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夢日記まとめ -22/06/23

木立

 まだ終わっていないのだ、というのは探偵の台詞だと思っていた。山には、もう林間学校の生徒がいる。事件は終わっていない、理想に当てはまるのであればそれはきっと、誰でもいい。見つけたそばからそれは実行される。
 でも、でも、と立ち上がる。
 かわいらしい装飾を施した、作りかけのお菓子。それをくれると言った彼ら。
 その生命を見捨てることは、まだ出来ないのだから。

午後の静寂

 階段の、軋む音がした。落ちた、落ちた、事故、怪我、伝言ゲームのような言葉はどうやって次のひとに伝わっただろう。バトンは、どうなっただろう。
 短い裾がそれでもはためいて、友人が落下していくのに手は、届かなかった。

生贄

 水面が波立っている。
「海坊主だよ」小さな手を握りながら言う、「だいだらぼっちかもしれないけど」どちらでも同じだった、人間を食べることには変わりない。
 今日は、祭りの日。
 生贄は確かに必要とされている。誰かが死んでくれたら、そんな願いがこの学校に蔓延っている。橋を、渡らなければならない。それは恐らく、こどもを生贄にしてきた名残なのだろう。
「校舎の真ん中にいよう」
手を引く。
「もしかしたら、あの手が伸びるのは、校舎の側面までかもしれない」
 それが希望なのかどうなのか分からずとも、足を動かして無事に下校するまでは人間でしかないのだから。

忘れたい

 巨人がこの国に襲来してから一体どれくらい経っただろう。すべてが様変わりしてしまった。裏切りも、死も、日常になってしまった。俄作りの組織なんて、統率力も何もない。
「わりとみんなしぶといよね」
笑う、笑うしかないもので。
「まだ生き残ってる」
「そりゃあ、」
明日も笑えるかなんて、誰にも分からないから。
「ここまで生き残った実力があるんだもん。簡単には死ねないよ」
それが、もしかしたら絶望かもしれなくても。
「これから、どうする?」
「どうせ海越えられないなら、北海道にでも行こうよ」
「はは、津軽海峡なら越えられるって?」
「海峡だからね」
 本当に、そんなことが出来るのか、それだって確かでないから、笑うしかないのだ。

三月のこうさぎ

 前任者の不審死、というだけでももうきな臭いのは分かっている。そこに何の関係もない人間の名前が、後任としてあがったらどう思われるだろう。そういうことを、考えなかったわけではない。
「聞けば貴方、委員会に話を持ちかけられたとき、すぐに頷いたそうじゃない」
美しいひとの指が、そっと顎にかかる。
「ねえ、もしかして、貴方が弥生のお祖父様を殺したんじゃないかって、わたし、思ったりするの」
 六月と五月はもう、このひとの手に渡っている。怪しさで言えば、このひとも同じくらいだろうに。三月の土地に愛着はないけれど、此処を、五月に渡すことは考えられなかった。
 冷や汗が、滲む。
 どう返してもきっと、五月の中での事実は変わらないのだろうと思うと、鉛を飲んだような心地になった。

分身

 電話をして、それからまだそのひとが帰っていないことを思い出す。
『はい』
「こんばんは」
学校からの帰路についているだろうそのひとは、そこにはいない。そのひとの母が、電話口に立っている。
「ええと、」
何を話したらいいのか。
「あのひとは何部に入ったんでしたっけ」
そのひとの母が、凍りつくのが電話越しでも分かった。聞いてはいけないことだった。沈黙が降りる。
 あー、という意味のない言葉すら言えなくなって、遠くの電子音に耳を澄ます。

のこり、

 列を作っている。スタバのキッシュを買うために。あと三人くらいで番になる。
 レジにいる人が言う、「キッシュをください」。
 ああ、どうしようかな。ダブルドーナツでも食べようか。

金曜日

 冷蔵庫にふわふわの食パンがある。大きな食パンなので、耳を少し大きめに切り取って、サンドウィッチ用にとってある。それが、きれいにサランラップで巻かれて保存されている。触れるとふわふわしているのがサランラップ越しでも分かる。

わたしは知らない

 殺人事件の、犯人が連れている犬がいる。散歩。家の犬より更に一回り大きくて、オスだ。こんなに大きな犬は見たことがない。穏やかな犬だけれど、きっと主人であるその人を疑っていることが勘付かれたらたちまち噛みつかれるだろう。どうか勘付かないでくれ、とその鼻面を撫でる。

探しています

 猫を探している。
「あなたは何が好き?」
「シリコン」
「そっかあ」
「歴史も好き」
「そっかあ」
うちの猫ではないな。

運命

 八月十四日生まれの猫を飼う。
 夏の終わりに生まれた猫。今いる猫が夏の初めに生まれた猫だから対になるなあ、と思う。


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