ。

部員達がそれぞれ弁当を持参。俺はコンビニでサンドウィッチをテキトーに買って行った。それを見た有栖は、

「先生、わびしいですね。」

少し笑って俺に言った。

「あぁ。一人暮らしだしな、ハハッ。」

そう言って俺は有栖の反応を見た。

《次回の機会は、私が作りましょうか?》

そんなふうに言ってはくれないかと期待した。けれど有栖は、ニコッと微笑んだすぐ後

「いただきます。」

と手を合わせ、箸を掴んだ。

《焦らずゆっくり俺に興味を持ってもらうよ‥‥。》

俺は、何くわぬ顔でサンドウィッチにかぶりついた。


6月の中旬には、3年生が引退した後の部長、副部長を決めるため、3年の部員と俺で話し合うことになった。俺の心は、もう決まってる。もちろん、有栖が部長だ。副部長は、有栖とはあまり仲が良くない部員を選ぶ。そうだな、舞野香まいのかおり
あたりがいい。俺は2人を強く推した。


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「冬賀先生?今月末の大会で遠征するしおりを作成するんですが、出発当日の集合場所で去年、トラブルがあって‥‥。」

「あー、有栖、うん?どうした?」

思惑通りだった。有栖が部長としての仕事を相談する時、副部長よりも俺を頼ってくるように仕向けたのだ。案の定それから以前にも増して些細なことでも相談してくれるようになった。

有栖の話を真摯に聞くようにこころがけた。
そして懸命に考えて真剣に答える。

そのうち有栖は教師という俺の立場を超えて、違う別の角度から俺を見てくれるようになった。

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夏休みに入る直前のことだった。
部室に入る手前の廊下で

「先生、はいっ!これ。」

有栖が何やら俺の胸に押し付けた。茶色の味気ない紙袋に入った弁当だった。

「えっ?」

「早くしまって。誰にも見られないように早く、早く!」

「あっ、あ、うん。」

俺はとっさに、持っていたドラマの制作台本でそれを隠した。

有栖はその場でくるっと回って廊下を小走りに戻って行った。その時、彼女の髪がふわっと浮いた。

シャンプーの香りがした。いや、俺の嫌いな匂いだ。

弁当は中身を見てから、全てビニール袋に無造作に入れた。それをカバンの奥に軽く投げ入れた。家に持ち帰って捨てるためだ。


しばらくたって有栖にメールをした。

〈〈むっちゃ、美味しかったよ。卵焼き、
キレイに焼けてるね。わかたけ煮なんかサイコー!ありがとう。嬉しいよ‥‥。〉〉

有栖とはわざとラインは使用せず、キャリアメールでやりとりをしている。

画面のこっち側の俺は、捨てた弁当の感想に無表情で甘い言葉を並べた。

有栖が返信して来た。

有栖〈〈先生、私、朝、何時に起きたと思う?
5時だよ!あっ、でも、もうお日様は出てた。夏の太陽は、早起きだね。
先生が卵焼きの味は、甘いのが
好きって言ってたから、思いっきり甘くしたよ。大丈夫だった?〉〉

有栖はこの学校のどこからメールしてるのだろう。近くにいるのにメールでやりとりをする俺と生徒。ふんっ、バカげてる。

〈〈ちょうどいい味だったよ。今度は、だし巻きも食べてみたいな。有栖はきっといいお嫁さんになるね。あっ、今日、部活遅れんなよ!〉〉
有栖〈〈ねぇ、先生?私、今日は何点?昨日よりも今日の方が私の事好き?〉〉
〈〈バカタレ!明日の有栖の方がもっと好きだよ。〉〉
有栖〈〈りょーかいでーす。笑〉〉

有栖が俺の連絡先を知りたいと言って来た時
有栖は言った。ラインは、バレやすいから、キャリアメールを教えてと。
俺に迷惑かけないようにしたいと。
禁断がバレて先生が先生でいられなくなったら、嫌だからと。

映画やドラマみたいな恋物語。
俺に別の目的があることを除いては‥‥。

部活中にいつもアイコンタクトで互いを確かめる。
その後下を向いて照れたように下唇を噛む。
有栖の癖だ。

誰も見てないと思ってた。
だが今日、副部長の舞野が有栖を不穏な眼差しで見ている事に気づいた。

《まさか、舞野、俺たちのこと気が付いたり?‥‥なんとかしなきゃ。》


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to be continued


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