土足の裁判官的存在(四阿シキ)

AとBには彼らの距離感がある。ふざけて他人から見ればきついようなことも、お互いの声音でふざけていることを判断できる。それは他者が口を出すべきことではない。

だがしかし、AとBに近しいCはかなり的外れな正義感を持っており、Bがふざけて「端から」見ればひどいことをそうと信じ、Bを怒る。Bにしてみればただふざけていっただけのことで

「もう少し言い方を気をつけろよ」

Bは叫びたくなった。何様だ、と。理不尽な怒り方をされれば、そしてそれを全く関係ない「他人」から言われれば、殺意に近いものが湧くのも当然だとは思わないか。貴様は何様だ。言い方とは何だ。我々の間に勝手に土足で割り込んでくるな。

こういう奴はどこにでもいる。ふざけて母親に絡む子供にいきなり怒り出す父親。友人関係の距離感を知らずに勝手に正義感を振りかざすアホ。彼らは自分が相手にとってどれだけの存在だと思っているのだろう。どれだけ自分の考えることが正しく、どれだけ影響を与えられると信じているのだろう。

そしてここにももう一人。

「沙織ちゃん、だからこの議論はさ、……」
「ゆみ、だからそうじゃなくて、それもそうなんだけど」

「沙織ちゃーん、ゆみちゃんの話ももっと聞いてあげなよお。かわいそうだよ?」

すでに多くの議論を交わし、相手の意見をお互いたくさん聞いてきた二人と、たった今その場に来た一人。これに他人事でいられる人間はどれだけいるだろうか。

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