魔法

学生だった頃、
バイト先にいた「彼女」

少し年上の「彼女」は
メガネをかけた小柄な女性
あまり目立たなく
言葉数も少ない
服装も地味で「ネクラ」な印象

そんな「彼女」が好きだった

真面目で
黙々と仕事をこなし
余計なことは言わない
でも
自分の考えはしっかり持っていて
言うべきことは言う

お調子者で人に媚びてしまうじぶんは
周りに合わせない生き方をしている
「彼女」の姿に憧れた

バイトを少しお休みしていたじぶん
久しぶりに会った「彼女」は
変わっていた

パステル調の少し明るめの服
メガネはなくコンタクト
明るい声で
「彼女」から話かけてきた

「自己啓発セミナー」
そんなモノが流行っていた時代
セミナーに参加し
「彼女」は魔法をかけられた

服装は明るい印象のもの
ニコニコ笑顔で自分から話しかける
「素敵な女性の条件」と言われる
魔法は完璧だった

「ネクラ」な彼女に憧れていた
そんなじぶんは少数派

変わりたいと思い
高額なお金を払って
セミナーに参加した彼女

「ネクラ」な貴女の方が魅力的
憧れていますと
言われても
「彼女」は嬉しいとは思わないだろう

バイトを辞めてから数年後
街で彼女を見かけた
魔法がとけ
じぶんの好きな「彼女」に
戻っていた

魔法は魔法
いつか解けてしまう
「彼女」の中にある本物の「魅力」
それは「彼女」しか持っていないもの
「彼女」自身も気づいていない
本物の「宝物」を見つけられる人は
きっと多くはないだろう
だからこそ
出逢えた時は
最高の幸せが手に入る





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