森のくまさん(パロディ・四阿シキ)

トギの星には森が多い。

その森で、今日も危なげに歩く女の子が一人。そう、トギの星には危険が多い。

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ある日、森の中、私は歩いていた。
なぜって?この国には森が多いの!おばあちゃんのお家に行くだけで森を三つ抜けなくちゃならないのよ。さてさてそろそろお昼にし……な、なんだか臭いわ!!!なんの匂い!?

前方に影がさした。怖い怖い怖い。でも死なないためには危険を知らなきゃ。顔を上げると口の周りが赤い熊。そしてその後ろにはラフレシア!!!待ってまってどっちのにおい!? 熊がやばいの!? それともただ単にラフレシアが臭いの!? 誰か助けて!

私と熊は見つめ合う。じっと見つめ合う。すると熊はいきなり話し出した!ちなみにこの世界ではよくあることよ。私たちは動物や植物と意思疎通ができるのよ、ふふん!

「君さあ、なんで銃持ってないの? 僕、君のこと襲っちゃうよ? 逃げなくていいの?」

え、でも熊は背中を見せると襲うんでしょう? でも逃げろと言っているわ。ええ、ええ、逃げますとも!

「それはいい考えね、では私は逃げるとするわ!」
背を向けずにね!

顔を見ながらにじりにじりと背後に下がる私。でも熊は追いかけてきたわ!

「あ、待って待って」
「待たないわ! 襲うんでしょう!!!」

「待ってってば、落とし物してるよ。白い貝殻の小さなイヤリング。君のでしょう」
おばあちゃんにあげるはずだった手作りのイヤリング! 襲うために言っているの? それともただの親切心?

「じゃあお礼に歌を歌うから、私がイヤリングを受け取っても襲わないでいてくれる?」
「オーケーオーケー、襲わないって約束する。少なくとも歌を歌ってる間はね」

とても怖いわ!歌を歌いながら逃げましょうかしら。とにかく歌いながら受け取らなきゃ!

らららラーラーラーラーラー!
らららラーラーラーラーラー!

歌いながらイヤリングを受け取って、歌いながらだんだん後退り。一応熊さんは襲わないでいてくれたわ。私は大丈夫な距離になったところで背を向けて走り出したわ。だけど歌い終わったらまた追ってきた!

目の前に大きな気があるわ、低い枝でも3メートルちょっとよ、私じゃジャンプしても届かないわ! 全然ダメ、ジャンプしたけど手は宙を掴んだだけ。いや、私まだ死にたくないわ! そう、登ればいいのよ!

私は登った、高く高く。そう高く! そして歌ったわ。

らららラーラーラーラーラー!
らららラーラーラーラーラー!

熊さんは木を揺すったわ。だけど大きな木だもの。そう簡単に倒れない。やがて熊さんは諦めたわ。私の勝利よ!

らららラーラーラーラーラー!
らららラーラーラーラーラー!

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