大晦日
ドッコラショと素子を下ろした鍵男は細胞の家のドアの前に立ち鍵穴に入り込もうとした。
米子∶ちょっとアンタ、何してんのよ。
鍵男∶ああ米子さん、ここがあなたのお家ですよ。今、僕が鍵を開けますね、そうしたらあなたはこの中に入って念子さんの栄養になるのです。
米子∶そんなの真っ平御免。
素子∶あれまッ、お隣にもお家はありますけど、そして鍵男さんに似た方が鍵穴に入り込もうとしてますけど…
米子∶ホントだ、でも鍵穴に押し返されて入れないみたいね
鍵男∶なんてこった、念子さんの細胞の家の鍵穴が脂肪で塞がれてしまっている!!
米子∶血相かえて、それだからなんなの?正月に家に入れないからって死ぬような事なのかしら?
鍵男∶細胞の家にブドウ糖が入れなくなったら栄養不足で家は消滅し、年子さんに栄養を届けられないのです。そうしたら…
素子∶ちょっと見て見て、その隣は傾いた家だから鍵穴が塞がって鍵男さんに似たもう一人の人も苦労してる。
鍵男∶これまたなんてこった、一日、10万歩も歩いている念子さんの細胞の家だと言うのに運動不足で傾いてしまっている!!
素子∶鍵男さんたちがお仕事を懸命にされても家や家のドアが塞がれていたらブドウ糖は入れないのね。
鍵男∶くっそ、僕らインスリン族に出来ることはブドウ糖をエスコートし、細胞の家に届け念子さんに元気になってもらうことなのに…
米子∶念子もねぇ、2000年も生きたから細胞の家もガタがきてるのよ。寿命よ、寿命。ヒッヒッヒ。
素子∶念子さんは一日、10万歩、歩き、質素な食事で脂肪も貯めず、トロロを蹴り飛ばしてストレス発散、細胞の家を2000年守って来たんですねぇ、それ、楽しかったのかしら?
鍵男∶楽しいに決まってます!!けれども僕らインスリンも年を取り人数を減らしています。そして念子さんの家も傾き、ブドウ糖たちは行き場を失いつつある…ああ、念子さんに三十日を迎えさせてあげられない…
鍵男は膝を折りその場で泣いた。
つづく
大変貧乏しております。よろしかったらいくらか下さい。新しい物語の主人公を購入します。最後まで美味しく頂きます!!