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イシダテック。モノづくりへの憧れ。

最近、大好きなイシダテックのある記事を読んで、ある瞬間にビビッときた。

私がなんでこんなにイシダテックに惹かれるのか。
モノづくりへの憧れ、だ。

東京で大学を卒業し、外資系投資銀行に就職した。アメリカ人のトレーダー達と一緒に働き、そのグループが他社に移った時、面倒をよくみてくれていた先輩に「今のあなたはまだ一緒に動かない方がいい」と言われ、彼女の紹介で別会社の面接を受けた。いいオファーをもらい、転職を上司にも同僚にも告げたら、別の部署のやり手の先輩が慌て、彼の上司の上司から引き止められた。

"I will double your salary. I will send you to New York as an expatriate for a year or two. Please stay with us."

あれが、私の人生の転機だった。あのカウンターオファーを振り切って転職していたら、裁定取引のトレーダーとして育てられ、東京のど真ん中にマンション買って独身かDINKSで生きただろうと思う。が、私はあの会社に留まり、ロンドンを経由してニューヨークに渡った。

ニューヨーク。マンハッタン。Times Square にあるネオンサイン。
SonyやPanasonic、ToyotaやHonda、NintendoにShiseido。日本製品が溢れていた。話には聞いていたけれど、母国製品が海外でここまでの存在感を達成しているという実感は当然なかった。それが目の前にギンギンにフル展開していた。

そして。
Sonyの製品。日本ではもう姿を消した携帯用CDプレイヤーやごついWaterproofのSportsカセットプレイヤーなどがまだ店頭で売られていてびっくりした。日本ではもう売れないモデルを海外に出している?!

コマーシャル。単一民族国家な(というと厳密にはそうじゃないと誰かから怒られるけれど)ほぼモノトーンな日本社会と違う、多民族社会で貧富の差が激しいアメリカでは宣伝の仕方が明らかに違った。野球やフットボールの試合を見る層向けのコマーシャル。子供番組の合間のコマーシャル。ドラマの合間のコマーシャル。昼間のトークショウの合間のコマーシャル。安物と高級品のコマーシャルの放映時間やチャンネルが違うのである。

つまりマーケティングである。同じ商品をまるで性質の違う市場で売るとしたら、宣伝の仕方を変えるのは当然。国民性と民族性の違い、収入格差が激しくある社会で、誰に向かって売るのか。Target marketing。

それがずーっと気になり続け、数年後に日本に帰るかアメリカに残るかの決断をしなきゃいけなくなった時に、アメリカに残りたいけれど金融業界にはもういたくないと思った。お金をただ右から左に動かして儲けるのではなく、何かを作ってそれを売る製造業に関わりたいと強く思った。何かを作っているという感覚が欲しかった。

私は会社を辞めて、ビジネススクールでMarketing専攻MBAを取得することにした。

Managerial Statistics
Business Communication
Accounting
Marketing Management
Consumer Behavior
Marketing Research
Advertising
Strategic Brand Management

MBA in Marketingのカリキュラム。

二年かかるプログラム。最初の一年はフルタイム学生として、一年後にフルタイムの職に就き、学校はパートタイムに変えて、合計で3年かけて修了した。転職先は日系証券会社。金融から製造業への転職は、新卒じゃないのに新卒扱いとなり収入の激減は免れなかったから、間にワンステップ置くことにしようと、東京本社向けにアメリカの金融業界動向をさまざまな角度からリサーチしてレポートにまとめるという金融市場調査部の仕事についた。つまり、金融業界での経験をムダにすることなくマーケティング的視点に基づいたリサーチをする、わけである。

結局、私は製造業に辿り着かないまま家庭に入ってしまったのだけれど、このMBAで得たマーケティングの知識。製造業への興味と関心は薄れることがなかった。

そんな私が、イシダテックに出会った。

小山さんの文章スタイルが私のツボにハマったという事実は欠かせないとして、まず会社の規模がいい。何を作っているのかは秘密だからはっきりわからなくても、発明家でエンジニアで超早起きな素敵な社長と、彼についていくそれぞれ個性ある社員たち。

以下の記事で、私は中川中原さんのファンになったと、ここに宣言しよう。

こやまさん、大丈夫よ。
あなたが一番なのは変わらないから、心配しないで!

心配なんかしないってば。笑。

AIを使って唐揚げを見分ける作業に感動したら、今度はカツオですよ、カツオ。カツオをAIで見分けるに至るまでの準備作業の、なんて地道なこと。

中川中原さん、私、草取りに必要な忍耐力と持続力、ちゃんと知ってます。腰が痛くなって膝が痛くなって、暑くて暑くて。でも、やり続ければ必ずキレイになって終了する。私、ジャム作るのに皮入れたくなくて、ぶどうの皮むきやったことがあるんですけど、日本人しかこんなことやらないだろうって思いながら、続ければいずれ終わるって思いでちゃんと終わらせました。

中川中原さんへのファンメッセージ。

中川中原さんの、ラジオ体操の開始時間ぴったりに登場するその緻密さと、地道な作業を丁寧にこなす集中力。

さらに、静岡の焼津市という地方都市にあるイシダテックが、海外のお客さんに商品を提供してなんて知って、一気に痺れてしまう。日本の製造業の技術をなめるなよ、って。地道に丁寧に正確に作業できる日本人が作ったものが海外に出ていく。あぁ感動。

誰だったか、フランスの有名な哲学者が世界から消滅してほしくない民族といったら、日本民族だと言ったというのをどこかで読んで、わかる人はちゃんとわかってる、と思った。

手抜きの韓国企業。機内で携帯が爆発したとか洗濯機から火が出たなんて冗談じゃない、製造業として恥を知れと、私はいまだにあの件を忘れていない。かつて、日本の自動車企業がアメリカ市場を安価で品質の良い車で席巻したが、韓国企業は「安価」な部分だけ真似して車と電化製品でその地位を確立した。ふん、今に見てろ、と私は思っている。

マンハッタンの寿司屋のカウンターで、板前とおしゃべりした時、テレビでも車でも、日本製は痒いところに手が届くと感じるデザインと機能で、

「やっぱり日本製だよねぇ。日本人だよねぇ」

と言い合った。日本ではもう日本はダメだって自虐的なことを言ってるらしいけど、日本人によるモノづくりは絶対に世界一だと言い合った。

イシダテックの皆さん。世界一です、世界一。
日本人であるという誇りをもって、企画してデザインして組み立てて検証して、確かなものを作り続けてください。



ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。