自作SS「ピーポーピーポービビポポッポペポツ」
『ピーポーピーポービビポポッポペポツ』
不意に聞こえてきた音に、思わず周りを見まわした。
けれども、道行く人々と、夕日で赤く染まったビル街の中には
その音の主たるものは見当たらない。
「変な…着信音、か?」
何の音だったのか気にはなるが、鳴り終わった音の発信源など
探しようはなく、すぐに諦めた私は、足を速め帰宅の途についた。
しかし、この後が厄介だった。
先刻聞いた着信音が耳に残り、頭から離れない。
ピーポーピーポービビポポッポペポツ
ピーポーピーポービビポポッポペポツ
ピーポーピーポービビポポッポペポツ
ピーポーピーポービビポポッポペポツ
エンドレスリピートされる着信音に下唇を甘噛みする。
張り付いた音を振り払うように、私は帰宅の足を更に速めた。
数刻後、おかげさまで、いつもより少し早めに家についた私は
未だに鳴り続ける着信音に辟易しながら、夕飯をいただき、お風呂に入る。
そのルーティンが終わる頃、ようやくあのメロディーが頭から離れてくれた。
そうなればもういつも通り。
残された時間を、惰性で続けているソシャゲのスタミナ消化に充てた後
ベッドに倒れこんだ私は、そのまま眠りについた。
…
その夜見た夢もいつも通り。
曖昧模糊で奇天烈でどこか懐かしい…誰もが見る、普通の夢。
ただ一つ普通と異なるのは
見知らぬ少女が泣いていた。ことである。
しかし、夢の中に知らない人が出るという疑問を、夢の中の私は抱かなかったようで
「泣いている少女を無視するのは寝覚めがわるいな…。
そんな言い訳を心の中でしながら
その子に声をかけようと、私は足を踏み出し、膝を折って…
『ピーポーピーポービビポポッポペポツ』
バッッ!!
ベッドから跳ね起きた。
グルグルと首を動かし辺りを見回す。
異常は…無い。
何も…怪しいものは何も…無い。
でも、まだ音が…聞こえるような…
「外から…か?
…
……
ギュッと拳を握り込む。
全神経を耳に集める。
…いや、となりの部屋か?
…
……
心臓がバクバクとうるさい。
スーッと息を大きく吸い、更に耳を澄ます…
…
……
気の…せい?
やたら耳に残る旋律のせいで、脳内で鳴っているのか
遠いところで鳴っているのかがよく分からない。
…
……
音は、鳴っていない。
静まり返った夜が、只々存在しているだけ。
どれ程耳を立てていたかは記憶にはないが
握りしめていた掌は、まだじっとりと湿っていた。
音はもう、鳴っていない。
もう一度ベッドに入る前に、一応、家中の部屋を巡り
窓を開けて軽く外を確認する。
家の内も外も変化はない。虫の1匹すら鳴いていない。
夜の深さを音で表したかの如く、静寂が辺りを支配していた。
私は息をホッと吐き出し、ベッドに潜る。
「怖い夢を見て、飛び起きた。
「ただそれだけ。
「それだけのこと。
「…よくあること。
少しの緊張は残っているが、何も問題ない。
その緊張も、ゆっくりと治まっていく。
そして
まぶたが…少しずつ重く…
…
……
…
……
…
……
『ピーポーピーポービビポポッポペポツ』
!!!?
布団の中!
心臓がギリギリと痛む。
音の発信源を探そうとバタバタと動かした私の手は…
しかし
すでに何かを握っていた。
ブルブルと震える手を、もう片方で抑えつつ
おそるおそる、顔の前に引き上げる…
ズズズッ--
ゆっくりと、眼前に運ばれてきたのは…
ひと昔前の携帯電話…
ピッ!
「アハハハハハハっ」
―プツンッ
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はい。どうも、ニルギリです。
とある月曜日の、明け方4時頃。
夢の中で泣いてる少女に話しかけようした所
「ピーポーピーポービビポポッポペポツ」
という爆音で目が覚めました。
流石にびっくりしたので、家中を探しましたが何も見つかりませんでした。
実際には鳴ってないのでしょう。
おそらく、少女の防犯ブザーと考察します。
(なった瞬間に目が覚めたので真相は分かりませんが)
そんなこんなで、目が冴えてしまったニルギリさんは
なぜか携帯で憑りつかれたように、このssを打ち始めました。
気付けば朝6時…
しんどいですね。
それでも、せっかくなので加筆修正して公の場に載せようと
今しがた筆を執っているところになります。
自作SSは2作目。前回は…まあアレでしたが
今回はホラーになりました。
ホラーと銘打って紹介してないので
苦手な方に怒られるかもしれません。
怒られるかもしれませんが
初めて書いたホラーSSが、しっかり怖く出来ているとは思えないので大丈夫でしょう。
実際、勝手が良く分かっていません。今も分かってないです。
ちなみにオチは?
と聞かれそうですが…実は、修正前にはありました。
ありましたが、いらないと判断して消しました。
想像の余地が、怖さを増やしてくれると…
勝手に思いつつ、言い訳しつつ、あそこで切ることにしました。
すこしでも面白いと感じてくれていると嬉しいです。
最後まで読まれた方がいらっしゃるか分かりませんが
これで後書きとさせて頂きます。ありがとうございました。
ニルギリ
2021/05/19 NOTEへ転載時に、少しだけ修正が入ってます。
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