明日のこと

錆びついた足音がしている
どうしようもなく悪夢がやってくるような朝
そうだ、朝なのだ
朝は酒の匂いとともに始まる
包丁は切れ味が悪いから
ほうれん草だってほとんど叩いただけのものになって
本当は
叩けるだけ感謝しないといけないのだけれど
自分より幸福みたいな顔をした人々で街は溢れているから
どうしようもないなって
笑うことも出来ないよ
扉の音は風みたいに
壊れたチェーンは役割を果たさない
果たしたところで使ってしまえば
きっと生きる場所を失ってしまうから
どうしようもないなって
笑うことが出来たら正解だったのか
隣の部屋から煙草の匂いがしている
こどもの喚き声
どっちがマシなのか分からないけれど
痛いのはきっとおんなじだった
錆びついた足音が
耳の底に響いている
壊れかけたこのアパートで
いつか悪夢が終わるのを待っている

唯一の道がうっかり閉ざされて落っこちて
そんな残酷な夢を
悪夢避けに使いながら



#家族の物語

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?