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小説          俺が「君を愛す方法」第8話

全話約23.000字

8話約3.600字

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1話から7話までのあらすじ

高校教師の俺、冬賀隼也ふゆがしゅんやは生徒の 有栖サナありすさなの一家に復讐をするために、有栖と偽恋愛を続けている。俺は、完璧に演者を成し遂げた。有栖は、未だに俺の偽りの愛に気づいていない。
純粋に俺に好意をよせる有栖。高校卒業と同時にいよいよ、復讐の時が来る。

有栖サナの父親でありアリス永生総合病院の院長である有栖浩介ありすこうすけは、俺の愛する妻、冬賀麻美ふゆがあさみと娘、冬賀柚良ふゆがゆらを見殺しにした。アリス院長は、自分の娘である有栖サナありすさなの盲腸の手術を優先したからだ。
その上、私利私欲のために、瀕死状態の俺の妻子を転院させ、死に至らしめた。

必ず、復讐を実行する。
誰もが思いもよらぬ方法で
有栖一家を一生苦しめるんだ!

娘の柚良が生前に通っていたピアノ教室で同じく学んでいた崎田真子さきたまこは、心臓の病気を患っていた。
有名なピアニストである小田最造おださいぞうの息子、小田拓真おだたくまもまた同じ教室で学んでいた。誰もが拓真との連弾を夢みていた。優しい柚良は、自分が勝ち得た拓真との連弾発表会を病気の真子に譲ってあげていた。

その後、真子は治療のかいもなくこの世を去ったが真子の母、崎田道子さきたみちこから、柚良にお礼が言いたいという内容で手紙がきた。

そこで崎田道子自身が妻麻美あさみと娘柚良ゆらの死に重大な関わりがあったことがわかり、驚愕する。しかし俺は、そんな道子に、復讐に手を貸すように促す。

一方有栖サナは、高校卒業の時をむかえた。

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第8話

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有栖ありすの大学入試センター試験の自己採点は好調だった。

しかし、有栖は気を抜くこともなく、俺へのメールも電話もほとんどせず、必死に未来へと目を向けていた。

そして目指す大学の医学部を見事に合格した。

「有栖、おめでとう。」

そう言った俺に有栖は瞳を潤ませた。

「お祝い、何が欲しい?」

俺が問うと何も言わず、有栖は俺の胸で声を上げて泣いた。

力強く俺に抱きついた。


抱きしめ返した。

そして教師と生徒ではなく、ひとりの男と女として初めて、そしてゆっくりと唇を重ね合った。

だが、

世間でいう相思相愛なんかではない。俺は…有栖に対して、愛の感情などいだきはしなかった。

ただ、

有栖の涙は、妙に美しかった。


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隼也しゅんやさん、早くぅー。こっちだよ。」

迷子になりそうなくらいの巨大なホームセンターを2人で歩いた。

紺色で花柄、長めのスカートと、白いブラウス。もう制服ではない。堂々と歩いた。

軽い足取りであちこち歩き回る有栖に

「サナ、もうさ、ちょっとどっかに座ろうよ‥‥。俺、ちょい、しんどい。」

「食器だけ一緒に見て。そしたら
座ろう。ねっ、おじさん(?)」

「あ、あぁ。」

「カンパーイ!‥‥。なぁんてね。
いっただきまーす!なぁんてね。
お紅茶でございます。ご主人様。なぁんてね。」

有栖は、グラスや、お茶碗、箸、コーヒーカップなどあらゆるものを手に取って楽しそうに笑った。

「隼也さん。楽しいね。最高だね。幸せだよ。私。」

「あ、あぁ。」

「あぁじゃないの、それ、言わないの!」

「あ、あぁ。」

それから2人で長椅子に腰を下ろした。

「サナ?」

「何?」

「大学は、どう?楽しい?
イケメン、いっぱいいる?」

「やだ、隼也さん、ヤキモチ?」

「ンなんじゃないさ。楽しいかって聞いてんの!」

「うん。楽しいよ。2番目に。」

「2番目?」

「1番目は、誰かさんといる時だからね。」


「お、俺?‥‥誰かって俺のことか。」

「本当はさ、田舎の大学でよかったんだ。
そしたら、一人暮らしできるでしょ。門限もないし、自由きまま。だけどパパは、絶対許してくれない。自宅から通える範囲じゃないとダメだって。
ここは、都会で便利だけど、時々、息つまるよね。」

「田舎だったら、そうそう会えないぞ?」

「あっ。そうだね。それはいやだな。」

そう言うと有栖は、視線を上にして微笑んだ。


良かった。まだ俺を想ってる‥‥。


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崎田道子に連絡をした。

人通りが少なく、防犯カメラの一切ない川沿いに崎田道子さきたみちこをよんだ。

「あんた、この街に戻って、また看護師やるって言ってたよな?どこで勤務してる?」

その問いに対し、
道子は、結構大きな救急病院にいると言った。

「俺は、妻と娘のかたきを取る。あんただってあのクソ野郎に脅され、旦那をいいように利用され続け、支配された挙げ句、娘は、助からなかった‥‥。クソ野郎の有栖浩介ありすこうすけに恨みがあるのは、俺と同じ。だろ?
同志じゃないか。頼みがあるんだ。
ある薬剤を盗ってきてほしい‥‥。」

そう言った俺に道子は、動揺を隠しきれない様子だった。

俺は、麻美あさみ柚良ゆらが亡くなってから何もする気になれなかった。
訴えを起こそうとも考えた。だがクソ野郎は、「当時のスタッフの手薄」をたてに正当性を主張し、俺は、行き場を失った。

その後、有栖サナと出会ってからは、ある意味、力が湧いたんだ。死ぬまで生きてやると。ずっと考えてた。有栖一家が死ぬよりも辛いこと。
それを一生背負わせてやると。

俺の計画を全て崎田道子に話した。

道子は、始めのうちは拒んでいたものの、最後に納得し、その薬剤を盗ってきてくれると、約束した。

毒物に指定されてるその薬。盗むのは容易なことではないはず。でも、道子なら、出来る。恨みや、憎しみは、大きな原動力に変わるから。


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有栖は、俺のアパートによく来るようになっていた。

そして身体を求め合うようにもなった。

たわいもない会話から、笑ったり、ねたりする。

そしてベッドに入る。

ごくふつうの男女の行為を俺は‥‥

隠しカメラでビデオに撮った。


生々しいあえぎも息づかいも、
激しさも
微睡まどろみも、全て撮った。


撮ったものに俺の顔だけ、モザイクをかけ、編集した。


ふふっ。

有栖サナ。俺をとことん憎んでくれ。


苦しめ。恨め。
激しく怒り狂え!!

俺は、笑い狂うんだ。

ははははっ!
アハハハハハハッ!


今の俺は、どんな顔をしているんだろう‥‥。

さあ、いよいよ実行だ!

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道子からようやく連絡がきた。例の薬剤を盗むのにかなりの時を使ったようだ。
俺が道子に計画の全てを語ってから、数ヶ月も経っていた。

道子は布袋ぬのぶくろに入れた
筋弛緩剤きんしかんざい』と『注射器』を俺に手渡した。


「ご苦労さん。よく成し遂げたね。褒めてやるよ。やっぱ、人の恨みって相当な原動力だね。」

俺の言葉に道子は、うつむいたまま、

「院長への『恨み』ではありません。麻美さんと柚良ちゃんへの『恩』です。」

そう言って道子の強く握った拳が震えていた。

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最後だ。これで俺は、苦しみから、ようやく解放される。

有栖をアパートによんだ。

「サナ。ちゃんとお祝いをしよう。卒業、入学、君が大人になった事。俺との愛を‥‥。」

もうすっかり、陽が短くなった。
秋の始まりか。
風が草の匂いを運んで来た。
涼しい。

有栖がアパートのブザーを鳴らした。

「ケーキ、買ったよ。」

有栖は、ケーキをテーブルに置いた。
有栖が片手に持った半透明のレジ袋にはコーラが入っている。

「俺、コーラ、飲めないんだ。」

「そうだったの?ごめんなさい。でも‥‥。隼也さんはお酒飲めるけどまだ私は未成年だし、自分用に買ったんだよ。」

「見るのが、い、嫌なんだ!!」

「隼也さん?顔、怖いよ?」

俺は有栖の腕を強く引っ張った。

そして強引に服を脱がせた。


激しく、強烈に手荒く‥‥。


サナは、抵抗はしなかった。そしてその場に倒れこんだ。

「サナ、これ、虫垂炎の手術痕だろ?」

「うん。気づいてたんだね。今まで何も言わなかったのは、知らないふりしてくれてたのね。女の子のお腹に傷なんて私が気にしてると思ったからでしょ?
あ、でも、なんで虫垂炎だって分かるの?」

「分かるさ、サナが虫垂炎の手術を受けたあの日、俺は、君の病院に居たからね。」

「えっ?」

コーラだよ!コーラを買いに麻美と柚良はコンビニへ行った。そして、
事故!
トラックに引きずられたんだ!2人とも血まみれだぞ!
君の病院に搬送されたんだ!
誰がどう見ても、2人を先にほどこすだろうさ。けど、君の病院は、応急処置さえしなかった!

あの時、麻美と柚良になんらかの処置をしてくれたら、ふたりは、死なずに済んだんだ!

君の親父おやじは、君の虫垂炎、いや、たかが盲腸を優先したんだ!


おれの大切なふたりは、転院される救急車の中で息を引き取った‥‥。

麻美と柚良を見殺しにしやがった、有栖一家を俺は今まで憎み恨んで生きてきた。

今日は、最後の日さ。

君の手術痕を見るのが辛かった‥‥。
その傷痕きずあとは、もう、笑えない麻美と、成長出来ない柚良の代償だからな!!
君が気にしてるから?

全く、違うよっ!!」

君は、ずっとそうやって他人を犠牲にしてここまできた。
君が何不自由なく成長し、
未来を約束されているのが無性に苛立いらだつんだ!」


「隼也さん‥‥。」

「俺は、君を愛してなんかいない。君に近づいたのは、復讐のためさ。
いいか、よく、聞いて。

俺は、君とのベッドでの行為をネットにアップしたよ!もちろん、俺の顔だけに、モザイク処理した。俺は、君をさらしたんだ!これで君の未来はぐちゃぐちゃだ!」

「えっ?‥‥嘘だよね?」

「ほんとさ。
さあ、怒れよ。狂えよ。俺の事、罵倒しろよ!
泣きわめいて、

そして君は、


俺を殺すんだ!


君を晒しもんにしたんだ!
はずかしめたんだ!

憎いだろ?
さあ!」

「アァッーーーーーー!」


「もっと泣きわめけよ、君は、もう一生、晒しもんさ、君の人生にタトゥーを入れたのさ。デジタルタトゥーだ!!」

俺は、道子から手に入れた『筋弛緩剤』の瓶から、薬剤を注射器に吸い上げた。


「筋弛緩剤だよ。医大生の君なら、知ってるよね。

これで俺を殺すんだ!


さあ、ぶっ刺せよ!さあ!」


「隼也さ‥‥‥ん。私は、あなたを愛してる‥‥。」

「俺は、微塵みじんも君を愛しちゃいない!


微塵もだ!もう一度言うよ、

俺は、サナを愛していないっ!!」


「ギャーッーーーー!もう‥‥もういい。言わないで!!」

泣き、わめき、しゃくりあげながら

有栖が注射器を振り上げた。


《そう、その調子だ。サナ、一気に振り下ろすんだ!ぶっ刺せよ!俺の身体にその液体を流し込むんだ!!
これで殺人を犯した娘の親達も、一生苦しむんだ。いい気味だよ。娘が殺人犯だなんて外もまともに歩けないよな、そう。そうやって卑屈に生きろ!!!! 一生!!

死ぬよりも苦しい事だろ?‥‥。


あぁ、‥‥これで終わりだよ。俺は、眠りながら麻美と柚良に逢いにいくんだ、筋弛緩剤ってのは、安楽死に使われる薬だからね。ふふっ。
もうすぐ、もうすぐ逢えるね、もうすぐ‥‥。》

「あぁーーーーーーーっ!!!!」


有栖は注射器を握り、上げた腕を俺に向けて一気に振り下ろした。

俺の胸にそれを‥‥
ぐっと力を込めて、勢いよく、刺したんだ…。
そう、それでいい。それで‥‥。

「うっ!うぅーーっ。」

「隼也さん、さよなら‥‥‥。」

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to be continued


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