お店紹介記事、その基本の書き方
こんにちは、にんべんふたつと申します。
フリーランスのライターです。独立してかれこれ16年が経ちました。
ふだんは女性向け媒体で食、旅、カルチャー、暮らしのハウトゥ系などの取材記事を書いたり、TVガイド誌を中心に、アニメ系の記事や声優さんのインタビューをやっております。
本日は、宿や飲食店の紹介記事を書くとき、どうしているか? を言語化してみようと思います。
基礎的なことではありますが、こういった記事内容について、「書くときに頭のなかでこんなことが起こっているよ~!」って内容はあんまり見かけないので。
「そんな記事、目をつぶっていても書けるよ!」ってな方は、ご笑覧くださいませ。
なお、この記事は「文を紡ぎ編む人たちの Advent Calendar 2022」に参加しております。
お店紹介に必要な要素
まず、お店紹介記事に必要なものは何でしょうか。優先順位は場所によりいろいろですが、以下のような要素が考えられます。
なお、本記事で挙げる固有名詞はすべて架空のもの。具体例もでっちあげです。
場の雰囲気
どんな気分で、どんな時間を過ごせる場所か
どんなサービスが受けられるか
めっちゃ簡単かつ、ベタな例を作成してみます。
構成パターン1
いくつかバリエーションはありますが、わたしの場合、基本はざっくりとした起承転結で考えています。
起=キャッチフレーズ的な概要+施設概要
承=具体的な紹介1
転=具体的な紹介2(承がメニューなら、転は接客などジャンルが違うもの/または、承がメニューの品数なら、転は素材などについて触れる)
結=「承」と「転」を受け、「起」のキャッチフレーズに結び付けるときれいに落ちる!
このパターンでの簡単な具体例を書いてみると……。
構成パターン2
きれい目、ラグジュアリー系の施設についての原稿なら、わたしは「起」を情景描写で始めるのが好きです。
構成はパターン1と同じく、起承転結というか4部構成。
起=情景描写
承=施設概要、具体的な紹介1
転=具体的な紹介2
結=そこでどんな時間が過ごせるか
具体例を書いてみますと……。
起承転結を通じ、ひとつのテーマを伝える
どういったパターンを使うにしても、起承転結を通し、ひとつのテーマを書いていくのが理想です。
テーマとは、その施設の一番の魅力。
それ以外の要素。たとえば、自然に囲まれたロケーションが「核」であれば、料理もしつらえも、内容を補完するものに過ぎません。
構成例1のパターンだと、「起」に入れるキャッチフレーズ的な内容(具体例だと、定食屋さん)を「核」にするとわかりやすい。構成例2のパターンだと「結」(具体例だと、気兼ねなく自然の中で過ごせる)。
書くときは何から着手すればよい?
構成には正解がありません。
なかなか原稿に手をつけられないときは、構成に迷っていることが多いです。
まずは取材メモを見返し、外せない要素をピックアップ。そうしながら、「この施設の最大の売りはなんだろう」と考えます。
そのうえで、それを起承転結にあてはめていきます。
わたしの場合、取材時に書きたい一フレーズ、または書き出しが浮かぶことが多いので、それを起承転結のどこに入れるかをとっかかりに考えることも多いです。。
「めっちゃせせらぎ聞こえて癒される~~~! 『せせらぎが聞こえる』みたいな書き出しにしたい!」とかそういう感じです。
また、書いていて迷うときは、「ここすごくいい雰囲気だったけど、なんでそう感じたんだろう?」と、情報が足りていないか、「あれもこれも素敵っちゃ素敵だけど、バシッと一本通った魅力を提示するのが難しいな~」とテーマがぼやけているケースも。
足らない要素があるときは、以下のような対処法があります。
その要素についてネットで調べてみる。
お店の人にメールや電話で追加質問する(非礼を詫びつつ)。
取材時に必要でないと感じたから聞いてないのかも。書けない要素は外して構成を考え直す。
テーマがぼやけているときは、「どこにある何という施設で、そこには何があってどんなサービスが受けられる……」と、まずはプレーンな構成でまずは書いてみる。書けなくても無理くり書いてみる。
そのうちテーマが見えてくるか、もしくは「列挙でしか伝えられないものがあるな……」とあきらめが生まれます。
構成を考えるときは、とにかく正解が見えない恐怖をかなぐり捨て、気軽にあれこれやってみることがコツです。
「気軽さ」を自分でどう演出するかが肝となります。
構成を考える手段は?
わたしはアナログ派なので、紙に「書きたい要素」を書きだして線でつなげたり、箇条書きにして並べたりしています。
手書きのよいところは、配置の自由さ、視覚的にわかりやすいこと。また、手を動かすことでいわゆる「作業興奮」に入りやすいのも大きなメリットです。
マインドマップやアウトライナーなどのデジタルツールも便利だと思います。
お店紹介系の記事は、論理や物語を展開するわけではありません。だからこそ、長年書いていながらも、自分が何を「きれいな流れ」と感じているかは謎でした。
そこで、言語化してみたのがこのテキストとなります。需要のほどはわかりませんが、「こんなふうに組み立てているライターもいるよ」という一例として、何より自分用の備忘録としてまとめてみました。
以前、インタビューの緊張度合の変遷を紹介したこんな記事も書いております。よろしければこちらもぜひ~!
とあるライターがインタビューに慣れるまで十年ぐらいかかったよという話
補足1
Web記事では、写真を多く挟み、字数制限がない分、「時系列での体験記風で」など、よりシンプルな流れを求められることが多いです。その場合、上記のような構成はかえって邪魔になることもあるかもしれません。紙の雑誌で字数が限られているときには有効な手段です。
補足2
もしライター志望の方がこの記事をご覧になっていたら……。
「何かを紹介する」のは商業ライターの基本仕事なので、練習として身近なカフェ紹介などをしてみてはいかがでしょうか。
そのさい、すいているときを見計らい、お店の方に事情を話してインタビューして、「一次情報」を加える練習をしてみるのもよいと思います。
「自分が感じている素敵さ」の理由を聞いているのがおすすめ。たとえば、こんなものとか……。
この家具がすごく素敵だけど、どういうものを使っているのか?
カレーは独特のコクがある。どう出しているのか?
接客がすてきでほっとする。気をつけていることは?
それをもとにブログなどに紹介記事をアップしたら、未経験で売り込む場合は、ポートフォリオになってくれます。
クラウドソーシングだけではなく、「いつも読んでいるメディアに自分を売り込んでみる」ことにも目を向けると、また違った世界が拓けますよ!