本当にこわいのは(四阿シキ)

「え、女子こわ」
教室から聞こえたその声に、わたしはドアを開けようとしたその手を止めた。
声から察するにうちのクラスのカップルだ。出している名前からして、グループの仲違いを話したのだろう。荷物を取らないわけにはいかないし、自分が関係する話でもなかったので意を決して教室に入る。

と、彼の方がわたしに気がついた。
「あれどうしたの」
「忘れ物しちゃって」
「部活終わったのー?」
彼女の方がわたしに話しかける。
「うん」
仲が良くも悪くもないのでたいした会話にならない。
必要なものをとって教室から出る。

わたしは見逃さなかった。
「女子こわ」に対する「でしょーお」に驚愕の表情を浮かべたわたしに、薄い笑いを浮かべた彼の顔を。怖いのは女子ではない。そのグループのいざこざだ。そして当然彼女も関わっているし、それを彼に話す時点で彼女をこわいとみなすことは十分に可能だ。そしておそらく、彼女に自分もその「こわい」一員であるという自覚があるかないかはともかく、彼は気がついている。女子が怖いと言って欲しい彼女の気持ちと、彼女もまた「こわい」ことを。分かっていて同意して、彼女と共に怯えて見せるのだ。

まあ彼女可愛いからね。
男子ってこわ。

ーーーーー
本当に怖いのは語り手だったりしてね。
「こわい」に性別は関係ないと思っています。
四阿シキ

よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートは大好きな博物館、美術館に消費し、より質の良い作品を作れる人間になれるように楽しませていただきます。