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#売れる接客とその未来

焼肉の味が美味しいことは当たり前。その前提に立った上で、”いい塩梅”の心地よさを体験として提供する。岩﨑けんしろう氏がにく﨑を監修するにあたって大切にしたことが「おもてなし」だった。今回、岩﨑けんしろう氏とタッグを組みサービスマンとして空間を創り上げた二人に「売れる接客とは」というテーマで対談をお願いした。

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藤田大介 / Daisuke Fujita 
大阪にてイタリアンレストラン、ブライダル事業を経由し、焼肉業界へ。クリエイティブディレクターとして、にく﨑のデザインや演出を監修
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長谷川涼 / Ryo Hasegawa 
中目黒のビストロで修業中にソムリエを取得し、その後、焼肉業界へ。サービスマンの育成や管理部門を統括した経験を活かし、にく﨑の接客を監修

「最後は自分で決めるんだけど、失敗したくない」

藤田:こういうの緊張するね。

長谷川:緊張しますね。(笑)

藤田:こうやって、改めて対談って形で話したことが無いから形式的にならないようにしようね。

長谷川:はい、お願いします。(笑)

藤田:今回、焼肉 千利をリブランディングして、「にく﨑」を作った訳だけど、細かい接客の部分は長谷川くんに任せたんだよね。改めて、どんな接客のスタイルを目指したの?

長谷川:接客のトレーニングは一任された訳ですけど、綺麗な接客より、お客様の懐に入る接客を意識させました。それこそ、マニュアル的ではない、個性的な接客というか。

藤田:僕が作った、※キャラピタリティの部分だよね。

※キャラクター+ホスピタリティの造語で、藤田自身が提唱する接客メソッド

長谷川:そうですね。お客様が気持ちいいと感じるツボを押すにはサービスマンの個性が引き立てる凸凹が欲しい。だから、あえて再現性の高いマニュアルを落とし込むのではなく、各々が考えて、自意識で動くことが大切です。

藤田:例えば、それを体現するにあたって、具体的な技術ってある?

長谷川:例えば、おすすめのメニューを訊かれた時に、お店の都合で勧めるよりも、自分の好みや気分で勧める。超個人的な意見を反映させて欲しい。これが余ってるから売ってきて、みたいなことってあると思うんですけど、それって結局、お店都合だからお客様の為になってるのかと思うとそうではないですよね。

藤田:そうだね、個人的な意見がお客様の為になってるかというと、それも正解では無いのかもしれないけど、背中を押して欲しいと思うんだよ。ある程度、食べたい物は決まっているけど、店員さんの意見も参考にしたい、とか、シェフの自慢料理は何なのか、とかね。最後は自分で決めるんだけど、失敗したくないから意見を分散させるというか。

長谷川:いかにも日本人っぽい。

藤田:そういったサポートをすることって大切で、それが機械的にならないことで、ハートに触れるような気がする。琴線に触れる感じ。3日間のプレオープンを終えて、長谷川くんの目指した接客は体現できていた?

長谷川:もちろん、完璧ではないと思います。でも、接客の意識や考え方を変えて行こうという”変化”は感じることができました。にく﨑らしい接客をしようと。今後は、自分の知識や経験がにく﨑にどう染み込むか。どんどん、楽しくなってくるはずです。

藤田:売れるサービスっていうテーマなんだけど、長谷川くんにとっての信念やそれが売り上げに繋がった実感ってある?

長谷川:例えば、サービスマンって料理説明をする場面が多いじゃないですか。それって仕上げの調味料みたいなものだと思うんです。説明ひとつで、料理は作れないけど、料理をもっと美味しくすることはできると思ってます。価値を上げるという部分では売上に繋がる部分もありますよね。逆に藤田さんはありますか?

藤田:僕はずっと「愛」って言ってるんだけど、愛って曖昧で再現性が無いんだけどね。技術的な参考にはならないんだけど、愛が溢れているお店は絶対に売れると思う。愛って受け取った分しか与えられないって誰かが言っていて、僕はお客様に愛を届けるために、スタッフに愛を与えないとって頑張ってるつもり。もうひとつは、顧客管理だよね。お客様に合わせて、サービスや料理をチューニングしていくこと。専属DJみたいに、ひとりひとりに合わせてちょうど良い曲を選曲したいから、こまめな情報管理が必要。

長谷川:それが難しいんですけど、今は予約台帳システムなんか使って、こまめに情報を残しながら共有できますからね。

藤田:駆け出しの頃は必至にメモ帳に書いてるんだけど、いざという時にメモのページを探せない。(笑)そういえば、長谷川くんは憧れた先輩とかいた?

長谷川:僕は元々は料理人志望だったんですけど、当時働いたお店のマネージャーがオタクなくらい知識が深い人で。ソムリエ資格も持っていて、食材の知識も豊富で、お店の魅力を引き立てていた。博識なことで、こんなにもお店を輝かせることができると思いました。そのマネージャーに憧れてサービスマンになりました。

藤田:知識って愛だよね、お客様の為の知識な訳だから。

「人と人が繋がる感じ。これが僕は美味しさだと思う」

長谷川:話が変わるんですけど、ロブションやりリッツカールトンのような接客が”最高峰”だと思いますか?

藤田:格式高いってスタイルの話しだから、”最高峰”っていうより、”最高級””ではあるよね。最もコストの掛かっている接客という意味では。町場の飲食店でもファーストフードのチェーン店でも、向かっていく方向性が同じなら、あとはスタイルの話し。いかに幸せを届けるかってことだから。クラシックなものに懐疑的になるのはカウンターカルチャーだから、それはいつの時代も連続してると思う。

長谷川:そういう意味では、DX化の推進っていう方向性はどう思いますか?

藤田:まだ、完成されていないんじゃないかな。ロボット配膳とかって導入が進んでいるけど、めちゃくちゃ良いって感じるのはまだ先かも。人が介在しないとどうも温かみが無くて。

長谷川:マクドナルドのスマイル0円は凄いですよね、最後にスマイルが出ることで味が変わってるはずだから。

藤田:笑顔が1番売れるサービスだよね。そういえば、好きな飲食店ってある?

長谷川:僕は静岡県民なので”さわやか”さんですね。(さわやか株式会社:炭焼きレストランさわやか)

藤田:有名だよね、僕は行ったこと無いけど。

長谷川:目の前でハンバーグを焼いてくれて、その時に、笑顔やコミュニケーションが生まれてるんです。人が介在する。美味しいを共有できるんです。人と人が繋がる感じ。これが僕は美味しさだと思います。

長谷川:藤田さんはブライダルなども経験されていますが、畑が違うことで苦労されたことはありますか?

藤田:結婚式は取り返しがつかないってこと。食事だと少しのミスを挽回できるチャンスって沢山あると思うんだけど、それが許されないことかな。準備にかける労力は半端じゃない。それに想定外のことが起きるからそれに対応する能力も必要。

長谷川:想定外のことが起こった時に大切なのは決断力ですか?

藤田:決断力よりも度胸かな。それ、責任取れるか?って自問自答しながら、決断していく。一瞬の迷いが致命的になる場合もあるから、何もしないなら、僕の最善を尽くす!って度胸。

長谷川:それってやっぱり経験ですよね。それはコーチングしても伝えるのは難しい。

藤田:結局、僕らはお客様に育ててもらってるって部分があるよね。

長谷川:そうですよね、クレーム言ってくれる人って優しいんですよ。それを改善していけるから。前の職場のお客様でTHE江戸っ子おじさんみたいな人がいて。会うと「元気が無い!」とか言われるんですよ。あぁ、確かになぁ。とか思って。そういう人がいなくなると飲食店って無機質になっていきますよね。僕は将来、江戸っ子おじさんになりたいです。

藤田:みんなで飲食の未来を良くしていく。繰り返し改善して、進化していく。それが出来るかどうかが、売れる、売れないってことだと。こんな〆でいいかな?

長谷川:いいと思います(笑)

〈編集〉:藤田大介
〈撮影〉:中川真也

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