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キツツキといい、カワセミといい

にわかに愛鳥家づいている。
よく見える望遠鏡やバズーカ砲のような超高性能望遠カメラは持たない。
あくまでも、にわか。
にわかなりに心踊らす野鳥との出会いを楽しんでいる。

カワセミの羽の瑠璃色は何故あそこまで輝き躍動感を演出するのか。自然の配色と思えぬ色を日常生活の一辺に見た。
自宅近くの土手は犬の散歩、サックスの練習、詩吟の声だしをする人など、ごくごく日常的な時間が過ぎ、至って平凡な空気がそこいらに散らばる飾り気のない場所だ。そこで時々出会うカワセミの不自然なことと来たら、一気に清流豊かな大自然にポツンとワープしたかと思うほど空気感が変わる。

ある日のこと、職場の駐車場近くの林に頭を必死に振って木にしがみつくキツツキを発見した。
ほんの一瞬、目が緑を見ようと無意識に見上げると視野に飛び込んで来た。
出勤タイムカードにまっしぐらな同僚達をわき目に、コツコツコツとリズミカルな優しい音が私にだけ聞こえているのだろうかと思うほどの一人占めを楽しんだ。
人里では決してない。人間の生活圏内スレスレの場所で彼らは毎日コツコツコツと木々と共にひっそりと生活していた。同僚に出会いを自慢したかったが、キツツキなりの人間との折り合いを崩してしまいそうで、素知らぬ顔でタイムカードをタッチした。

カワセミといい、キツツキといい、いつもは会えない偶然を幸せに思う。